ノートの創造主

ハルキ4×3

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ノートの創造主

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ノートの創造主

僕は物語の主人公を作った、この世にある数多の作品の中で一番のヒーローと僕は呼んだ。
彼は様々な登場人物と交流し、悪を倒す旅に出る、頭の中で作ったストーリーを紙に
思い起こす、その時間は僕にとってすごくやりがいがあり楽しい時間だった。
自分の妄想を完璧に形にできるというの長かったとは感じてない。
小学校の頃から先に言ってた数多ある作品を自分の物語で描いたりして、
クラスメイトとワイワイとしてた時はもう懐かしく思っていた。
中学から高校の時は、そんな理解者は周りにいなくなった、その時はもう“オタク”がださいという
風潮が濃い時期だったし、だから僕はこっそり創作活動をして心を満たしていた。
勉強どころか運動もできない自分にはそれが取り柄だっただろうし、前者を人並みに
出来る努力は無駄だと考えていた、好きでないことを頑張るというのはとてつもない
苦痛であったし苦痛は感じたくなかった。
スーパーでも売ってる安いキャンパスノートに鉛筆で下書きをして100円にも行かない
油性ボールペンで描き入れて、一本ずつ集めた安い色鉛筆で色を入れていった。
いい作品は画材を選ばないと思っている、わざわざ高い画用紙買って、水彩絵の具を買って
創作を作る事はバカがやる事だし、それに僕は古臭い絵画を描きたいわけじゃないんだ、
“僕の作品”を作りたいんだという信念がある。
「あんたさ、もういい加減自分の進路を進路を考えなさい」
母親がくしゃっとした皺を眉間にして僕に言った、隣の父親も。
「今の大学入試は筆記試験はないとこもあるしお前の頭でも入れるだろうし、それが嫌なら
知り合いの工場へ行きなさい」
僕はその選択に対して嫌な気持ちになった、というのも僕は将来漫画家になる事を
目指していたし、さっき言ってた通り苦痛になることはしたくなかった、だから
今まで心の支えだった創作を人生にしたかった、例えお金にならなくて。
しかし両親は
「以前から漫画を描いていたけど、あんたの能力ではなれないわよ!」と言ってきた
確かに人気作品たちと比べると、僕は下手くそかもしれないけど、やらないとわからないだろう
そう言っても親は理解しなかった。大学へ行き“オタク”とバカにされて、嫌いな勉強をするか。
工場へ行き。社会の歯車として、嫌な気持ちで仕事をするかが僕の選択肢だった。
結局
「わかった、お父さんの知り合いの工場へ働きに行くよ」と言ってしまった。
母親の「働いたお金で、創作を続けていけばいいし、発表の場はいっぱいある」
という言葉に、頑固にまっすぐ立った草がポッキリ曲がるように意志は折れて、
素直に従った。
三年間通った高校の卒業は決して喜びもなければ嫌な思いもなかった。
友達もおらず、恋もせず、勉学は赤点ばかりで追試を受けて辛かったし、いい思い出は
何もなかったと思う。
「大丈夫、僕は心の支えがあるから、それで上手くいけば友人だって恋人だって
出来るはずだ」
正直嫌だけど仕事をしながら、そしてそれから得られるお金で生活をして、出版社や
イベントへ行って認められればいい、それが上手く行った後のそれ一本でやればいい。
父親と共にこれから行く、工場でその知り合いの人(この会社の社長)と話をした。
自分が創作をしているという話はしなかったし、むしろこの工場は何を作りそれがどう
役立っているかの話を聞いていた。ある程度話を終えて明日から研修が一ヶ月くらいあった。
ゴワゴワの作業服で建築用の部品を機械で作る仕事を与えられたが、上手くやれず
不良を出した、周りの人は丁寧に教えてくれたし、やり方はわかっていたと思う、
でも出来上がるものは使い物にならない粗品であった。少し大目に見てくれてた現場の人たちは
