kiss

望月ひなり

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イロンナトコロにキスシタイ

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「ヤーエー bacioしようっ」

「なんで?」

「ヤエの事スキだからっ」

 静かに本を読んでいたと思えば唐突になにを言い出すのやら。

「ああそう。 本、読み終わったの?」

「ああそう。ってヤエ冷たいよ~。本は読み終わったからbacioしようって言ってるのにー。」


 ソファでバタバタと嫌味なくらい長い脚をバタつかせる。

「だから、本を読み終わってなんでキスなのかわからないって聞いてるの。」

「それはね、bacioの本だからだよっ。この本ではねっ色んなバショで色んなトコロにbacioするんだ。あっ、色んなトコロっていうのはね、体のイロンナトコロ だよ フフッ。それにね、発音のレクチャーbacioっていいよねっ 僕ぜひヤエとシタイナっ」

なんだ、意味ありげに言ったり、笑うところじゃないのに笑ったり、嫌な予感がゾクゾクする。そんなときは断るが一番だ。


「私は遠慮する。アルは本を読み終わってるが、私はまだご覧の通り読書中だ。邪魔しないでくれ。」

「ヤエは発音レクチャーのbacioしたことある?」

人の話聞いてなかったのか?それともお得意の否定な言葉はスルーだよっ なのかっ?


「・・・ない。私が処女だったのはアル知ってるだろう。」

とりあえず、答えてしまうのが律儀な日本人の性なのだろうか・・・


「そうだねぇ~。ヤエのハジメテ僕がフフッ 散らしちゃったんだよね~フフッ。なら、もう一つヤエのハジメテ欲しいな。ヤエのイタリア語とってもいいけど、ラリルレロ苦手だよね。舌っ足らずで可愛いけど、もっとうまくなりたくないの?」

「・・・それなら口頭で普通にっ!普通に!!教えてくれればいいだろ。」

普通にをこれだけ強調したらぼんくらでも分かるだろう。

「フツーに教えてもヤエ未だに出来てないじゃない。だから、シよっ!ほらほらっ ラグに座ってないで僕の膝においで~。」

無駄に端正な顔がキラキラな笑顔で振りまいて長い脚のがっちりとした太ももをポンポンと叩いている。駄目だった。全く分かってくれていない。

とりあえず、無視して、本を読んでいるとニコニコと端正な顔が本と私の間に割り込んできた。

なんだろう・・・。普段の生活ではいい加減なのに、どうしてスキンシップになるとこうも突き進むのか、わからない。

 唯一つだけ分かるのが、ノリノリに突き進んでいる彼を止める術を私は知らない。

栞を挟み、不承不承彼の膝によじ登る。


「ヤエはいつまでたっても初々しいね。浅からぬ仲なのにねっ!ずぶずぶでずくずくだよねっ!

さあ、ヤエのカワイイ舌を出して」


彼の言うとおりににしないとずっとこのままだ。

ええいままよっと舌をんべと出す。


「レクチャーだからねっ ちゃんと僕の動きを感じてね。もちろん舌使いもだよ。それじゃ イタダキマス」


ん?いただきます?と突っ込みを言う前に彼の肉厚な舌に自分の舌を掬い取られ、口内に入ってきた。

舌先で私の舌を丸くしそのまま口蓋に舌をつけ上前歯あたりをくすぐる。

 これはレクチャーなんだから、舌先に意識を集中しないとって思うのに、彼のキスが気持ちよくてうっとりとしてしまう。

ぽーっとしていたら、彼の舌先で舌前歯の付け根をトントンとされた。

そんなところが気持ち良いなんて知らなかったし、知りたくなかった。

だって彼以外とキスが出来なくなる。


舌を絡めたまま軽く吸われ、するりと彼の舌が離れていく。

最後にオシマイの合図の下唇をちゅっと吸われた。

物足りない、もっと続けて欲しいと離れていく彼の顔をぼーっと見つめていた。

「ヤエ、舌の動きわかった?なんか気持ちよさそうな顔してるケド、ご褒美はマダだよ。ヤエから、僕にさっきと同じ動きをしてね。それで上手に出来たら、ヤエの欲しいご褒美、出来なかったら、もう一回僕からのレクチャーね。」


ぽーっとした頭で分かったのは、あの気持ちいいキスがもう一回出来る。ということだけ。

私は彼の唇にキスをした。

肉厚な彼の舌の絡みつきたいのに、何度やってもうまくできず、彼に合図をされてしまった。


「ちっちゃいヤエの舌が一生懸命ボクのに絡んでくるのとってもクるんだけど、全然巻けてないね。巻けるまでずっとシていたいけど、最初だからねっ特別にミルクキャンディーあげるよ。」


レクチャーはベッドでも続き、漸く巻けたと思ったら随分極太で凶悪なキャンディーを下の口に挿れられ、解かされミルクを体の奥のコップに注がれた。

忘れちゃイケナイからって毎日レクチャーされ随分上達した頃私の妊娠が発覚。


「アルトゥーロッ どうしてくれるんだっ 私はいずれ日本に帰るんだぞっ」

「帰さないために毎日注いでたんだよ~。気がつかなかった?」


妊娠検査薬のスティックを私の手から取ると、嬉しそうに写真を撮っている。

「それとも、気持ちよすぎて気がつかなかったのかな フフッ。ねえ ヤエ、ボクは君が思っているほどイイヒトではないんだよ。ずっと離さないからね。」

彼は舌なめずりをするように私を見つめていた。
その後彼は病院までついてきて、熱心に話をきき次の予約まで私の代わりにしてくれた。
てか、私の出る幕がなかった。
そんなある日のこと。
「ヤエ~。ボクね貴族の跡取りなんだっ。それでねこれから親がくるよっ!レクチャーのお陰でイロイロ完璧でヨカッタネっ」

「はっ?聞いてないぞっ てか、アルまさか最初から・・・」

「フフッ」


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