勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~

藤 ゆみ子

文字の大きさ
10 / 28

第10話 舞踏会

しおりを挟む
 舞踏会当日、準備をするために部屋に来てくれた侍女たち。
 ワゴンに積まれたメイクやヘアセットの道具、普段は使わないコルセットやパニエなどを見て今回も始まるのか、と気合いを入れる。
 そして、持っていたドレスを見て驚いた。

「あの、このドレスは?」
「シオン様が今日のために仕立てられたのですよ」
「そうだったのですね。知りませんでした」

 結婚した当初、一着だけドレスを仕立てた。とても良いものだったし、二回しか着ていないので今回もそれを着るものだと思っていた。
 けれど、今思えば失礼だったかもしれない。
 昨年の舞踏会の前にドレスを仕立てないかと尋ねられた時、まだ着られるからと断ってしまった。
 公爵家の妻が公の場でドレスを着回すなんて、体裁が悪かったかも。
 実家ではドレスはボロボロになって着られなくなるまで着崩していたから、そんな考えに思い至らなかった。育ちって大事だよな。

 シオン様も私がいらないと言えばそれ以上は何も言わないから、気づけなかった。
 普段は既製品のシンプルなドレスを着ているだけだし、今後は身なりにも気をつけないといけないかも。

 そんなことを考えながら、私はされるがままにどんどん準備は進んでいく。

 コルセットをこれでもかと絞められ、何枚もパニエを重ねる。
 そして、新しいドレスに袖を通す。

「素敵……」

 オフショルダーに、Aラインのデザインは、スタイルをよく見せてくれる。
 広がったスカートの裾には細やかな刺繡があしらわれていてとても上品だ。
 そして、シオン様の瞳と同じスカイブルー色の生地。

「もっと素敵になりますよ」

 侍女は私をドレッサーの前に座らせると、メイクとヘアセットを同時に進めていく。
 彼女たちの手際は素晴らしく、あっという間に仕上がった。
 最後に先日買ってもらったネックレスを付けて完成だ。

「ティア様、とてもお綺麗です」
「シオン様もきっと喜ばれると思います」

 鏡に映る自分が自分でないみたいだ。
 しっかりと着飾るだけで随分と違うものなのだと感心する。
 
 ここまで変わるなら、シオン様も着飾ってくれって言うよね。
 これで、シオン様の妻として見劣りしない。

「綺麗にしていただいて、ありがとうございました」
「舞踏会、楽しんでくだいね」

 侍女たちは満足そうに部屋を出ていった。
 
 そしてすぐにドアがノックされる。
 返事をすると、シオン様が入ってきた。

「シオン様、新しいドレスありがとうございます」
「うん。とてもよく似合ってる」
「こんなに胸元が開いたデザインは初めてなので少し恥ずかしいです」
「僕は、このデザインにして良かったと思ってるよ」

 シオン様はそう言い、ネックレスにそっと触れた。
 そうか、私が選んだこのネックレスに合わせてデザインを考えてくれたんだ。

「シオン様のおかげで、胸を張って舞踏会へ行けます」

 感謝の意を込めてカーテシーをした。
 シオン様は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに微笑み、手を差し出してくる。

「行こうか」

 私たちは馬車に乗って、王宮へと向かった。
 
 舞踏会の会場である大広間にはすでにたくさんの貴族たちが集まっていて、それぞれ談笑したり、挨拶を交わしている。
 壇上には長い白ひげが特徴の国王を中心に王族が座っていて、その下には騎士たちが立っていて、警護をしていた。

 何度来てもこの雰囲気はなれないな。緊張する。

「ティア、もっと肩の力を抜いて」
「はい……」

 そんなに気を張らなくても、見知った人と軽く挨拶を交わし、国王の挨拶を聞き、パートナーとダンスを踊るだけだ。
 わかってはいるけれど、雰囲気にのまれてしまう。

「見て、国王の口元。きっとあれはワインを飲んできているな」
「あ……おひげが少し赤いですね」
「国王は厳格そうに見えるけど、実はあがり症なんだよ。だから緊張を和らげるためにワインを飲むんだ。毎度国王のひげを確認するのが楽しみなんだよね」
「そんなことを楽しみにしてらしたなんて知りませんでした」

 シオン様の話に思わず笑ってしまう。
 国王様のひげなんて気にしたことなかったな。
 言われたら、つい見てしまう。
 いけない、と思いシオン様に顔を向けると、目が合った。
 二人でクスリと笑い合う。

 なんだか、さっきまでの緊張が嘘みたいに和らいできた。
 
 こそでふと、会場の隅に立つクラウド様が目に入った。
 少し見ていると、目が合った。けれどすぐに逸らし、会場の様子に集中している。
 警備のお仕事大変そうだな。

 クラウド様は今まで一度も舞踏会でダンスを踊ったことはないと聞いている。
 女性からそれなりに人気はあるし、お声をかけられたりもしているそうだけど、仕事があるからと全てお断りしているのだ。騎士だからといって踊ってはいけないわけではない。
 他の団員たちは仕事をしながら交代で婚約者や奥様たちと踊っているのに。