だんだん自分に当たりが強くなり、気がつけば何かあれば威圧的に詰め寄ったり、
舌打ちして睨みつけるようになった、休憩時間は誰も口も目も合わせなくなり
僕は孤独を深めた。
自分は結果を出せなくても僕なりに頑張っていたのに周りから。
「やる気を感じられない」「嫌々やってる」と散々な言われ方だった。
そんな時でも家へ帰れば僕はひたすら部屋に篭り、創作をした。
昔から使ってた安いキャンパスノートに、ボールペンと色鉛筆でキャラクターを活躍させる話を
作った。
それだけが僕のどん底の気持ちを救っていたし、ただただ創作者として活躍することを
夢見ていた、それが人生の一つの目標だった。
それに今から仕事を辞めたいというと両親は反対するし、仕事の悩みを相談しても大した励ましはしないから、今は我慢するしかなかった。
そんな日々を送って二ヶ月はたった、挨拶は基本だからという両親の
言葉通り挨拶を現場の人にしたが、誰もが僕を無視した。
嫌な気持ちを持って仕事へ取り掛かろうとしたが、先輩が声をかけてきた。
「××‼︎、昨日なんで残業しなかった⁉︎」
「え?、そんなの聞いてませんでしたよ」とそしたら先輩はすごい剣幕で怒り出した。
「ふざけるなよ‼︎昨日ハイっていてたしもうすぐ納期で間に合わないからと説明した
だろうが‼︎」
その時にハッと思い出した、作業中に話しかけられたので思わず
ハイって答えてしまった事を、そんな軽返事で先輩もやってくれると思い込んだが
案の定僕は何も頭に入っていない状態で定時帰りをした。
「お前が帰ったせいでこっちは…もう……」それ以上の言葉はでなくなり
無言で先輩は工場を出た。
後に社長がやってきて、疲れたような顔をしため息をついて僕にこういった。
「××くん…今までどうにか大目に見れたけど…申し訳ないがもううちに来ないでほしい
退職金はまた振り込んでおくよ…」
その言葉を聞いてから、頭は真っ白になりはっきり意識が戻ったのは自分のベットの上
だった。
空白になっていた心は徐々に悲しみと怒りに満たされ、声にすらならない大声をあげて
部屋中で大暴れをした、床や壁をバンバン叩いてカーテンを破り、駆けつけてきた両親に
取り押さえれて落ち着きを取り戻した。
僕は部屋の電気を越して布団くるまっていた、泣く気力もない、あるのは仕事に
ついてしまった後悔と、自分なりに一生懸命頑張ったのにそれを打ち壊された事への
悔しさだった、それらが頭の中でいっぱいだったのでその夜は眠れず朝起きた時。
母親がこんなことを僕に言った。
「今回はダメだったけど、これに負けずまた再就職すればいい」
親も親で自分のことが心配で言ったのだろうが、その言葉に僕は怒った。
「もう俺は就職は一生しない‼︎、どうせどこ行っても一緒だよ‼︎」と怒鳴りそのまま
部屋に閉じこもった。
それから僕はただ自室でこもり、何もせずただ時間が過ぎる日々を送り続けた、
トイレやお風呂以外はそこに居続け外へも出ることはなかった、側から見たら
自堕落な人間になったが、会社にいる人間性のかけらもないろくでなし共にいびられるより
マシだと思った。
気がつけばもう両親は何も言わなくなり、自分はもはや人とコミュニケーションをとることも
やめてしまった。
毎日毎日、昼近くで起きてゲームをして漫画を読むという日課を送っていたが、
創作を再び始めようと思い立ったのは漫画読んでいた時だった、
仕事での大失敗以降は創作にすら気力をなくしてたが、小さい頃を思い出して自分は
創作を人生にするのではという高潔な目標があったはずでは、なのにそれをやらないのは
自分の否定と考えた。
「このノートとペンで一つ作品を作るぞ‼︎」自分でもはっきりわかるように目の輝きが
戻ってきたとはっきり感じ、机にしまっていたノートや画材を取り出して、頭の中の
キャラクターやストーリーを書き起こした、小さい頃に時間を忘れ、
側から見れば妄想を描く痛い人のようだが、僕は創作者、作家として作品を作ってるんだと
熱い心を持った。
