異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

変貌

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やばい、首筋にキスをされて驚いた。そして驚いて咄嗟に奥の手として取っておこうと思っていたセリフを叫んでオルを固めてしまった。
いやまあ、あのまま居ても何か色々とやばかった気はするから決して間違いではなかったと思うが。



そして私は今、オルの部屋の出入り口に向かって走って逃げている




ガチャガチャガチャ




開けようとしたがやはり鍵が掛かっている。当然、鍵はオルが持っているのだろう。しかし今取りに戻った所で既に意識は戻っているだろう。そして上を見上げる



ーー通気口………は、うん。無理



流石に無理なのはすぐにわかった。





「どこか隠れる場所………」




すると少し離れた場所で「レイチェル」とオルが私を呼ぶ声が聞こえる





ーーぎゃー!!!やっぱり戻ってる!





「出ておいでー。さっきは怖がらせてごめんね、仲直りをしよう」




ーーやばい、声が近づいてる!こっちに来ちゃう!




慌てて入った場所は洗濯物などが置いてある部屋だった。そこにあるランドリーボックスに急いで入る



ーーランドリーボックスが無駄にでかくて助かった………



頭の上にも洗濯物を乗せ、完全に身体が隠れる様にする。するとまたオルの声がする



「わかったよレイチェル、仲直りの隠れんぼだね!」






ーー違っっうわーーーーー!!





心の中で激しく突っ込んだが、近づいて来る足音に気付き息を殺す。




ーー気づかれませんように





すると私の隠れている部屋の中をざっくりと見た様子のオルは出て行ったのか足音が遠くなりホッとする。



ーーもう行ったかな
























「見ぃつけた」



声と同時に頭にかけていた服などをどかされる。




「あ………」



服をどかして嬉しそうにこちらを見下ろすオルの瞳は今までに見た事がない位ギラギラとしていた。




「怖くないからこっちにおいで」




「い………」




嫌だ、そう言いたいのに怖くて声が出ない。ヒョイと持ち上げられてランドリーボックスから出された所で口を開く。今なら頑張って声を出せそうだ。取り敢えずもう一度さっきのを言ってオルにもう一度固まって貰おう。




「果て」




しかしそこまで言った次の瞬間後頭部に痛みが走る



「っ痛つぅ!」



そして腕を後ろに回され纏めて持たれ、口はオルの右手によって塞がれた。




ーーえ………?




口が塞がれているし身体も拘束されていて、とても逃げられる状況ではない。




「んんーーーっ(離して)!」



「ごめんねレイチェル。本当は君にこんな事したくはないんだ。でも以前にも、そして先程も僕が気付かない間に何かされた気がしてね。頭がぼうっとなるんだ。
勿論君からされる事は何だって歓迎したい。でもそれを受け入れる事によって君が僕から離れるのならば話は別だよ?」



壁に押さえつけられた頭がジンジンする。





「もう、どこにも行かないでね………」



耳元でそう囁いたオルの声は熱っぽく、まるで別人の様だった。




そのまま適当な布で後ろ手に縛られ、口には猿轡をした上から布を巻かれた。
一瞬窒息させられるのかと思ったがどうやら喋れないようにしたらしい。
鼻から息はできるので窒息の心配は無さそうだ。



ーーでも能力が使えない………!



「さあ、一緒に眠ろう」



そう言ってオルの使っているベッドルームへと案内される。何度か「ん゛ん゛ー(自分の部屋に戻る)!」と言ったが、がっちりと固定された腕はビクともしなかった。



ーー悔しい




色々なことが悔しい。どれだけ本気で力を入れてみた所でオルの腕力には敵わない事も、この状況を脱する力を持たないのも、そもそも能力をコントロールできていない事も。そして悔しい悔しいと思うだけで何もできず、ただ目頭を熱くしているだけの自分が悔しい。





ーー絶対に泣くもんか





せめて、涙くらいは流さずに耐えたい。
そして寝室に着くとすぐに照明を消され、広いベッドへと横たわらせられる。




ふぅ



猿轡をされたまま気持ちだけ深呼吸をする



ーー大丈夫、落ち着け。泣いてても事態は何も好転しない。





暗闇に慣れた目でゆっくりと近付いてくるオルを見て考える





ーーそもそも、能力を使うイメージはあくまでイメージのはず




オルがベッドに腰掛けてこちらを見下ろしている



「嬉しいよレイチェル…………」



しかし返事をせず、私は考え続ける




ーー今まで能力を使う時は対象物に糸を纏わせて、それから?声に出して指示を出していた




オルは返事がない事を気にも止めずに私の髪を一房取り、口付ける




ーーオルトスも私も、私の能力には『声』が必要だと思っていた。でも本当に声は必要?




オルは私の髪を撫で始める。そして髪を撫でた手をそのまま肩へと滑らせて行く



ーーやった事はない。でも、今はとりあえず何でも試してみる!




そう考えながら、目の前のオルに能力の糸を絡ませていく。最初よりもかなり早くなった。




「ああ、レイチェル………」




オルの手が肩から鎖骨をなぞり、ゆっくりと胸の方へと動いた




『止めて』




声には出していないが頭の中でオルに指示を出す。するとピタリと動きを止めるオル。




『私を起こして口と手の拘束を解いて』



再び、声に出さずに指示を出す。
先程の態度とは打って変わって大人しく従うオル。



ーーっ!



頭が痛い。やはり小動物とは違い人に能力をかけるのはかなり力を使うのだろうか。




「部屋の鍵を渡して。それから外に待機しているオルの護衛騎士に席を外す様命令して」




拘束されていて少し赤くなっている手首を擦りながらオルに伝える。そして私が部屋の鍵を開ければオルは隙間から顔を出し、待機している護衛騎士らに指示を出した。



ーーもう行ったかしら



人の気配が無くなった気がして隙間から外を見る。ちゃんと誰も居ない。
そしてオルに向かい合う。頭がどんどん痛みを増しているがまだオルに糸は付けたままだ。



ーー今倒れるのは絶対にダメ!耐えるのよ




心の中で自身を鼓舞し、オルに向かい合う



「ごめんなさい、それから今迄本当にありがとう。できるだけ早くあなた達をこの能力から解放するから。だから、今は眠って。私が出たらベッドに入って朝までぐっすりと眠って」


するとオルの口が小さく開き、微かに「レ……チェ………」と聞こえる



ーーごめんなさい




もう一度心の中で謝り、オルに最後「さようなら」と伝え扉を閉めて鍵を掛けた。







「うぐっ!」



膝から力が抜け、壁に手をつきゼイゼイと息をつく。呼吸が苦しい。まるでマラソンをした後の様だ。なのにどんどんと身体からは熱が逃げて行く様な感覚で気持ちが悪い。




ーー動くのよレイチェル、とりあえずこの城から出ないと。




辛い、苦しいと悲鳴をあげる身体に何とか言い聞かせて足を前に出す。




「立ち止まってる…時間……は、ない………のよ………」



ズルズルと壁伝いに歩く重たい足音が寂しく響いていた。










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