異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

115.だってぇ…しょうがないじゃん

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「…………。」

一心は、無の顔から変わっていない。

「…………。」

神様は、顔を固めたまま私の返答を待っている。

「…………。」

ウィール様達は、微笑んでいる。

紅茶を飲みながらチラリと、いまだ頭を下げ続ける殿下と同じように頭を下げた騎士二人を見る。
ピシッと動かぬ三人。

……正直、どうでもいい。一心を舐めるように見た王妃と、立場に見合った決断ができない国王が治める国なんて。

それでも――

「私に対する利はきっちりいただきますが、それでもよろしいですね?」

そう返せば、おそらく女性が軒並み赤面するであろう満面の笑みで返事をする殿下。

「はい!」

顔だけはいいね。顔と天性の真面目さは認めてあげるよ。

「よろしいので?マスターが手をかける価値は無いように思えます。」

わざと殿下達に聞こえるように、一心が言った。

「僕もだよ。君がわざわざ教育係になる価値、彼らにあるのかい?処分の決断すらできないんだよ?」

神様も一心に続いた。ウィール様は相変わらずで、

「小鳥美の思う通りにしたらいいよ。サポートするのが私達の役目だからね。」

といった。

「あのねぇ、私だってこんな子守ごめんだよ。こんなことやってる暇があったら情報集めに行きたい。依頼だってこなしたいし。」

思わず本音が漏れる。精霊妃なんてものすら放り出して情報屋として、裏では殺し屋として動きたい。

「理解できません。」

そう呟いた一心。

「だってさぁー。」

天井のその上、死者達がいるのだろう空を見上げて呟く。

「主が、『導き生きて』なんて言ったんですよ?仕方がないじゃないですか。主の遺言には逆らえません。」

そう呟けば、神様とウィール様は呆れた溜息を吐き出した。

「君って本当に、主一筋なんだねぇ。」

「僕らの忠誠心が優しく見えるね。僕ら精霊達って、人間からすると執着に近い忠誠を誓っているんだけど………。」

「ウィール、考えちゃいけない。小鳥美がおかしいんだよ。人間はこんなに執着が強い生物じゃないから。勘違いしないようにね。」

「分かったよ。」

そんな二人を丸っと無視して、ヤドゥールに声をかける。

「ヤドゥール殿、前に渡した黒い石があるでしょう?殿下の機嫌が上がって魔力が膨れています。さっさと押し当ててください。こんなところで魔力暴走起こされちゃたまった物じゃないので。」

そう言い終わった途端焦るヤドゥールを人睨みしてからに内ポケットから黒魔石を取り出し、殿下の額に当てた。

(応急処置………今だけは身長が5cm位欲しい!)

「せ、精霊妃様その……近いです。」

「そんなことを言っている余裕があるのであれば、自力で魔力を圧縮でも何でもして小さくしてください。ヤドゥール=ガディア、早く。」

「はっ!」

ヤドゥールが魔石を当てると、やっと若干赤みがかっていた顔色が戻った。

「さて、ちょうどいいので公爵も聞いて下さい?殿下の生まれつきの症状についてです。」

そう声をかけても今だ放心していたので、一心に軽く叩いてもらい強制的に起こす。

(こいつらには言葉よりも殺気とばした方が楽だな。)

「殿下の生まれつきの症状についての説明をします。聞け。」

「「はいぃ!!」」

そうして話せば、まぁ、出てくる出てくる公爵のアホさ加減。

「では、陛下にはやはり新たなお子を産んでいただく必要が……?」

「宰相殿?そんなことすればさっさと王太子殿下は暗殺されますが?今でさえどうでもいい存在として扱われているの、ご存じで放置されていましたよね?」

「それ、は……。」

「殿下に死なれると私が主に怒られてしまうではありませんか。それとも、暗殺者を送り込む予定がおありで?」

意訳「お前らが殿下殺す気か?」

「そのようなつもりはございません!」

「では、陛下に新たなお子は産んでもらわないでください。あの馬鹿の子種なんぞ要りません。」

「はい……。」

ため息しか出てこない。
たとえ頭の中を整理するためだとしても、口に出してしまえば王族批判にあたることを簡単に零すとは。
これ↑宰相ですよ?

宰相とは
君主に任ぜられて宮廷で国政を補佐する者 (某ペディアより)

が、これ。

…………………


「よく滅びませんでしたね。」

「本当にね。」

「人間の事とかどうでもいいけれど、この大陸内で二番目に大事な精霊姫の手を煩わせるとかあり得ないよ。私の加護いるのかなぁ?」

「三人とも、思っていても言わない方がいい事ってあるんですよ?」

一応、本当に一応言えば三人とも胡乱な目でこちらを見て、二つのため息と不思議そうな顔を一つ見せた後に口を開いた。

「マスターが言います?」

「君が言うのかい?」

「小鳥美が言うの?」

………。むう。

「あのねぇ、私だってこんな原石磨きに精を出すんじゃなく、情報屋として動きたいんです!そんなこと言ったらさっさと荒野に戻したくなるじゃないですか!………こんな国いらないっての。」

だからやめてくれ、といえば納得してくれたようだ。



貴族たちの顔色?
真っ青だけどどうかした?
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