未の場合。

望月ひなり

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幼馴染の香くんの秘密は未男子でした。

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「わかばちゃん! ぼくが”せいじんのぎ”がおわったら、ぼくのおよめさんになって!そして こ......」




 幼稚園の遠足のときに、幼馴染のこうくんが、私にシロツメクサで作った指輪を差し出しながら言った言葉だ。貰ったシロツメクサの指輪は3日後には茶色くなっちゃったけど、今でも大事にフィギュアをいれるケースに保存して机の引き出しに入っている。

 夢で見る当時の香くん、激ぷりちーですねっ!真っ黒のくるくるとした天然パーマと真っ白の肌。子供の私をじっと見る目は琥珀色と黒が交じり合った不思議な色。そしてその大きめな目を縁取る長い睫毛。近所のおばちゃんたちは、そんな香くんを見るたびに「本物の天使も逃げ出すかわいい天使だよ。」と言っていた。当時の私は全く分からなかった。だって、香くんは香くんだからだ。でも、ある程度成長した私なら、おばちゃん達の言っている事が今ならわかる!あぁああああああ!!あのときの香くんが今いたら私は絶対ハグして頬をプニプニして、膝に乗せるんだ!!そんな事を考えながらベッドでゴロゴロバタバタしていたら、階下にいる母親に怒鳴られた。くすん。







 今日は高校の卒業式。可でも不可でもない私は、可でも付加でもない高校を卒業するのだけど、出来物の幼馴染・香くんも何故か一緒の高校で、一緒のクラスで、卒業生代表の挨拶をする。思えば、香くんとはずっとクラスが一緒だった。幼稚園はしょうがないと思う。もも・すみれ・れんげの3つの組しかなかったし。

でも、小学校にあがってから6年間、中学校の3年間、高校の3年間もクラスって一緒になるものなのかな?歴代の担任の先生も「お前らすごい繋がりだなー。縁ががっちり結びあってるんだなー。」なんて笑って言ってた。そんなものなのだろうか。大体、香くんはそういう先生や、からかってくる同級生たちにも声を荒げることもなく、ニコニコと私の隣に立っているだけ。思春期の漫画にある「ちげーよ!こんなドブス好きでもねーよ!」という思いはなかったのだろうか。それとも可でも不可でもない容姿の私だから否定しなくてもっていう事だろうか。どちらにしても、考えながらのネクタイは結べない。

3年間袖を通してきた制服もこれで最後だと思うと清々する。今時なんで結ぶタイプのネクタイなの?形作られていて、そこにゴム通しで襟につけるタイプがあるのに、なんでコレなんだろう。若しくはさ、女の子なんだからリボンにするとかさ。あ、これも手結びとかはやだ。どうやったってリボンが縦になるし、端が揃わないし、いつの間にか解けるし。でも、男子の手結び姿にはゴチになっているので、男子の制服はそのまま残してほしい。私は色んな意味の溜息を吐いて、何回も結びなおしてヨレたネクタイを持って朝ごはんが待っているだろう階下に行った。







 「わかばちゃんおはよう。」
そこには優雅に納豆をかき混ぜる香くんがいた。ブレザーは椅子に、ネクタイはYシャツの胸ポケットに入っている。出勤前のお父さんと同じ格好なのに香くんが同じことをすると全く別物に見えるのは脚が長いから?腕が長いから?顔がいいから? 答え。全部。可愛い男の子はカッコイイ男性に成長しました。子供のときは可愛いけど、大人になると残念になるっていう話、アレは香くんには通じないのか。

「香くんおはよう。早く行かなくていいの?代表のリハとか...」

真っ白になった納豆を私に渡しながら、ちょこっとお醤油を足してくれる。私の好きな納豆は、白くなるまで練り上げたものに付属のタレ+お醤油というちょっと手がこんだものなのに、香くんは嫌な顔せずに毎朝やってくれる。私は受け取った納豆を湯気がたっているご飯にかけた。

「わかばちゃんは、僕がリハを受けないと失敗すると思ってるの?今までの僕をずっと見せてきたのにそんなことを思うんだ。」

ふーん。という音が聞こえてきそうな香くんの不機嫌な声。そして、長い脚を組み替えての納豆ご飯を頬張る私を凝視する。

「わかばと違って香くんはスマートにやれるのにねぇ~。全く、卒業式の日くらい香くんより早く起きられないの?」

私にお味噌汁を、香くんには珈琲を入れてきたお母さんの小言が卒業式の日にも聞くことになるとは...。
何か言おうものなら、倍で返ってくるお母さんの小言は黙ってるのがベストな攻略方法だ。私は隣に座る香くんの何か言い足そうな視線を受け、お母さんの今までの私の恥ずかしい失敗談を上げ連ねている事をBGMに朝食を食べ進めた。










