産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

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3年生2学期

9月5日(火)曇り 三度目の走者決定会議

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 安定しない天気が続く石炭の日。
 本日は文芸部で文化祭の前に立ちはだかる体育祭についての話し合いが行われる。
 今年も部活対抗リレーには参加しなければならないので、5人の走者を選出することになった。
 3年生の僕と路ちゃんは無関係……と言いたいところだったけど、別に学年で参加制限はないので、出場する可能性も十分あった。

「とりあえずひまりと桐山、茉奈は確定で走るとして……1年生はどう? 我こそは走りに自信がある人は手を挙げて!」

 日葵さんの呼びかけに対して1年生の3人は申し訳なさそうな顔をしたり、露骨に目を逸らしたりした。
 文化部に来ている理由は運動が苦手だからという人も多いだろうから、当然の反応だろう。

「夏休み中の遊びで何となく察していたけど、みんな得意じゃないのか……どうしよう」

「そもそも今年は勝ちを狙う感じなのか? 文芸部っぽい走りにする方向性もあると思うが……」

「でも、やるからには勝ちたくない? 桐山もかっこいいところ見せたいでしょ?」

「それは……そうかも!」

 日葵さんに乗せられた桐山くんは姫宮さんの方を見るけど、姫宮さんは全く気付かずうわの空だった。
 そういえば去年の部活対抗リレーでは姫宮さんが唯一走っていない。
 姫宮さんが走る姿はあまり想像できないけど、あまり早そうにないイメージがある。
 そんなことを考えていると、ふと姫宮さんと目が合ってしまう。
 すると、姫宮さんはゆっくりと口を動かし始める。

(は・し・ら・な・い・の)

 読唇術ができるわけではないので合っているかわからないけど、何となくそう言ったように見えた。
 1年生が困っているなら助けてあげたい気持ちもあるけど……できれば走りたくない気持ちもある。

「……私、走るの得意ではないですけど、がんばってみます」

「おお! 結香ちゃんナイス! 勝とうとは言ったけど、楽しんで走れたら十分だから! あっ、何なら当日は何か衣装来て走っちゃう?」

「それ、俺だけ衣装ないパターンにならないか?」

「大丈夫。その時は桐山の分も用意するから。って、ことで衣装着て走りたい人ー!」

 その特典を石渡さんと三浦くんが魅力的に思うかと言われたら、たぶん目立つのであまり好まないと思う。
 このまま話が進まなければ、僕が出なければ……

「はい。出ます」

 そう言って真っ直ぐ手を挙げたのは姫宮さんだった。

「えっ。青蘭、走って大丈夫なの?」

「なんだその言い方は。姫宮さんがせっかく立候補してくれたのに」

「いやだって、青蘭は面白くない奴の次に走るのが嫌いなはずなのに……」

「そ、そこまでなの!? ひ、姫宮さん、無理はしなくても――」

「大丈夫。このチームなら絶対勝てるよ」

 急に遅れて来た主人公のようなセリフを言って、姫宮さんは満足そうな顔をする。

 そんなわけで今年の文芸部は2年生オールスターと結香さんの編成で、部活対抗リレーへ挑むことになった。
 勝ったところで得られるのは達成感くらいだけど、学校の思い出の一つにはなるはずなので、僕も当日は全力で応援していきたい。
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