異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

羽ペン

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「ごめんなさいとりあえずちょっと色々考えたいです」とだけ言いケラケラと楽しそうな幼女とショタの返事を待たずにペンダントチェーンを外した。
ラクナザスがくれた石が付いている方は関係なさそうなのでもう着脱が面倒でそのまま着けておいた。



ーーなんだろう、精神力をゴリッゴリ削られたわ…………



それから2人に名前を聞けばママとパパ♡と何度も巫山戯るので幼女のヨウと、ショタのショータと勝手に呼ぶ事にした。



「なんか日本名みたいになったな」



ベッドでゴロンと横になり天井を見上げる



「変なの。電話みたい。あ、でも頭の中で響くならパールの通話のが近いか」



…………



だめだ。どうしても1人の時間が長くて独り言が多くなってしまう。とりあえず舞の稽古を始める事にした。




コンコン




「レイチェル起きてるかな?」




舞の準備をしていると寝室にノック音とヴォルフオルの声が響く





ーー本当不定期に来るわね





「レイチェル?寝てるのかな?」



「ああ、ごめん。今少し着替えてて。もう出るからちょっと待って」



慌てて着替えだけ済ましドアを開けるとニコニコとしたオルが居た。



「やあレイチェル。朝ぶりだね。調子はどうだい?」


「ええ、朝ぶりねオル。調子はいつもと変わりなくいいわよありがとう。オルはどう?」


「そうだね。僕は君に会えて今凄く調子がよくなったよ」


そう言ってスルリと私の腰に手を回してそのまま寝室を出るオル



「あ、ああそう………」



正直オルには全然全くちっとも恋愛感情を抱いていないのでこういう事をされても「歩きにくいな」くらいにしか思わないがオルに憧れている婦女子の方々からすると鼻血ものなのだろうか。



ーーまあ顔は整ってるもんなぁ



オルの横顔を眺めていると「なに?」と言いながらにっこりと微笑まれた


ーーうん、やっぱなんとも思わないな



結果、やはり私の中でオルは友達という事が再確認できただけだった



「そういえばオル、あなたちゃんと寝てるの?公務が忙しそうなのにわざわざ私の所へ来たりして身体壊さない?」




だからそんなにしょっちゅう来なくても大丈夫よ




そう言おうとしたがオルの満面の笑みと共に出てきた言葉に私の言葉は掻き消された



「ああ、それなんだけどねレイチェル。今日から君は僕と共に暮らす事になったよ!」





「…………は?」





















「今日から君は僕と共に暮らす事になったよ」?ん?え?
待て待て待て。この世界で婚前同居は無しじゃなかった?てことはもう知らない間に婚姻も済まされちゃった感じなのかな



オルの言葉に目を白黒させていると嬉しそうなオルが更に言葉を続ける



「荷物はこちらが運び込むからね。君は移動するだけでいい」


「ず、随分急な話ね。でも婚姻もしていないのに一緒に暮らすのは大丈夫なの?」


一応確認も兼ねて聞いてみるとオルの顔が少し曇る



「ああ、本当はよくないんだけどこんな状況だからね。皆がレイチェルの魅力に気付いてしまって皆君を欲しがっている。だから婚姻の準備に少し手間取っているんだよ。僕はもう婚姻は書類だけで済ませればいいとは思うんだけどオルトスに止められてね」


「オルトスに?」



ーーということは婚姻はまだなのね



「ああ。『お前は男だから婚姻が書類だけで済んでもいいかもしれないがレイチェルはあんなのでも一応女だ。だから一生に一度の婚姻の儀くらいは多少時間がかかっても盛大にやってやれ』って」



そう言って肩を竦めるオル




ーーオルトスグッジョブ!時間を稼いでくれたっぽいから『あんなのでも一応女』発言は聞き流してあげる!



心の中でグッとオルトスに賞賛を送りつつオルには少し残念そうな顔をしておいた。


「そう、でもそうね。私も女だもの。やっぱり準備はしっかりして万全の状態で行いたいわ」


するとオルは小さく息をつく


「わかったよレイチェル。これもウレッサーノ様の試練だと思って頑張るよ」



ーーウッサーノって誰だっけ………あ、恋の精霊だっけ?



そんなに頑張らなくていいですと思いながらオルには曖昧に微笑んでおいた。



「はい、どうぞ。僕のお姫様」



ーーき……キッザー…………



椅子に座らされすぐにオルが手ずから紅茶を淹れてくれる



「あり……がとう」



どうも恋人モードのオルとは何というかテンションが合わない。友達モードのオルとは楽しかったのにこういう恋人扱いは上手く言えないがゾワゾワする。



ーー早く夢?から覚めてくれー。やったの私だけどー



とりあえず早い所この能力の使い方をマスターしないとやばい。このままでは名ばかりの次期王妃候補になって死ぬ迄軟禁生活真っしぐらだ。



ーーそれはまずいな



オルと取り留めもない話をした後、何とか同居生活開始は1週間後まで伸ばせた。
不服そうなオルだったが「女は色々と準備に時間が必要なのよ」と意味ありげに言えば渋々という感じで承諾してくれた。
これは日頃のナーニャさんに感謝だ。
女は準備に時間がかかるという事をきっと普段から言っていたのだろう。




「じゃあまたねレイチェル」




オルが公務だと言って部屋を出て行った。




「ふぅ」



部屋に置かれているソファにダラリと座り込む。
考えなければいけない事が細々とある。しかし目下の目標というか課題は、私のこの能力を何とか自分でコントロールすることだろう。しかしこの状況で一体誰に教わればいいと言うのか。
オルはがっつり能力に掛かっているから聞いた所でちゃんと教えて貰えるか怪しい。
かと言ってランカの騎士隊のメンバーはまず会う事も難しいだろう。




ーーオルトスは能力持ちじゃないしなぁ




「あ」



いた。能力の事に関して何か知っていそうで、軟禁状態の私でも連絡を取れる人物。
しかし問題は



「あの人達には何となく頼りたくないのよねー………」




しかし背に腹はかえられぬので、とりあえず聞くだけ聞いてみようと思う。
後は………





「うん。書き出そう。紙にやらないといけない事や知りたい事を書いていけば頭の中の整理にもなるもの」




カリカリとペンを走らす音が静かな部屋に響く



「どうでもいいけど羽ペンつっかいにくいわー。シャーペンやらボールペンが懐かしい………」





返事のない部屋はやっぱりちょっと寂しかった。

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