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手強い王子様。
しおりを挟む「おはようリコーリア。昨日は授業に遅れたでしょ?先生から叱られなかった?」
2日目の朝、キリーちゃんが前日の事を気にかけてくれてた。優しい子やのう。さすが私の可愛いもう一人のキャラクターや。
「大丈夫よ、キリーちゃん。王子様に粗相をしてしまって、そのお詫びをしていて遅れたと伝えたら、許していただけたわ。」
「え? 王子って…サクラ王子様?何があったの?」
リコーリアは何があったのかをキリーちゃんに伝えた。とは言っても、ぶつかってドーナツ口に押し込まれてってだけだから、そんなにすごいイベントではなかったんだけどね?
「え…落ちたドーナツを?」
「あー、うん。なんとなくそのまま食べちゃった。」
「そ、そう…。まあ、あの王子様のする事だからね…。」
ー ん? ー
今なんか、聞き捨てならないコトバを聞いたぞ?
「え?あの王子様がする事だからって…。何か知ってる事があるの?」
もちろん。
嫌な予感しかしない。
「あー、えっと。私も一応子爵家の娘だから、社交界には出るんだけどね。どうにもこうにも、あの王子様って、何だか噂が絶えないみたいで。」
「噂って?」
「まぁ、変わり者だって噂かな?」
何となくキリーちゃんが言葉を濁してる。
「キリーちゃん?」
「ん?」
「何を知ってるの?」
「そんなに知らないってば」
「知ってる事、教えてよー!」
「私は王子様に近付いた事ないもん。」
キリーちゃんは、嘘をつく時に髪を弄るクセがある。
これは、私が霧ちゃんを作った時に入れた設定だ。ありがとう女神様。性格まで正確に作ってくださって♡
「キリーちゃん?」
私がキリーちゃんの目の前でニッコリ笑うと、キリーちゃんはモゴモゴと口籠もりながら。
「とー…とりあえず…社交界では、色んな女の子達に自分から声を掛けていたかなぁ?…積極的に。」
「他には?」
「色んな飲み物を、混ぜて、知らんぷりして他人に飲ませてた、とか。」
「それで?」
「女性の髪飾りに、デザートについてたクリームまみれの花飾りをトッピングした、とか…」
「……ただの変な人じゃん…。」
なんじゃそりゃ。女神様の作ったキャラクターって、もう一体どうなってるんだ。あの人の萌えポイントが全くもって理解できないぜ。
「あ、で、でもほら、女性に話しかけに行ったってのは、将来のお嫁さんを吟味してると思えば。」
何とかキリーちゃんが、王子のフォローをしようとしているが。
「それを、ひと言。簡潔に言葉にしてみると?」
「プレイボーイ…かな。」
「だね。」
「あう。」
んふふふ、さすが私の作ったキャラクター。
キリーちゃんは可愛いのだ♡ 変に嘘をつくのが下手くそなのが、とっても可愛いのだよ。
って、そこは今置いといて。
むーん。そんな王子様をどう攻略していくのか? てか、そんなタイプの人が恋愛に興味があるのかな?そもそもの話として。
一応恋愛ゲームの攻略対象なんだから、可能ではあるだろうけども難しそうだ。
とか考えてたらね?
…………。
なんと。
あっという間にゲーム内での時間が過ぎてしまい、リコーリアは王子を攻略できず。
しかも、王子を探してフラフラしていたものだから、就職先に必要な事をまばらに習得していた為、リコーリアは落第決定。しかも平民のリコーリアではいくらリーズナブルな学費の学園とはいえ、もう一年、一年生から始めて卒業するにはお金が足りず。仲良しのキリーちゃんのお家でメイドとして雇われることになるという、キリーちゃんとの友情エンドとなりました。
ー スチル「これからもお友達よ、キリーお嬢様」ー
ー 残念ながら、今回、攻略対象とのエンドは成せませんでした。 攻略対象との恋愛エンド失敗により、これまでのパラメータがリセットされます。ー
なるほど、友情エンドだと告白イベントこなしてないから、パラメータをリセットしての再プレイが可能なのか。告白イベントをこなして、ようやく終われるという事らしい。…とか考えてたら、体がピンクの光に包まれて、あの真っ白な反省会会場へと引き戻された。
ーーーーーーーーーー
『あ、あらぁ…?』
「あれれぇ?おかしいぞぉ?どうした、どうした?女神様?」
と、生前大好きだったアニメのひとつの名台詞を交えながら、ニヨニヨと笑ってみせる私に。
そ、そうですね、おかしいですわね? と私とは一切目を合わせずにヲホホホホホホなんて笑ってる女神様。
どうやら女神様にとっても、今回の事は想定外らしい。もしかしたら。
「キャラクターに選択肢を出させる設定にした為に、キャラクター自体が自我みたいなもんでも持ったのかもしれないですね。」
これまでのキャラクター2人に比べたら、まるで動きが予測できない。今までは自分の思い通りに作ってきたキャラクターだから、ある程度の予測は出来ての選択が可能だったはず。しかし、心を持ってしまったキャラクターが生まれたとしたら、自分のキャラクターとは変わってしまう分、攻略は難しくなるのではないだろうか。
キャラクターにだって、ああしたい、こうしたいって選択肢があってもいいもんね。自由を与えたなら、攻略難易度が上がるのも否めなかろう。
そして。
あれから、4度。女神様は頑張ったのだが。どうにもこうにも、サクラ王子が捕まらず、キリーちゃんに雇われる友情エンドを繰り返すことになった。女神様はその度に精神と時の部屋もどきの真っ白いこの空間で
『何故っ⁈ 何故なのっ⁈』と、繰り返していた。攻略方法がまるでわからないらしい。このままでは、私があの世界でやたらめったら歩き回るだけで終わって、ただ疲れるだけの友情エンドからのループは抜け出せないだろう。
だから。
「…女神様、今度は私が選択してみましょうか?」
自分から、自分の意思で。
このゲームの最後の攻略対象を攻略してみようかと提案したのだった。
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