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第6話:二人きりの夜(その21)

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1時過ぎ・・・
もうそんな時間になっていたんだ。

いろんなことがありすぎて、時間の感覚がおかしくなっている。

おれは夏菜の頭をポンポンと軽く叩くと、
「今日は遭難したり雨に降られたりで、疲れただろ?
じゃ、そろそろ寝よっか。
明日の朝、涼介が車で迎えに来てくれるって言ってたし」
と言って立ち上がると、押し入れに向かった。

ふう・・・
なんとか自然な形で、夏菜から離れることができてよかった・・・。

あのままじゃ、理性を抑えきれなくなって、本当に行きつくところまで行ってしまいそうだったし。

ホッとしながら押し入れを開けると、旅館の人が言っていた通り布団が入っている。

「おれはこっちで布団で寝るから、夏菜はあっちの部屋でベッドで寝ていいよ」

そう言って、布団を引っ張り出そうとしたところ、夏菜がおれの浴衣の裾をチョイと引っ張ってきた。

「ん?どうした?」

振り返ると、夏菜は黙ったままうつむいている。

「ど、どうした?
何かおれ、やっちゃった?」

不安になって聞くと、夏菜は、
「その・・・こんな時、
恋人同士は・・・一緒に寝るんですか・・・?」
と言った。
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