イケメンってズルいと思う。

サクラギ

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 風呂に入って、尻の中のジェルを洗って、居た堪れない気持ちになる。

 あいつ、酔ってた。
 俺がバイトしてる5時間、どっかで飲んで来てる。

 5時間もあれば、行きつけの店だって行けるだろうし、こういうことする気分盛り上げられるだろうし。

「……後悔、…かなぁ」

 大学での一ノ瀬は好きじゃない。
 絶対に合わないし、気を使うのも無理。

 でもふたりの時の一ノ瀬は普通。
 大して時間、共有してないし、本当はどういうヤツか知らない。

 お互いの性癖が合うっていうのはわかった。それってけっこう重要なことも知ってる。

 やりたい時に両方やれる。
 でもそれってセフレで良くない?
 どうなのかな。わからない。

「もう出る? テキトーに食べる物買ってきた」

 ドアをノックされて、ビクッとなった。

 スエットとTシャツ着て、出て行く。
 一ノ瀬は先に風呂済ませていて、俺の服着てる。なんか恥ずかしい。

「テキトーだから好きに食べていーよ」

「うん、ありがとう」

 一ノ瀬、おにぎり食べてる。それと麦茶。ふつう。

 どっかの部屋の洗濯機の音と、ウチの洗濯機の音。窓開けて、窓辺に布団干してる。

 生活感いっぱいの部屋に一ノ瀬。

 テーブルも椅子もない部屋。二間で奥は畳。入り口のある手前の部屋は小さなキッチンがある。

 テレビもない部屋の真ん中の床にコンビニビニール置いて、お茶は直置き。
 ホント寝るだけに戻る部屋だから、古くてもボロくても気にしなかったけど。一ノ瀬はどう思っているのだろうか。

「一ノ瀬の部屋は、セキュリティのしっかりしたマンションって感じするけど」

 一ノ瀬の横に座って、パンを貰う。
 袋を開けて、齧る。

「偏見」

 一ノ瀬の言葉を聞いて横を見ると、ニヤッと笑ってる。

「俺、弟と暮らしてるよ、実家」

「そうなの?」

「そう」

 へえっと思う。
 親の側なんて嫌だって一人暮らししてそうなイメージ。

「弟が3人いるよ。高2と中1と小5。父親海外赴任で母親も着いて行ってるから、高2の弟と交代で家事してる」

「へえ」

 見えない。
 毎日、遊び暮らしてるんだと思ってた。

「真夜は一人っ子っぽいよな」

「……正解」

 どうせね。
 協調性が乏しいって言われます。

「バイトして家賃払ってる?」

「うん、親、離婚してて、母親と暮らしてたけど、お互いひとりの方が好きっていうか」

 母には母の生活がある。
 最近、彼氏が出来たらしいし。
 俺はこうだから、あまり気にされたくないから、ちょうどいいと思ってる。

「男4人ってケンカすごそう」

「うーん、下二人がまだダメかな。お菓子の奪い合いとか声がうるせえとか、些細なことでケンカしてる」

 一ノ瀬がはあってため息吐いた。

「今日は? 帰らなくて良いの?」

「真夜は? バイト?」

「夕方から」

 一ノ瀬の手が、俺の手を取る。
 持ち上げられて、お互いの視線の中で、指を絡めたり、手のひら合わせたりしてる。

「どうしたい?」

「何が?」

 関係を、だろう。
 でもはぐらかす。
 自分でも良くわからないから。

「俺ら」

「うん」

 鎖骨の辺りがキュッとする。
 妙な緊張がある。

「俺、そんなに遊んでねえよ? 真夜とはマジメに付き合いたい。ダメ?」

「ここ来て、セックスするだけだろ? セフレでも良くない?」

「嫌だ」

 一ノ瀬が手を強く握って来る。
 体の向きを変えて、じっと目を見られた。

「それって他のヤツともやるってことだろ? 俺は、真夜を俺のって言いたい」

「なんで?」

 テレる。
 明るい部屋の中で、至近距離で、じっと目を見られて。
 顔を背ける。
 赤くなった顔、見られたくない。

「こっち見て、真夜」

 反対の手も取られて、引き寄せられる。俯くと、顔を上げさせられて。

 つらい。

「かわいい、真夜」

 緩くキスされる。

「かわいくない」

「かわいいよ」

 一ノ瀬に言われたくない。
 俺は普通。目立つの嫌いだし、大人数も苦手。

「就活で相手つくらないんだろ? だったら俺で良いだろ? すげえ相性よかったし」

「どういう理屈?」

「呼ばなくても側にいる的な?」

 ペロッと唇を舐められて、反射的に唇を開けば、吐息だけで笑われる。

「バイト終わり時間教えて? 待ってる」

「……ストーカーかよ」

 無理だ。
 逃げられない。
 逃げる前に許してる。
 拒めないのが答えなんだろう。
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