 洗面台から、顔をあげたら自分の背後に写る顔にびっくりしませんか?心臓が飛び出るほどに凍りつきますよね。まさしく私の心臓は凍りつきそうでした。

 全然気配を感じなかった香くんがそこにいた。顔からポタポタと雫が垂れてるけど、驚きが大きすぎて動かない。そんな私にふと、真面目な顔になった香くんがタオルを顔に優しく押し付けてきた。

「わかばちゃん、......卒業式が終わったら、大事な話があるから。フラフラとどこかに行かないでね。もし、どこかに行ったら僕、もう我慢出来ないかもしれない。わかった?」

顔についた水分を拭われて、タオルの視界から香くんが現れた。その目は、今朝夢にみた幼稚園の頃の香くんの目で...。私はあの時と同じように、うん。と返事をした。それからの香くんは何も変わらず、3年間2人で通いなれた高校までの道のりを歩いて行った。










 周りは涙涙ばかりだけど、私は香くんのキラキラした姿でお腹イッパイだし、かったるい式典が終わってホッとしたな~っていう気持ちで教室へ向かう列の中をダラダラと歩いていたら、凄い腕で掴れた。なんだっ?!って見ればそこには、きちんとした姿のお母さんがいて、ボストンバックを渡された。

「お、お母さん!!びっくりしたよ~。いきなり何?これからまだHRがあるんだけど。」

「HRが終わってからだとあんたに渡せないから。いい?香くんのいう事はきちんと聞きなさい。それと、卒業式が済んだ今あんたはもううちの子じゃないから。わかった?」

周りは体育館から出てきた生徒が渡り廊下を歩いていく。ガヤガヤと五月蝿い音に邪魔されながら聞いたお母さんの言葉は一体何を言っているんだ?

「いやいやいや、卒業した瞬間からうちの子じゃないって言われても納得できないよ。」

「だから、あんたが就職もせず、進学もしないことを何故母さんや父さんが文句を言わなかったか疑問に持たないの?」

 そういえば、何にも言われなかったけ...。

「え、それと関係あるの?そうと分かってたら、就職なり進学なりしてたよ~。バイトじゃ家に置いて貰えないの?」

お母さんが可哀想な子を見る目になってるんだけど。やっぱり福利厚生がないとダメとか...?

今の日本はお年寄りが多いから若いうちらが働かないと年金暮らしのお年寄りがツライんだっけ?お母さんの口が開くのを待っていたら、するりと腰に抱きつくものがきた。

「わかばはこの瞬間からもう僕の籍に入っているから、おばさんが「うちの子じゃない」って言ったんだ。帰る家もね、わかばの家じゃなくて僕とわかばの新居になるんだよ。」

後ろからおんぶお化けになっているこの声は、間違えようもない香くん....。籍?2人の新居?なんで?今まで恋人とか彼女・彼氏とかそういうのになったことがないのになんでいきなり?!

「香くん、本当にわかばでいいの?愚図だし、この通り頭の回転が遅いのよ?」

しみじみとしたお母さんの溜息。愚図でもないし、頭の回転は遅くないと思うんだけどなぁ~。お母さん酷いよ。

「何度このやりとりをしても僕の答えは変わりませんよ、おばさん。僕はわかばじゃないと駄目なんです。」

いまだにおんぶお化けの香くんが、頭を撫でる香くんとお母さんが無言で見つめあうこと暫し。お母さんが先に視線を外して、また溜息をついた。

「不甲斐無い娘ですが、どうか宜しくお願いします。」

そう言って私達に、というか香くんに深々とお辞儀をしたお母さんの目元が少し濡れているように見えた。

 私は去っていくお母さんの姿をおんぶお化けの香くんを背負ったまま見送った。

「さて、じゃあ僕達の新居に行こうか。」

何事もなく手を握られて、昇降口に連れて行かれそうになる。

「いやいやいやいやっ!HR始まってるよね?行かないと先生に怒られるよ。」

「.......。わかばってさ、昔から変わってないよね。おばさんと僕の話で疑問に持つこととかないの?」

じっとその不思議な目で見つめられるとなんか体がぞわぞわする。

「そりゃ思うけど、今はHRのがすぐに片付く問題でしょう?荷物も置きっぱなしだし。」

誰もいなくなった廊下で、手を繋ぎながらお互いに見つめあうコレはなんなんだろう!!!体がぞわぞわするよーっ!!

