SUN×SUN!

楠こずえ

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第1話:ひまわりと太陽(その6)

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今、ひまわりの目の前には、
大きな和風造りの門がそびえたっている。

家を取り囲む塀の周りをずっと歩いてきたが、
 一般的な大きさの家が
3、4軒ほど入りそうなぐらい広大な敷地だ。

太陽に無理やり引っ張られて、
この豪邸に連れてこられたひまわりだったが、
 門にかかげられていた表札の名前を見て「あれ?」と思った。

かかげられていた表札の名字は「雨夜」。
あまり見かけない名字ではあるが・・・

「雨夜・・・、
あれ?この名字どこかで見たことが・・・?」

だが、どこで見たのかは思い出せない。

そうこうしている間に門から太陽が中に入り、
「おい、こっちだ」
と呼ぶのであわててついて行く。

「ここ・・桐島くんのお家なんですか?
でも・・名字が違いますよね?」

「うちじゃないけど、ばーちゃんち。
 実家は高校から遠いから、ここで下宿させてもらってるんだ」

「へー・・にしても、大きなお家ですね・・」

門をくぐってからも、家の玄関にたどりつくまで
うっそうとした木々が通路の両端に森のように生えているので
そこを歩くと、まるで緑のトンネルをくぐっているようだった。

その長いトンネルを抜けると、
絵葉書の写真のような日本庭園が広がり
その真ん中に和風のお屋敷がドンと建っていた。

「ただいまー」

太陽が玄関を開けると、
「太陽様、お帰りなさいませ。
あら?お客様もご一緒ですか?」
と着物を着たお手伝いさんらしき人が現れた。

お手伝いさんは、ひまわりをチラッと見て
満面の笑みで、
「もしかして、太陽様の彼女さんですか?」
と聞いたため、ひまわりは一気にカーッと真っ赤になった。

「ちがいます!ちがいます!」と、
あわてて訂正しようとしたが、
「まさか。 趣味じゃねーよ」
と太陽がばっさり斬ったので、思わず拍子抜けした。

いや、まあ、確かに彼女じゃないので
否定してくれて全く構わないのだが、
「趣味じゃない」とまではっきり言われると、
若干心がチクッとするものである。

でも気が弱いので、結局のところ何も言えないのだが・・・

「それより、ばーちゃんいる?」

「ハイ、大奥様はいらっしゃいますよ」

「じゃあ、例の『助手』を見つけて来たって伝えてくれ」

「ハイ、かしこまりました」

2人の会話を聞いていたひまわりは首をかしげた。

『助手?助手って何だろう・・・?』

8畳ほどの和室に通されたひまわりは、
おそるおそる座布団の上に座った。

床の間には真っ白のユリが飾られ、
甘い香りを漂わせている。

お手伝いさんが、和菓子とお茶を持ってきて
「どうぞ」
とひまわりと太陽の前に置いた。

「あ、ありがとうございます!」

桜の形をしたピンク色のかわいい和菓子を見つめながら、
『食べていいのかな・・』
とひまわりが迷っていると、
「おい、ひまわり」
と太陽がいきなり呼び捨てで話しかけてきた。

「おまえ、タロット占いをやっていたけど、
どこで覚えたんだ?」

「あ・・・覚えたというか、家族のほとんどが占い師で、
 小さい頃からおばあちゃんにみっちり教えられたんです」

太陽は「なるほど」というような顔をしながらお茶を一口飲んだ。

その時だ。

「おや?タロット占いの名手『夏野弥生』さんの
 お孫さんじゃないか」

そう言いながら、1人の白髪のおばあさんが部屋に入ってきた。

年は60~70代ぐらいだろうか。
だが、年を感じさせないぐらいビシッときちんと着物を着こなし、
姿勢もまっすぐピンと伸びている。

おばあさんは、ひまわりにニッコリ微笑みながら、
「はじめまして、太陽の祖母です。
おまえさんのおばあさんのことは同じ業界ゆえ、よく知っているよ」
と挨拶をしたので、
ひまわりもあわてて立ち上がって
「は、はじめまして!夏野ひまわりです!」
と頭を下げた。

しかし・・・

『あれ?桐島くんのおばあさんに私初めて会うのに、
なんで私が「夏野弥生」の孫って分かったんだろう・・・?』

ひまわりはふと不思議に思ったが、
太陽がさっさと自分の話を進め出したので、
その疑問はそのまま放置されることとなった。

太陽は、ひまわりを指差しながら
「ばーちゃん!あいつ魔力があるだろ!?
これで魔力が弱いおれを支える助手も見つかったし、
約束どおり『魔法相談所』を開いてもいいだろ!?」
と言ったので、ひまわりはびっくりして目をパチクリさせた。

『え?「魔法相談所」って何?』
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