異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第一の世界

変な友人

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レイチェルがナルザルクに呼び出されたらしい。

「全く何を考えているんだあいつは」

部屋で1人呟く。
いや、きっと何も考えていないのだろう。今彼の中にあるのはレイチェルへの興味だけだ。


ナルザルク。平民出身とは思えぬ程の頭脳を持ち、この世界では余りにも目立つ髪と瞳の色をしている彼は色んな意味で目立っていた。初めはそれこそ学園内での保護対象として近付いたがそのクセの強さに興味が湧き思わず友達になってしまった。

そんな彼の悪い癖は『強過ぎる探究心』だ。この学園には多くの生徒が在学している。当然後ろ暗い者達も多くいる。そんな中で彼の探究心は余りにも危険を招き寄せすぎる。


ーー最近は少し落ち着いていたと思ったのだが………


きっとレイチェルに直接会って思う所があったのだろう。彼のいわゆる『直感』と言う物はよく当たる。もう彼がレイチェルを気にしてしまった以上どうしようもない

「面倒な」

しかし言葉とは裏腹に少し心強くもある。現在学園でレイチェルの出自を知っているのは私とパールだけだ。お爺様もご存知はご存知だが生徒ではないので気軽に協力を得られる相手ではない。
次にパールだが彼女も生徒ではない。というよりそもそも人ですらない。擬態とやらで姿形を変える事は可能だが基本的には余り外に出ないように言ってある。

そう考えるとレイチェルを過激派から守るのにもう少し協力者が欲しい所だ。
本当はレイチェルの友人であるサルティナ嬢に声を掛けようかとも思ったのだが、事情を話す時にどうしても聖なる巫女の話が出る。
彼女にとって巫女の話は妹さんの話にも繋がるので流石に酷だろうと躊躇していたがナルザルクならば穏健派でもないが過激派でもない。なのでせめて敵対しない様にだけでも話をしてもいいかもしれない。

ーーしかし信用できるだろうか……


彼と知り合って友人となり、それなりに親交を深めてきた。しかしそれはあくまでも私との友人関係であり、レイチェルとではない。
彼にとってレイチェルが裏切らない、裏切りたくないと感じるに値しないと信用はできない。興味を持っているのは確かだが、レイチェルの事情を一通り聞いて興味を無くせば協力は難しくなるかもしれない。
そうなると秘密を広めるだけになってしまう。どうすれば良いだろうか

考えても余りいい案が思いつかないまま、私はその日眠りに就いた


次の日の放課後、レイチェルと待ち合わせ場所で合流する。勉強家なのかレイチェルはかなりの大荷物だった。細い身体では辛いだろうと思い持つ事を申し出たがにこりと笑って「大丈夫だから」と断られてしまった。

レイチェルの後ろに付いて案内して貰っていると突然背の高い植木の前で立ち止まった。一体どこから入るのかと思っていると彼女は徐にしゃがみ込むと四つん這いになり出したので思わず腕を引き上げて立たせてしまった。
不思議そうな顔でこちらを見てくる彼女は自分の今の格好をわかっていないのだろうか。しかし入り口がここしかないと言うのでせめて私が後ろから誰も来ぬ様に見張っておこうと思い先へ行ってもらう。

レイチェルが向こう側に出た気配がしたので私も入ってみたが中々に狭く、顔を上げて進むのが辛かったので殆ど下を向き自分の手を見ながら進んだ。
ようやく出口かと顔を上げればまさかのスカートが見えた。
咄嗟に下を向いたが本当に勘弁して欲しい。彼女は自分が年頃の女性だという事をもう少し自覚するべきではないだろうか。

しかし植木から出た景色には確かに少し心が踊った。決して広くはないこの場所が何故だかとても特別な場所に感じた。


「でしょう!わくわくするわよね!」


目をキラキラと輝かせてはしゃぐ彼女は少し幼く見え、普段は意識してしっかりしようとしている彼女の素の部分が出ている様でとても微笑ましかった。

ナルザルクと合流してから要件を聞くと、ただレイチェルと話したかっただけだと言う。
他のものならば信用しなかったかもしれないが、こいつの事だ。きっと本心なのだろう。


「私余り多くはないけどお菓子を持ってきたのよ。せっかくだから食べない?」


そう言い出したレイチェルの言葉にすぐに反応を示したナルザルクはさっさと準備を手伝い出した。まさかあの大荷物はお茶をする為の物だったのか。


ーーそれなら尚の事私が持ってもよかったのに。


もう少しパールにする様に甘えてくれても良いのではないかと考えていると彼女がクッキーを取り出したがそれを見てハッとした


ーーあれはレイチェルの手作りの!!


彼女が作るお菓子は確かに美味しい。しかしこの世界では美味しすぎて目立つ。少し美味しい、というレベルではないのだ。だからレイチェルの手作りは私以外パールを除けば知っている者も食べる者もいない。
まだ信用できるかも、協力するかもわからない者にそれを渡すのは………

「まってレイチェルこれもしかして……」

『レイチェルの手作りじゃないよね?』
そう聞こうとしたが間に合わなかった。


「レイチェル!!」

そしてクッキーを食べたナルザルクの行動。いきなりレイチェルを抱きしめるだなんて何を考えているんだ全く。レイチェルが目を白黒させて固まってしまっているじゃないか。

慌てて辞めさせるが結局クッキーの事やレイチェルについてを話す事になった。
どうも秘密ごとが苦手そうなレイチェルの事だ。こうなりそうな予感はしていたが、思っていたよりも酷いバレ方になってしまい自分がついていながらと少し落ち込む。


何だか必要以上に疲れたがどうやらナルザルクはレイチェルの事を気に入ったらしく、ナルザルクに可能な範囲で協力してくれるらしい。そして最後にレイチェルがお土産と言って私とナルザルクにそれぞれ1つずつ『ストロベリーチーズタルト』という物を持たせてくれたがそれを見たナルザルクはとてもいい笑顔になっていた。

ーーまあ、何とかなってよかったか

そう思った矢先、ナルザルクの一言で更に疲れが増す事になる



「あっちに入り口あるぞ」




ーーそう言うことは先に言え


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