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第2話:気になる気持ち(15)

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「私のこの気持ちは何なのか分からないんです。
だって、こんなこと教科書や参考書に一切書かれてなかったから
どう解いていいか分からないんです」

国語、数学、英語等々、
すべての科目において優秀な成績を修め、
西森には不得意科目など無いと思っていた。

が、優等生にも苦手な分野があったとは!

それは、いわゆる『恋愛』の分野だ。

確かにこの科目に関しては、
学校で教えてくれるモノでもないし、
試験に出るわけでもないので、
必ず勉強しないといけないモノでもない。

たぶん、西森もおれと接することがなければ
このまま知らなくてもよかった科目であろう。

でも、おれが余計なちょっかいを出してしまったため、
突然自分の心の中に現れた『ナゾの気持ち』に
どう対処していいのか困惑してしまった様子だ。

西森が困惑している『ナゾの気持ち』は、たぶんアレだと思うが・・・。

それを確かめるべく、西森の顔を再びジッと見つめてみた。

「!?」

ますます真っ赤になって顔をそらす西森。

その反応を見て、100%と言い切れる自信はまだ無いが、
70%ぐらいは断言できる。

西森!
おまえ、絶対おれのことを『好き』になりかけているだろ!

いや、もう『好き』になっているかもしれない。

完全なるおれの『うぬぼれ』かもしれないが、
でも、このチャンスに賭けてみる!

おれは西森の顔をソッとのぞきこみ、
「西森、その気持ち、本当に分からないの?」
と聞くと、西森は悔しそうな顔をして、コクリとうなずいた。

ここでおれが、『それは「恋愛」の感情だよ』と
西森に教えてあげてもいいが、
言葉で簡単に言っても納得しないだろう。

まして、プライドの高い西森だ。

絶対『違います!』と否定されて終わるだけのような気がする。

だから、ここは頭を使え。

優等生の西森が、この『恋愛』の授業科目に興味を持つように。

「西森、おれがこの前の夜に
『課外授業を受けてみないか?』って言ったの覚えてる?」

西森はうなずく。

「覚えています。
課外授業受けるほど成績悪くないのに、
急に先生、何を言い出すのかと思ったから・・・」

うん、おれもあの時、
何で急にあんなこと言い出したのか分からなくて、
超恥ずかしかったから覚えている。

「西森の中に現れた『気持ち』が何なのか、
おれは今ここで簡単に説明することができるけど・・・」

そう言うと西森は、ムッとした顔をして食いついてきた。

「先生には簡単に説明できるって、どういうことですか?
これは私自身の問題なのに、なんで先生が分かるんですか?」

自分が知らないことを、
おれが知っていることが西森にとっては気に入らないらしい。

やっぱり学年1位の優等生は、負けず嫌いな性格だな。

そんな西森をさらに挑発してみる。

「なんで分かるかって、それはおれの方が西森より経験豊富だからだよ。
試験で例えるとすれば、
この分野に関してはおれは100点近い点数を取れるけど、
西森は10点・・・よくても20点ぐらいじゃないのかなあ」

ものすごく自慢してみたけど、
西森との恋愛に関しては、
おれも10点取れるか取れないかのレベルだと思う。

でも、経験があるだけおれの方が上だろう。

そして案の定、おれの『10点発言』に西森は怒りをあらわした。

「10点って、そんな低い点数、ありえないでしょう!
なんです?
さっきから先生が偉そうに言っている『経験豊富な分野』って!」

おれは西森の目をじっと見つめて、
「だから、その分野を教える「課外授業」を受けてみないか?」
と言ってみた。

『課外授業』という言葉を再び使ってみたが、
やはりなんだか『超いかがわしい発言』だ。

西森にしてみたら、
何をされるのか分からない恐怖の授業に思えただろう。

なので、あわてて言葉をつけ足す。

「もちろん無理にとは言わないし、
実際授業を受けてみて、
おれの教え方が下手だと思ったら途中で辞めてもいい。
ただ・・・」

「ただ?」

「もし西森に受ける気があるとしたら、1つだけ条件があるんだ」

「条件?」

西森はその条件が何なのか、頭の中でいろいろ考えているようだ。

「条件って、教科書や参考書を買ったりすることですか?
それとも、試験があって、合格点を取らないといけないんですか?」

西森・・・、
おまえ、どれだけ真面目なんだよ!

そんな純粋な目で疑うことなくおれを見つめている様子を見ると、
これ以上ふり回すことが、かわいそうに思えてくるじゃないか。

でも、やっぱりこの勝負、負けたくない。

「いや、西森、別に参考書を買わなくてもいいし、試験も受けなくてもいい。
ただ、西森に『おれともっと一緒にいたい』という気持ちがあるなら・・・」

おれは勇気を出して、こう言った。

「おれを西森の(仮)の彼氏にしてくれないか?」
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