初恋と友達と恋の話

サクラギ

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番外編 「深見響次の人物像」

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 深見響次の本を読むたび、深見響次がどんな人なのか気になった。

 静稀が知る深見響次は、翻訳の仕事をしながら執筆をして、いろんな賞にノミネートされ、大きな賞を得ている。遅咲きと良く言われているが、執筆スピードが早いらしく、筆が乗っている時期は、年に2冊のペースで新作が書店に並んだ。

 静稀があと知るのは、恭弥と暮らすこの家が、深見響次の持ち家であることくらいだ。

「恭弥!」

 大学が台風の影響で休学になった日、これ幸いにと朝早くから螺旋階段に陣取った静稀だったけど、新しい本を手にするたび、ウズウズする感情を我慢できなかった。

「なに?」

 恭弥は3階のソファに寝転がり、スマホのゲームをしている。半分、寝ているんじゃないかという表情で静稀を見やり、欠伸をする。

「これ、どういうこと? 深見響次先生って、どんなひと?」

 深見響次が所有している本には、作者のサインやメッセージが入っている。お礼の言葉が多い。「お楽しみ頂けたら幸いです」「何か少しでも届けられたら嬉しい」「いつかお会いしたいです」そういった数々の言葉が表紙や背表紙の内側にあった。

 その中でも静稀が気になった3冊を持って、恭弥の寝転ぶソファ前のラグに座り込む。

「これ、見て」

 強引に恭弥の腹に3冊の本を乗せた。

「こんなの渡す? なんか大人の世界が怖い」

 本に挟んであるのはコンドーム。しかもホテルの部屋番号が書いてある。

 もう一つは飛行機のチケット。行き先はニース。

 最後は小切手。1000万の記載がある。

「あーね、積極的なひとは多いよな。でもあの人はそんなんで揺れねえから。だから入れっぱなしなんだろ? っていうか静稀、あそこにある本は貰い物で捨てられねえから仕方なしに置いてるヤツ。気に入りは持って行ってる」

 恭弥は腹の上に乗せられた本を退けて、静稀の手を引く。

「叔父さんにはずっと恋人がいたから、誰に誘われても気にも留めてねえよ。だから使われてねえだろ?」

 恭弥の腹の上に座らされて、下から見上げられる。

「そっか、そうなんだね。あんまりあからさまだったからびっくりした」

「叔父さんは本命一筋だよ、俺と一緒で」

 手を引かれ、頬に触れられ、頭に手を添えられる。キスをして、恭弥の胸に頬を乗せ、恭弥の上に体を重ねる。

 鬱陶しい梅雨の時期。窓の外は激しい雨風。でも室内は穏やかだ。


◇◇◇


「でもショックだな」

 静稀は恭弥の上に体を重ねたまま、床に落ちた本に手を伸ばす。

「なにが?」

 恭弥は眠いらしく、静稀を乗せたまま、欠伸をして、出て来た涙を腕で拭っている。

「だって先生の愛読書かと思っていたのに、手もつけてないんでしょう? なんとなく、感じ方が変わった」

 静稀がそう言うと、恭弥が部屋を示した。

「叔父さんの部屋、残してったのが置いてある」

 恭弥がそう言うと、静稀は勢いよく立ち上がり、珍しい小走りで、恭弥の指した方へ行く。恭弥は口端だけで笑んで立ち上がり、静稀の後を追った。

「どこ? 恭弥」

 叔父さんのベッドルーム、恭弥の使っている部屋だ。

「一回、やらせてくれたら教える」

「は?」

 後ろから抱き締められ、体を捻らされてキスされる。確信犯の表情を見てムッとした。

「眠かったんじゃないの?」

「眠かったけど、静稀に乗られて起きねえわけねえだろ?」

 グッと腰を寄せられて、勃っていることを教えられた。

 静稀は赤面する。こういうあからさまな表現には未だに慣れない。恭弥は性欲に忠実だ。勃ったらすぐに教えて来る。小学生かと思うくらい単純だ。

「思春期の少年か盛りのついた犬」

「だって静稀が側にいるんだぜ? オカズに困らねえ」

「酷い言い方」

「お互いさまだろ?」

 冗談を言い合っているのに恭弥の表情が変わっている。獲物を狙う目、どうやって喰おうかとする獣の気配。そういうのを見せられると、静稀はたまらなくなる。

 恭弥に触られる悦び、舐められ、噛まれる感覚、入れられて突き上げられる快感。そんなものに支配され尽くした体は、恭弥の変貌に反応して甘く崩れる。

「静稀、静稀の熱くてうねるところ、いれたい」

 背中にゾクゾクとした感覚が上る。

「静稀」

 ベッドにうつ伏せで寝かされ、スウェットを引き下ろされ、尻を開かれる。昨晩したばかりだ。まだ閉じ切っていない。こんな恥ずかしい瞬間はないのに、その後の予感に気持ちが逸り、勝手に穴が口を開く感覚がある。

「静稀、欲しい?」

 じっと見られ、舌が入って来る。指でジェルを塗り込められながら舐められ、勃ったモノをゆるゆると触られる。

「は、ああ、んんん……」

 恭弥の指がヌクヌクと粘液の音を上げて行き来し始めた時、静稀は尻を下げ、振り返って恭弥を睨んだ。

 恭弥が怯む。情事の狂った思考の時でも、恭弥は静稀の心に敏感だ。

 手を引いて静稀は恭弥を仰向けに寝かせ、腹につくほど勃ったモノを手にして、自分の尻穴に触れさせる。

「静稀?」

 恭弥の視線が結合部分を見ている。荒い息を吐き、汗をかきながら、獣の目で静稀を射る。

 こういう時、静稀は快感を覚える。自分の姿や行為が恭弥の感情を揺らしているのかと思う優越。恭弥が快楽の息を吐き、声を出せば、静稀はそれに興奮を覚えた。

「は、あっ、静稀、静稀……」

 恭弥のモノを深く受け入れ、緩く、激しく腰を振る。

「あ、あ、イイ、イイ……」

 恭弥が起き上がり、キスを強請る。舌でそれを迎え、感じている恭弥の表情を楽しんだ。

 それから何度も角度を変え、体位を変え、揺すぶられた。

 やっと解放された時、起き上がるのも億劫になっているのに、恭弥は静稀の体を抱えながら、ベッド脇にある棚を示した。

「静稀、本、ここ」

 静稀は恭弥の腕に噛み付いた。


◇◇◇

おわり
ありがとうございました。
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