そしてその情熱でキャンパスノート一冊丸々書き上げて、色も一つ一つ色鉛筆で色を入れた。
今までより最高の出来と僕は思った。
この作品をすぐにでも全ての人に見てほしい、だからすぐにケータイを手に取り。
出版社へ電話約束をした、最初は緊張はしたが相手は丁寧に予定日を言ってくれた。
この電話だけで、すぐに上手く行った感じに浸った。
その予定日に電車に揺られ作品の描かれたノートを鞄に入れて出版社へ向かった。
体験者の話で聞いたけど、死刑を言い渡されそうな被告人のように緊張したと語ったが
僕は違った、一億の現金をこれから受け取りにいく人のように、ウキウキした気持ちで
向かっているからだ。それはたとえはるかに大きな大手出版のビルの前にたっても
崩れなかった。
「これから僕は漫画家…いや創作者として世に出るんだ」
希望に目を輝かせてやってきた編集者に作品を見せてみた。
「オオ‼︎これは素晴らしい‼︎君は天才だ‼︎すぐに本にさせてくれ‼︎」という
イメージはすぐに砕かれた。
「冷やかしでうちへきたの?」
すごいしわを眉間に寄せて僕に行ってきた。
キャンパスノートを見てそして最初の一ページを見てそう返してきた。
そのご何も言わず編集者は帰っていった。
「きっとここではダメだったんだ、次は⚪︎社へ…」と顔から汗を出してまた次の日も
持ち込みをした。
「バカにしてんのか?」
「はっきり言って迷惑です」どこへ行ってもまともに見てもらえず門前払いをされた
普通ならここでなぜダメかを考えて、すぐにわかったぞというのが普通の人だが。
かれはなぜなのか分からなかった、というより
「編集者はお金のことしか考えていなかったから、まともに作品を見ないんだ」
という解釈を導き出した。
ならばどうすれば全ての人に見てもらえるのかと悩み出した、一回ケータイで持ち込み
以外の方法を検索した結果ネットでの投稿を見つけ出した。
ネットでのイラストや漫画などの投稿で世間から認められてデビューはないとは言えない、
しかし彼がやっていた出版社等の持ち込みと比べると、同じかそれ以上に難関である。
だから多くは趣味としてネットに作品をあげてるだけという人である。
しかし××はその可能性をかけてネットにあげることにした、これなら
デビューできなくても、理解ある人たちに支持されることもある、彼は決して
お金が欲しいのでなく、創作で人々を楽しませたいし楽しみたいのであった。
投稿サイトに登録して早速作った作品をカメラで取り投稿をした。
次は一人の人間でつまらないという判断はなく、たとえつまらないと言われても他が
面白いと判断してくれるから、
「今度こそ正当な評価をされるぞ」その正当な評価というのがすぐに彼の元へきた。
たとえ上手い絵を描いても、反応がないのはリアルでも同じ、彼はすぐに来たのだった
「すぐに読むのをやめました、見てて吐きそうです」
「絵が小学生以下の最低レベルで話もめちゃくちゃ」
「投稿やめろ、二度と作品作るな」
しかなく、彼の言っていた正当な評価のイメージは思ってたのと違っていた。
「なんで⁉︎、なんで⁉︎、どうして⁉︎」コメント欄はそのような言葉ばかりで
少しでも褒めるような言葉はなく、彼は心をかき乱されて半狂乱になった。どこへ
作品を持っていこうとも誰も認めない、来るのは罵倒の言葉しかない。
…だんだん目の前に映る現実には誰も僕の創作も、自分も肯定することは
ないとわかった、そんな現実の中で生きていられたのは、僕の創作活動が
あったからだった、創作は僕の支え、だから自分は頭の中で生み出したことを
ノートに描くことが生きる意味。
もう現実の人間たちのために創作するのではなく、自分が自分でいるために描くんだ…
もう5年か10年近く経っただろうがそんなことにどうでもいい。
現実にあるものがどうでもいいから。
僕の創作をただ描き続けるんだ。僕は創作での神様だから、そこが僕の世界だから…。
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