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1年生1学期
4月20日(火)晴れ 文芸部の始まり
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今日は文芸部のミーティングが(恐らく)ある日だ。放課後に見慣れ始めた2階の廊下を進んで部室の扉の前にやって来ると、珍しく部室内から騒がしい声が聞こえる。豊田先生は僕が来ることを伝えると言っていたからわざわざ集まってくれたんだろうか。
(だとすると……何か気の利いた挨拶とかした方がいいか……?)
入部して迎えられるということが久しぶりだったから、そんなことはまるで考えてなかった。僕は一旦、扉から一歩下がると、少し考え始める。
(こういう時はウケ狙いとかはしなくていい……はず。でも、普通に入るだけだと何か違う気がするし、うーん……)
「……産賀くん」
迷走し始めた僕はその呼びかけに我に返る。そこには三度目の顔合わせになる岸本さんがいた。
「ああ、こんにちは、岸本さん」
「今日は見学……じゃないよね?」
「うん、昨日入部届を出したから部員になった……はず」
「わたしも昨日出したから……同じ」
入部届を提出した時に「あなたも」と豊田先生が言っていたから、岸本さんは昼休みよりも前に提出したのだろう。二人とも部長の前で入部宣言をした手前、早めに入部しておこうという考えは同じだったようだ。
「それで……入らないの?」
「あっ、いや、どんな感じで入ろうかなと」
「別に普通でいいと思うけれど……今日はわたしから入った方がいい?」
「だ、大丈夫! そうだよね、普通でいいんだ、普通……」
そう言いながら僕は扉を引くと、入るや否や「入部おめでとー!」の声と共に多数の拍手で迎えられた。部室内には今まで来た中で一番多く人数がいるように見える。
「あ、ありがとうございます」
「いやー 二人して扉の前で話してるからわかっちゃったわー ほら、突っ立てないでお入りー」
森本先輩にそう言われて少し恥ずかしさを感じつつ、僕と岸本さんは案内された席に座る。森本先輩以外の女子の先輩は正直まだ顔を覚えていないけど、今日は僕以外の男子が一人だけいた。でも、その男子は一番最初に来た時に見た人とは違う人だ。
「えー 昨日の豊田ちゃんからの連絡通り、うちに新入部員が二人来てくれましたー いきなりだけど、名前だけでいいから自己紹介お願いー まずは……男子からー」
「はい、産賀良助です!今日からよろしくお願いします!」
「よろしくー 次は女子ー」
「岸本路子です。……よろしくお願いします」
「よろしくねー じゃあ、一応ミーティングの日だからそれっぽいことをしまーす」
森本先輩がそう言うと、周りの先輩方がステージを盛り上げるようにがやがやとする。
「文芸部は主に文章を書く創作活動をしていきまーす。大きな目標としては文化祭に向けた冊子『黄昏』の作成でーす。寄稿は一人一作が基本で、形式は小説・俳句・短歌・和歌・詩などなど、文芸的なものならわりと何でもOK。あっ、俳句や短歌はできれば数作欲しいかなー ページ少なすぎても勿体ないしー」
「森ちゃん部長! やることはそれだけですか~?」
「それ以外ではたまに気が向いたら一つテーマを出してそれぞれ短文を作って貰ったり、参考になりそうな本とか施設とかの情報共有だったりすることもありまーす。後は豊田ちゃんが短歌の有識者だからたまに文化祭とは別で短歌を作ってもらうかもー」
「なるほど~」
僕や岸本さんが受け答えしなくても先輩方が話を進めてくれる。おかげで貰った用紙とおさらいと細かな文芸部の活動はだいたいわかった。
「こんな感じかなー じゃあ、以降は自由な時間ってことで各自居残るも帰るもお任せしまーす」
ミーティングが終わると人数的には圧倒的に多い女子の先輩方が岸本さんを囲んで話し始めた。
「ねぇ、岸本ちゃん、だよね? ちょっと話いい?」
「わーお! 貴重な後輩ちゃんだぁ~」