 今も、可愛らしいご令嬢に声をかけられていたが、断っているようだった。

「やっぱり、シオン様以外とは踊りたくないのかしら……」
「ティア? どうかした?」
「あ、いえ……。クラウド様、お忙しそうだなと」

 シオン様は少し顔を歪めたあと、クラウド様の方を見る。

「クラウドは仕事一筋人間だから、結婚する相手は大変だろうね」

 またご令嬢に声をかけられる姿を見て、眉をひそめる。
 嫉妬、しているのだろうか。
 愛する人が他の人から言い寄られたら嫌だよね。

 でもそれって、クラウド様も同じ?
 愛するシオン様が私とダンスを踊る姿なんて見たくないのかも。
 だからさっきもすぐに目を逸らしたんだ。
 なんだか申し訳ない。

 そうだ、いいことを思いついた。
 この舞踏会、せっかくだからお二人に楽しんでもらおう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『選ばれなかった令嬢は、世界の外で静かに微笑む』

ふわふわ
恋愛
婚約者エステランス・ショウシユウに一方的な婚約破棄を告げられ、 偽ヒロイン・エア・ソフィアの引き立て役として切り捨てられた令嬢 シャウ・エッセン。 「君はもう必要ない」 そう言われた瞬間、彼女は絶望しなかった。 ――なぜなら、その言葉は“自由”の始まりだったから。 王宮の表舞台から退き、誰にも選ばれない立場を自ら選んだシャウ。 だが皮肉なことに、彼女が去った後の世界は、少しずつ歪みを正し始める。 奇跡に頼らず、誰かを神格化せず、 一人に負担を押し付けない仕組みへ―― それは、彼女がかつて静かに築き、手放した「考え方」そのものだった。 元婚約者はようやく理解し、 偽ヒロインは役割を降り、 世界は「彼女がいなくても回る場所」へと変わっていく。 復讐も断罪もない。 あるのは、物語の中心から降りるという、最も静かな“ざまぁ”。 これは、 選ばれなかった令嬢が、 誰の期待にも縛られず、 名もなき日々を生きることを選ぶ物語。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。

ぽんぽこ狸
恋愛
 レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。  その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。  ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。  しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。  それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。  彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。

婚約破棄されて去ったら、私がいなくても世界は回り始めました

鷹 綾
恋愛
「君との婚約は破棄する。聖女フロンこそが、真に王国を導く存在だ」 王太子アントナン・ドームにそう告げられ、 公爵令嬢エミー・マイセンは、王都を去った。 彼女が担ってきたのは、判断、調整、責任―― 国が回るために必要なすべて。 だが、それは「有能」ではなく、「依存」だった。 隣国へ渡ったエミーは、 一人で背負わない仕組みを選び、 名前が残らない判断の在り方を築いていく。 一方、彼女を失った王都は混乱し、 やがて気づく―― 必要だったのは彼女ではなく、 彼女が手放そうとしていた“仕組み”だったのだと。 偽聖女フロンの化けの皮が剥がれ、 王太子アントナンは、 「決めた後に立ち続ける重さ」と向き合い始める。 だが、もうエミーは戻らない。 これは、 捨てられた令嬢が復讐する物語ではない。 溺愛で救われる物語でもない。 「いなくても回る世界」を完成させた女性と、  彼女を必要としなくなった国の、  静かで誇り高い別れの物語。 英雄が消えても、世界は続いていく―― アルファポリス女子読者向け 〈静かな婚約破棄ざまぁ〉×〈大人の再生譚〉。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

【完結】「お前を愛することはない」と言われましたが借金返済の為にクズな旦那様に嫁ぎました

華抹茶
恋愛
度重なる不運により領地が大打撃を受け、復興するも被害が大きすぎて家は多額の借金を作ってしまい没落寸前まで追い込まれた。そんな時その借金を肩代わりするために申し込まれた縁談を受けることに。 「私はお前を愛することはない。これは契約結婚だ」 「…かしこまりました」  初めての顔合わせの日、開口一番そう言われて私はニコラーク伯爵家へと嫁ぐことになった。  そしてわずか1週間後、結婚式なんて挙げることもなく籍だけを入れて、私―アメリア・リンジーは身一つで伯爵家へと移った。 ※なろうさんでも公開しています。

恋詠花

舘野寧依
恋愛
アイシャは大国トゥルティエールの王妹で可憐な姫君。だが兄王にただならぬ憎しみを向けられて、王宮で非常に肩身の狭い思いをしていた。 そんな折、兄王から小国ハーメイの王に嫁げと命じられたアイシャはおとなしくそれに従う。しかし、そんな彼女を待っていたのは、手つかずのお飾りの王妃という屈辱的な仕打ちだった。それは彼女の出自にも関係していて……? ──これは後の世で吟遊詩人に詠われる二人の王と一人の姫君の恋物語。

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

処理中です...