「.....わかった。すぐ片付けられる問題はもう解決しているよ。僕が先生にHRは出ませんって言ってきたから。荷物はあとで運ばせる。これで教室に戻る必要がない。これでいい?」

「え....あんまり良くないけど、わかった。1つ、聞いてもいい?」

香くんが首を傾げる。昔から変わらない「どうぞ」の癖。

「どうして教室に帰らせたくなかったの?」

教室には寄らせたくないっていう感じがしたんだけど、違ったのかな?ビクビクと香くんの反応を待つ。

「誰にもわかばのことを見て欲しく無いから。結婚するまで我慢だって思ってた。これ以上僕のわかばを他人の目に触れさせたくない。ずっとわかばを独り占めしたかったから。」

繋いでいた手を引っ張られて香くんの胸にぶつかった。

「わかばは気付いていないけど、周りは結構わかばの事を見てるよ。みんな、わかばの素直な性格に引き寄せられてくるんだ。光に集まってくる害虫だよ。その度に僕が駆除していたけど。」

駆除?私に友達が出来なかったのはもしかして...いやいやまさか....。そろそろと顔をあげて香くんの顔をみる。

「まさかとは思うけど、私に友達が出来なかったのは、私がノロマとかそういうのじゃなくて....。」

「わかばの友達は僕。わかばの一番は僕。わかばの事をおじさんおばさんより知っているのは僕だけでいいんだよ。」

眩しい笑顔で言い放った言葉は独占欲でした。あぁ、香くんの笑顔が眩しい。そのまま私は3年間の学び舎を後にしたのだった。













 車に押し込められて連れてこられたのは、香くんの家だった。純和風の佇まいの門に、うねうねと曲がった道が続き色とりどりの花や、緑が綺麗な垣根の向こうに見えてきたのは門と同じ和風の家だった。でも、車はそこには寄らず、どんどんと奥に進んでいく。そして見えたのは可愛い洋館だった。

 壁板の色はクリーム色で、ちょっとした階段があって玄関ポーチにはソファが置いてある。見覚えがあるこれは、私が中学生の頃に図工作の時間に作った家だ。アメリカみたいに玄関のところにソファを置いて涼しんでみたり、本を読んでみたいって香くんに言ったのを覚えている。車から降りて、家全体を見上げる。おっきいバルコニーや、小さい手摺りだけのバルコニーそして屋根から突き出た煙突。全部私が作った模型通りだった。




「わかばが作った模型通りに作ると耐震と免震が怖いから一部変えているけどね。どうぞ、僕の奥様。」

そう言って恭しく木製の丸い玄関ドアを開けた。
 中学生のときに作った模型は家のなかまではちゃんと作りきれないままその授業は終わっちゃったんだけど、案内されたリビングはお日様の光と風がよく通って気持ちいい。

座っているソファも程よく押し返してきて、何時間座っても疲れなさそうだ。キョロキョロと視線を動かせばちょっとした家具も私好みの猫脚だったりする。なんでも覚えてくれているんだなぁ~って思った。




 私にはココア、香くんは珈琲を持って私の隣に腰掛けてきた。




「僕はね未年を司る一族の息子なんだ。16歳になったら成人の儀をして妻帯することができる。この日をずっと待ってたんだ。わかば、僕の子を産んで。」

「ちょっ、まって!!唐突すぎるよっ」

隣に座ってきていきなり凄い爆弾発言からの、子供っていやいやいやいやいや!意味わかんないよ?

珈琲をテーブルに置いた香くんが近い...。

「唐突じゃない。幼稚園のときにシロツメクサで作った指輪を送りながら僕は、わかばちゃんに言ったよ。僕のお嫁さんになって、僕達の子未産んでって。今思えば僕も若いよね。あの時、わかばちゃんはうん!って言ってくれたじゃないか。」

途中で途切れてる言葉の続きは子未のことだったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!当時の私よ、なぜうんと言ったし...。ていうか、人間から産まれるの?だんだんと圧し掛かってくる香くんに戸惑いながら私は疑問を口にする。

「子未って人間のお腹からは生まれてこないんじゃ・・・・」

見つめ合うこと事数秒。

「僕は子未の姿で生まれてきた。代々家系がそうなんだ。決まってそうなるのは男の子で、長男次男は関係ないみたい。女の子は普通の姿で生まれてくるよ。」

「子未からいつ、人間になるの?」

「さあ?流石に僕も覚えてないな。...ねぇこの会話ってさ、わかばはちゃんと知れば産んでもいいよってことかな?」

距離を取るように体を反らしていたらいつの間にかソファに横になっていた。この格好危険!!

「普通のセックスと変わらない。わかばの子宮に僕の精子を注ぎ込んで、わかばの卵子と僕の精子が一つになったら出来るんだよ。もちろん、わかばは処女だから今日は痛いと思うけど。成人の儀を終えた男達は妻になった女の人に欲情するんだ。ほら」

そう言って、すりっと私の体に下半身を擦り付ける。なんか、熱くて硬いものがあたっているんですけどっ!