まず気になるのは同性の後輩になるのは仕方ない。
「産賀くんだっけ? 文芸部にようこそ」
一方、僕の方には唯一来ていた男子の先輩が話しかけてくれた。
「俺は新山。3年だ」
「はい、これからお世話になります」
「ははっ。任せて……って言いたいところだけど、俺は兼部してるし、今年は受験生だからあんまり顔は出さないかもしれないんだ。ごめんね」
「そ、そうですか」
「3年で入部した男子は俺だけでね。2年は3人入ってるけど、文化祭以外で部室に顔見せるのは藤原ぐらいだと思う」
新山先輩が言うことが正しいのならこの前いたのは藤原先輩ということになるのだろう。ただ、どちらにしても男子は肩身が狭いのかもしれない。
「新入部員がこれで終わりじゃないかもしれないし、まぁ、焦らず気楽にやっていけばいいと思うよ」
アドバイスはありがたいけど、そんな新山先輩と会うのはもう数えるほどしかないと思うと、男子一人というのはちょっとだけ不安になってきた。
「男子同士の会話終わった? えっと、確か……」
「産賀くんでしょ」
「そうそう産賀くんは~……」
それから岸本さんから流れてきた女子の先輩たちの質問攻めされることになった。
数十分ほどして気が済んだ先輩方から開放されると、僕はすぐに部室から出ていった。
「はぁ……」
最初だから仕方ないけど、一方的に自分のことを聞かれるのは結構疲れる。こんな先輩方も普段は顔を見せるかわからないから、全員の名前が覚えられるのはいつになるかわからない
「はぁ……」
僕と同じようにため息をついて出てきたということは、岸本さんも同じ状態なのだろう。女子の先輩に話しかけられていた時間は僕より長そうだった。
「お疲れ様、岸本さん」
「……そっちも。まさかこんなに部員がいると思わなかった」
「全体だと僕らを除いて12人はいるみたいだし、意外と多かったんだなぁ」
そのうち4人が男子で、今後会うかもしれないのは藤原先輩だけの可能性もある。まぁ、今日話した女子の先輩方も悪い人はいなさそうだったからそこは安心だ。
「あの……」
「うん?」
「……ううん、なんでもない。わたしはこれで」
「えっ? うん、また」
後は岸本さん以外の1年生が入部するかどうかだけど……今日も見学がいなかったから難しいかもしれない。
(だとすると……何か気の利いた挨拶とかした方がいいか……?)
入部して迎えられるということが久しぶりだったから、そんなことはまるで考えてなかった。僕は一旦、扉から一歩下がると、少し考え始める。
(こういう時はウケ狙いとかはしなくていい……はず。でも、普通に入るだけだと何か違う気がするし、うーん……)
「……産賀くん」
迷走し始めた僕はその呼びかけに我に返る。そこには三度目の顔合わせになる岸本さんがいた。
「ああ、こんにちは、岸本さん」
「今日は見学……じゃないよね?」
「うん、昨日入部届を出したから部員になった……はず」
「わたしも昨日出したから……同じ」
入部届を提出した時に「あなたも」と豊田先生が言っていたから、岸本さんは昼休みよりも前に提出したのだろう。二人とも部長の前で入部宣言をした手前、早めに入部しておこうという考えは同じだったようだ。
「それで……入らないの?」
「あっ、いや、どんな感じで入ろうかなと」
「別に普通でいいと思うけれど……今日はわたしから入った方がいい?」
「だ、大丈夫! そうだよね、普通でいいんだ、普通……」
そう言いながら僕は扉を引くと、入るや否や「入部おめでとー!」の声と共に多数の拍手で迎えられた。部室内には今まで来た中で一番多く人数がいるように見える。
「あ、ありがとうございます」
「いやー 二人して扉の前で話してるからわかっちゃったわー ほら、突っ立てないでお入りー」
森本先輩にそう言われて少し恥ずかしさを感じつつ、僕と岸本さんは案内された席に座る。森本先輩以外の女子の先輩は正直まだ顔を覚えていないけど、今日は僕以外の男子が一人だけいた。でも、その男子は一番最初に来た時に見た人とは違う人だ。
