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17 偶然は必然って言うよね

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 仲良くランチデートに首を突っ込んだ代償は、妙に独り身が堪える寂しさだろうか。

 学食を出ると待ってましたとばかりに蓮池がいて、ガッチリ肩を組まれた。

「蓮池、じゃま」

「なーなー夕凪の彼女なんだって?」

「なにって?」

 帰ろうと思うのに道の端に連れて行かれた。ウザイ。絶対に良い話じゃない。しかも怯えている。何をやらかしたんだか。

「だーから、ジュリちゃんのこと、何か言ってたか?」

「ジュリって?」

 惚けた顔でそう言ったら、面倒くさそうにため息を吐かれた。わかるよ、何人目かに出来た彼女だろ? でも知るか。複数と付き合うコイツの機嫌取りなんて絶対しない。

「夕凪の彼女の友達の俺の彼女」

「夕凪の彼女に聞けば」

 ため息を吐きたいのは俺の方だ。っていうか、理解のある相手じゃないの? だったら堂々としていれば良いのに。

「聞けるわけねえだろ? 絶対に文句言われる」

「言われるような事した自覚あるなら甘んじて受け入れろ」

 肩にのしかかって来る蓮池をペッペッと払い、足蹴にするポーズを取って追い払っていると、前から見知った姿の人が歩いて来る。思わず足を止めてじーっと見ていると、蓮池も俺と同じ目線になって、同じ方をじーっと見た。

「五條じゃん? 隣はだれ? めっちゃイケメン」

 いや、ないよね? それはないよ。だってどういう接点? 偶然? いやいや偶然でも嫌だ。

「五條~」

 俺はもうすぐにでも踵を返して見たものを無かった事にしたいくらいに動揺したし、記憶消したいくらいなのに、蓮池が俺の肩をホールドして手を振りやがった。

「おまえらなに? 帰り?」

「おお、おまえらはこれから学食?」

 五條とハル。その仲間たち3人。っていうか接点がある事にビビる。あの出会いはやらせ? 並んで歩いている意味って? 見間違いでもなく目の前で立ち止まるし。息が苦しい。吐きそう。

「そう」

 五條が平然と言う。ハルと視線が合う。普通ににっこりされて、どう反応して良いのか困る。

「土曜にフットサルの試合あるから練習前の交流?」

「あーそっか。頑張れよ」

 蓮池が手を振ってすれ違って行くから一緒にすれ違った。混乱したまま。他人を貫いた。え? 今までにも会ったことあった? 五條の友人? 俺の事知ってて近づいて来た?

 カバンの中でスマホが振るえる。見ればハルからで「後で連絡する」って文字が。やっぱり初めから俺の事知ってた?

「さっきの五條の友達?」

 蓮池に聞いてみる。

「は? 知らねえの? N大のフットサルサークルのヤツら。良く一緒に練習してるみたいだぜ?」

 あーなるほど。五條がサッカーやってたの知ってるし、大学のフットサルサークルに入ってるのも知ってる。主に土日の夜に練習や試合をしてるのも。それを女子たちが観に行っている事も。俺も数回行った事がある。飛び入りで体験した事もあったよな。確かに別大の誰かが来ているとか聞いた事もあったけど、ハルがいたかどうかも知らない。

「そういえば土曜の試合、観に行く? ジュリちゃんが樋口連れて来いって言ってた気がする」

「なにそれ? 友達紹介するとか、そういうヤツだろ。行くわけないし」

「えー行こうぜ? ジュリちゃんに怒られるし」

「やだ」

 蓮池の腕から逃れて先に行く。未だ動揺から抜け切れていない。変な緊張+動揺=イラつきに変化している。せっかくの良かった時間が嘘で汚れそうだ。
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