「ずっとわかばの事が好きで、色んな手を使って傍にいた。これからもずっと傍にいたい。僕とわかばだけの群れを作りたい。駄目かな?」

ソファに圧し掛かられながら言われるプロポーズ。これが私の運命であり香くんとの縁なら断れないじゃん。でも!

「ソファで初体験はやだ。」



















「っく!こうくぅん!いたい、いたいよっ」

セックスというのは非常に恥ずかしくて、気持ちよくて、痛いものですね。みっちりと私の中に入っている香くんの存在が、ドクンドクンとそこに心臓があるかのように感じる。

「いた、、、いよぉ、んっ」

香くんと繋がるまでは蕩ける様な気持ちよさだったのに、痛くて息もできない。こんなに痛いものなら前もってどの位痛いか教えてくれればいいのに、保健体育ではそんなこと言ってなかった!!

「ぅあっ、わかば力抜いて。」

「無理!いたい!呼吸するだけでいたい!!」

そんな私に香くんが先ほどまで蕩けさせてくれていた蕾へと指を伸ばした。優しく擦られると、どっかに行っちゃっていた気持ちいいものがソロソロと体ににじり寄ってくるのがわかる。くりゅくりゅ弄られながら、散々香くんに吸われたおっぱいにも吸い付いてくる。くにゅくにゅちゅぱちゅぱ。いつしか痛いという単語でイッパイだった私の体はまた気持ちいいを拾い出していた。

「んっ ふぅ あっ んっンッぅ こうくんっ」

「わかばちゃん、気持ちよくなってきた?」

おっぱいから口を離した香くんの唇からは唾液の糸が垂れていて、私のおっぱいと繋がっている。

「んっ きもちっいいよっ! もっときもちいいのちょうだい」

その言葉を聞くなり、香くんはずるりと引いてそろそろと戻ってくる。ぴりっぴりっとした痛みはあるけど、香くんにおっぱいを吸われるとつながっている所がキュンとして、じぃ~んと沁みこんで来る。
ゆっくりと動きながら香くんがちゅぱっと吸っていたおっぱいから顔をあげた。

「わかばはおっぱいを弄られるのが好きなんだな。弄っている最中、わかばのナカが凄いうねって射精だしそうになっちゃった。いつか、おっぱいだけでいけるように沢山しような。」

「やっあ、あっあっ」

グイグイと体を揺さぶられて気持ちいいのと痛いのとが良くわかんないけど、おっぱいだけは嫌だと思う。

「おっぱいだけじゃ不満か?」

「んっ んっ ふぁっん やだぁ、ちゃんンンンっとぉ、はぁ、ぅん、してぇ」

体がバラバラになりそうだった。香くんにきつくきつく抱きついて私は弾けた。

「そうだなっ 僕もわかばのナカに入りたいからっ....ック おっぱいだけはやめようかっ」

それから2,3回香くんはガツンガツンと腰をぶつけると動かなくなった。

香くんの重みと匂いが安心して眠気を誘ってくるけど、いつまでこのままなんだろう。

私と香くんはお互い繋がったままだった。




「...香くん?」

声をかけて軽く揺さぶってみると私のナカに入っていた香くんの硬いものも振動で揺れて私の腰がびくって震えた。

「...わかばは処女だったのに、もう僕のことを誘惑できるようになったの?」

動かなかった香くんが、全体に塗りこめるように丸を描くように腰を動かしてきた。

「我慢してわかばから抜こうとしたのに、わかばが悪いんだからね。」

「あっあっいいがかりっぃん、だぁンっ」

香くんが抜かないまま、セックス2回目に入った。

それからは体をひっくり返されたり、香くんの上に乗ったり、繋がっている所を見せられたり最初の気遣いなんてどこにもないセックスをした。私は流石に動けなくなって、香くんが抜いてくれたけど、抜いた瞬間ドロリと流れ出る感触に鳥肌がたった。

 幼馴染でずっと一緒にいた香くんのことを私は好きだったし、香くんも好きだったから嬉しいんだけど、私、香くんのお嫁さんになったんだよね?香くんのおばさんとおじさんに挨拶!!と気がついたんだけど、隣で横になってる香くんに聞いたら、成人した男子は別の家で群れ(家庭)を作るからもう帰れないんだって。それに、奥さんを両親と言えども他の男に合わせるのは我慢できないみたい。ほかにも、こんな体質の仲間がいることも聞けた。いつか会えたら楽しいんだろうなって私は思いながら眠りに落ちた。







 私達の間に子未がきて私がびっくりするのはまた別のお話。
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