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第二の世界
崇敬祭
しおりを挟む「ああ、そうですレイチェル様」
「ん?」
アリネスに話しかけられてスープを飲んでいる態勢で止まる
「………申し訳ありません。飲んで下さって結構です」
ハンカチで鼻を抑えたアリネスがふるふると首を振る
ーー相変わらず鼻血ポイントがわからない………
「で、なに?」
気を取り直して聞いてみる
「はい、実はレイチェル様に提案がございまして」
「ほうほう」
「……レイチェル様その顔をおやめください。お可愛らしすぎてまた鼻血が止まりません。あと話が進みません」
ーーいやいや、普通に話聞こうとしてただけなんだけど
とりあえずどうすればいいのかわからなかったので両手で顔を隠してみた
ボタボタッ
何か音が聞こえたので指の間を少し開けて確認してみるとアリネスが鼻から大量に鼻血を噴き出していた
「アリネス」
「はい」
「とりあえず全部食べちゃおっか」
「はい」
「アリネスは食べる前にその顔拭いてね。ご飯が鉄臭くなっちゃうから」
「……はい」
何というか、その後は2人とも黙々と食べた。
「で、食べ終わったけども」
「はい」
「もう鼻大丈夫?」
「大丈夫か大丈夫ではないかと聞かれればレイチェル様を一目見た時からわたくしの鼻は大丈夫ではありませんので大丈夫です!」
ーーなんじゃそら
もう意味がわからないので無視することにした。
「それで、さっき言ってた提案っていうのは?」
食後の紅茶を飲みながら尋ねる
「はい、そろそろレイチェル様の舞を披露してもよい頃かと」
「ほんと!?」
通しで踊れる様になってから2ヶ月。それはもう毎日毎日しごかれた。
お茶会の準備や計画に割く時間が必要なくなった分更に稽古時間が伸びて、一時期夢の中でまでアリネスにしごかれて魘されたのは記憶に新しい。
「もうかなり踊れる様になられましたからね」
「長かったね………」
「いえいえ、レイチェル様はかなりお早い方ですよ」
「ありがとう。アリネスが付きっ切りで教えてくれたお陰ね」
すると少しアリネスははにかむと「いえ」と小さく呟いた。
ーーそこで鼻を抑えなければ100点!
「そういえば披露って言ってたけど、人に見せる機会なんて早々に無い気がするんだけど」
ーー私1人の発表会なんて流石にやだよ!
ビクビクとしながら待っていると突然またあの音が響く
バアァァアン!
ーーはい本日もおはよう
「レイチェル様!」
「………おはようサラン。ああ、もうお昼だからこんにちはかしら」
相変わらず怒っているサランはツカツカと歩いてくる
「そんな事はどうでも良いのです!」
ーー挨拶は大事だよ
「噂が日々どんどんと増えているのに!レイチェル様は何をされているのですか!」
「なにって……」
舞の猛稽古して、図書館で調べ物したり、ナーニャのお茶に誘われたり、散策したり………
もう何度目かもわからないこのやり取りをアリネスは完全無視して食後のお茶を啜っている
「それにいつも申しているでしょう!何故侍女と食事を共にされるのですか!」
「サランも一緒に食べる?」
「そういう事を言っているのではありません!」
はいはい、と言っていつもの様に流しながらお茶を再開する。最近のサランは前にも増してちょっと情緒不安定だ。
やはり主人の陰口が色んな所で聞こえると肩身が狭いだろうか。
「レイチェル様。お茶が終わられたらまた図書館へ向かわれるのですよね?」
サランを無視したアリネスが言う
「そのつもりだけど、どうして?」
「図書館では静かにしなければいけないので、このヒステリー女は置いていかないといけませんので。それまでにこれをどうにかしないとなと思っております」
「………はぁ?」
睨み合う両者。お願いだからもう仲良くしてくれとは言わない。関わり合わないでくれ。
まあ無理だろうなと思いながらこれも最近の日常と化している流れなので放っておく。
「それでサラン。何か用があったんじゃないの?」
「そうでした!レイチェル様『崇敬祭』で舞われるとは本当ですか?!」
ーー顔近い………
「すうけいさい?」
するとアリネスが小さく舌打ちをする
「レイチェル様、その様な危険な場所へ御身を晒してはなりません。レイチェル様はいらっしゃるだけで価値があるのですから」
「?」
サランがまくし立てるが話が読めない
「すうけいさいって何?」
するとアリネスがやや不機嫌そうな顔をしながら説明してくれた。
「崇敬祭というのはこの国で古くから行われている儀式の1つです。龍神様への感謝、忠誠を表す事で末永く見守って下さる様お願いをするのです。
そして崇敬祭は唯一、王族と龍神教の協会が共に開催する政でもあります。規模も大きく貴族街から市民街までかなりの露店商が来るので国をあげてかなりのお祭なのです」
「へぇー……ん?さっき私が出るとか何とか言ってたお祭………それじゃないわよね?」
するともう開き直ったのかアリネスが「それですよ」と言い出した。
「………ええぇええええ?!」
ーーいやいやいや、無理だから。初めての人前がそれとか無理だから!
すると「そら見たことか」といった風にサランがため息をつく
「お可哀想なレイチェル様。何も知らされていなかったのですね。王族と教会にもう申請は出ていた様ですがすぐにでも取り消して参ります」
「その必要はありません」
サランの言葉に被せる様にアリネスが言う
「せっかく舞を覚えられたのです。人々に見て頂かなくては勿体無いではありませんか。それにレイチェル様は『自分に出来ること』を探しておられたのですよね?第一歩としてはこれ以上無いものかと思いますが」
「う、う~ん?」
急な話で頭が付いていかない。確かに言った。私に出来ることをアリネスに相談した結果の扇舞だったのだ。
人々の前で舞わなければ意味がないというのもわかる。わかるがいかんせん規模!規模がでかい!
ーーでもなぁ……そんな事いってたらいつまで経っても成長しないし
ならばもう腹を括っても良いかもしれない。
「大丈夫。私、参加するわ」
するとサランは信じられない物を見た様な顔をして「そんな………」と消え入りそうな声で呟いた。
そしてアリネスは満足そうに「流石でございます。レイチェル様」と頷いている。
「私!反対ですからね!」
突然叫び出したサランはそう言ってまた激しく扉を閉めて出て行ってしまった。
ーー扉、普通に開け閉めしてくれないかなぁ
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