「えー 昨日の豊田ちゃんからの連絡通り、うちに新入部員が二人来てくれましたー いきなりだけど、名前だけでいいから自己紹介お願いー まずは……男子からー」
「はい、産賀良助です!今日からよろしくお願いします!」
「よろしくー 次は女子ー」
「岸本路子です。……よろしくお願いします」
「よろしくねー じゃあ、一応ミーティングの日だからそれっぽいことをしまーす」
森本先輩がそう言うと、周りの先輩方がステージを盛り上げるようにがやがやとする。
「文芸部は主に文章を書く創作活動をしていきまーす。大きな目標としては文化祭に向けた冊子『黄昏』の作成でーす。寄稿は一人一作が基本で、形式は小説・俳句・短歌・和歌・詩などなど、文芸的なものならわりと何でもOK。あっ、俳句や短歌はできれば数作欲しいかなー ページ少なすぎても勿体ないしー」
「森ちゃん部長! やることはそれだけですか~?」
「それ以外ではたまに気が向いたら一つテーマを出してそれぞれ短文を作って貰ったり、参考になりそうな本とか施設とかの情報共有だったりすることもありまーす。後は豊田ちゃんが短歌の有識者だからたまに文化祭とは別で短歌を作ってもらうかもー」
「なるほど~」
僕や岸本さんが受け答えしなくても先輩方が話を進めてくれる。おかげで貰った用紙とおさらいと細かな文芸部の活動はだいたいわかった。
「こんな感じかなー じゃあ、以降は自由な時間ってことで各自居残るも帰るもお任せしまーす」
ミーティングが終わると人数的には圧倒的に多い女子の先輩方が岸本さんを囲んで話し始めた。
「ねぇ、岸本ちゃん、だよね? ちょっと話いい?」
「わーお! 貴重な後輩ちゃんだぁ~」
まず気になるのは同性の後輩になるのは仕方ない。
「産賀くんだっけ? 文芸部にようこそ」
一方、僕の方には唯一来ていた男子の先輩が話しかけてくれた。
「俺は新山。3年だ」
「はい、これからお世話になります」
「ははっ。任せて……って言いたいところだけど、俺は兼部してるし、今年は受験生だからあんまり顔は出さないかもしれないんだ。ごめんね」
「そ、そうですか」
「3年で入部した男子は俺だけでね。2年は3人入ってるけど、文化祭以外で部室に顔見せるのは藤原ぐらいだと思う」
新山先輩が言うことが正しいのならこの前いたのは藤原先輩ということになるのだろう。ただ、どちらにしても男子は肩身が狭いのかもしれない。
「新入部員がこれで終わりじゃないかもしれないし、まぁ、焦らず気楽にやっていけばいいと思うよ」
アドバイスはありがたいけど、そんな新山先輩と会うのはもう数えるほどしかないと思うと、男子一人というのはちょっとだけ不安になってきた。
「男子同士の会話終わった? えっと、確か……」
「産賀くんでしょ」
「そうそう産賀くんは~……」
それから岸本さんから流れてきた女子の先輩たちの質問攻めされることになった。
数十分ほどして気が済んだ先輩方から開放されると、僕はすぐに部室から出ていった。
「はぁ……」
最初だから仕方ないけど、一方的に自分のことを聞かれるのは結構疲れる。こんな先輩方も普段は顔を見せるかわからないから、全員の名前が覚えられるのはいつになるかわからない
「はぁ……」
僕と同じようにため息をついて出てきたということは、岸本さんも同じ状態なのだろう。女子の先輩に話しかけられていた時間は僕より長そうだった。
「お疲れ様、岸本さん」
「……そっちも。まさかこんなに部員がいると思わなかった」
「全体だと僕らを除いて12人はいるみたいだし、意外と多かったんだなぁ」
そのうち4人が男子で、今後会うかもしれないのは藤原先輩だけの可能性もある。まぁ、今日話した女子の先輩方も悪い人はいなさそうだったからそこは安心だ。
「あの……」
「うん?」
「……ううん、なんでもない。わたしはこれで」
「えっ? うん、また」
後は岸本さん以外の1年生が入部するかどうかだけど……今日も見学がいなかったから難しいかもしれない。
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