産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

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1年生夏休み

8月28日(土)曇り 清水先輩との夏散歩その6

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 夏休み39日目。今日も清水先輩と朝から散歩に行くことになり、僕はこのタイミングで清水先輩を夏祭りに誘うことにした。お祭りの直前になってしまったけど、これで本田くんにどう言うべきかはっきりすることになる。

 集合場所に着くと、準備運動をしながら清水先輩が待ち構えていた。松永に言われたから変に思われることはないと思っているけど、それでも緊張はするものだ。僕は一度深呼吸してから清水先輩に話しかける。

「おはようございます、清水先輩」

「おはよう、良助。それじゃあ、出発するか」

「あの……その前に一つお願いしたことがあって……」

「良助が?」

「はい。いいですか?」

 清水先輩はきょとんとしながらも頷いたので、僕は今回の事情を説明した。その間、清水先輩は真剣そうな表情に切り替わって聞いてくれたから恐らく変に思われてはいないだろう。

 そして、僕が話終えると、清水先輩は少し考えてからこう言った。

「うーん……すまない、私は一緒に行けない」

「そ、そうですか」

 いい答えが貰えそうな雰囲気だったけど、駄目だったようだ。だけど、僕が少し落ち込んだのを見て清水先輩は付け加えて言う。

「いや、普通にその友達二人と夏祭りへ行くだけなら良助もいるし問題ないとは思う。だが、そのー……恋愛事情?が絡んでくると私は適任じゃない。そういう空気読みは私にはさっぱりだからな」

「なるほど」

「……良助、今何の疑問もなく納得しなかったか?」

「いえ、そんなことは」

「本当か?」

 嘘だった。僕は清水先輩の今までの恋愛歴とか現状の恋愛事情とかを詳しく知っているわけではないけど、ここまで見てきた清水先輩はそういうことに関わりがない感じがする。五大美人ともてはやされるくらいだからあってもおかしくはないはずなのに。やっぱりエキセントリックが足を引っ張っているのだろうか。

 それはともかく、これで本田くんへの報告は決まった。申し訳ないけど、松永が言っていたように本田くんの土壇場の爆発力に期待するしかない。

「聞いてくれてありがとうございました。それじゃあ……」

「待て、良助。この件について適任そうな人なら一人いるぞ」

「えっ?」

 話を切り上げようとしていた僕に清水先輩はそう言う。いや、そんな人物がいたとして僕が知っているとは……

「まさか……」

「なんだ、良助から言いづらいのか? だったら、私から聞いてやろう」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「あー もしもし?」

 清水先輩が通話を繋げると、あっという間に今回の事情が横流しされていく。それから清水先輩は僕へスマホを渡した。

『いいわよ、産賀くん。私が付いて行ってあげても』

 桜庭先輩は楽し気な感じでそう言ってきた。清水先輩が頼る人といえばそうだとは思ったけど、桜庭先輩は適任なのだろうか。

『あら、夢愛は良くても私には任せられない?』

「何も言ってないです」

『なんとなく間があったから。それで、どうする? 私は特に予定がないからいいけど』

 先日のことで桜庭先輩が僕にも気遣ってくれるとわかっているし、協力的なのはありがたいことだけど、そうなると僕は本田くんと大山さんへ桜庭先輩を紹介することになる。これに関しては清水先輩も同じだったけど、どういう経緯で知り合ったか非常に説明しづらい人だ。

「……お願いします、桜庭先輩」

『了解。散歩が終わってからいいから相談しましょう。エスコートよろしくね』

「えっ」

『冗談よ。それじゃあ、夢愛に代わってくれる?』

 結局、僕は桜庭先輩に頼むことにした。今回の件は本田くん次第ではあるけけど、協力したい気持ちは変わらない。想定していた結果とは違うけど、準備ができるのなら行くべきだ。

 清水先輩が通話を終えると、ようやく散歩が始める。

「良助も色々大変だな」

「それほどでもないです。それよりすみません。清水先輩も桜庭先輩とお祭り行けたかもしれないのに……」

「ん? それは別に。この夏はもう行ったしな」

「でも、あの時は僕がいたから……」

「なんだ、良助。私を付き添いにするつもりだったのに、小織と行くとなったら何か違うのか?」

 そう言われてしまうと……確かにそうだ。清水先輩を誘える結果になっても今度は桜庭先輩が同じ状況になる。じゃあ、僕が誘うのが間違い……と考えたけど、そもそも二人は祭りに行く気なんかなかったのだろう。こういうのは余計な気遣いだ。

 その後、昼前には本田くんに連絡を入れて、桜庭先輩と少しだけ打ち合わせをすると、夏祭りへの準備は何とか整った。僕が緊張しても仕方ないけど、いったいどういう空気になるのだろうか。
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