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Ⅱ
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───数ヶ月後…。
【ウィレミル森林地帯】
其処は『誰も立ち寄らない』と、近隣の町村から噂されている場所。そして『立ち入った者は悪霊によって命を奪われる』と云われ、今も尚恐れられている。
そんな物騒な森を、スレイは片手に黒い布袋を背負いながら事も無しに黙々と馴れた足取りで歩いていた。
鬱蒼と生い茂り、まだ陽が高いにも関わらず、此処は暗い。さらには常に湿っぽく、この場で死んでいった生き物達の腐臭も漂う。
この地では常に静寂が支配し、不気味としか感じられないこの場所には、彼が草木を踏む音だけが小さく響き渡っている──。
彼が目指している場所は、唯一付き合いのある老人が住む小さな家。
その老人は、ギルドでは扱われなかった、もしくは果たせなかった依頼や表沙汰にしたくない依頼を仕入れてはスレイに投げ渡す。
そして依頼を受け持つ彼も必要な武器調達をここで行なっている。
老人曰わく、こんな辺鄙な場所に居を構えているのは『俗世から離れたかった』という理由らしい。
──暫くして、遠くから場に相応しくない暖色の灯りが見えてきた。
さらに進めば、古びたロッジが姿を現す。
吊るされたランタンの灯りよって浮かぶ朽ち欠けた木板に【アロンダーク】と書かれた看板。繋いでいる錆びた鎖が、微風に揺られて軋んだ音を等間隔で鳴らし不気味さを余計に醸し出している。
スレイは店に到着すると、躊躇せず玄関の扉を開けて中へ足を踏み入れた。
「…おぅ、オメェか」
壁側に備えてある小さなカウンターにいた老人が軽く振り向き、スレイに一言済ますと読書に耽る。
「終わったぜ」
これがスレイと老人──【アロンダーク】の店主こと『レクター』との挨拶。この二人の間では、大体それで済む事がほとんどだ。
お互いが日常会話を大事としない性分らしく、用がある時しか話さない。そのため雑談など、稀にするくらいだ。
「依頼完了の証拠品だ」
スレイはレクターの元まで歩き、何も置かれていないカウンターの上に布袋を放り投げ、軽い物同士がぶつかる乾いた音が鳴り響いた。
レクターは一瞥し、片手で袋を手に取ると結び紐を解いて中を覗き見る。
鋭く尖った牙と血のように赤黒い小石達が積まれている中に、一つだけ《血痕によって穢された腕輪》が覗かせていた。
「……予想通り、だったか」
「ああ。碌に調べもせず行くからこうなる」
受けた依頼は『行方不明者の救出』であり、冒険者である依頼者の仲間が遺跡を探索中に突如行方不明になってしまったのである。
しかし後に知ったことで、そこはランドワームが生息する危険地帯だったのだ。
ランドワームは普段地中に生息し、地表や地中の振動を感知して獲物に襲いかかるミミズ状の怪物。
全長およそ五メートル。大の人間も一飲みしてしまう程の大顎を誇っている。
その神出鬼没な襲撃方法に、ベテランの狩人や冒険者でも奇襲を余儀無くされる場合は少なくない。
ましてや行方不明者はまだまだ初心者だったらしい。つまりは──不幸にも死神に目を付けられてしまったのだ。
「当然救出なんざ無理だった。俺が来た頃には既に怪物の腹の中で、消化途中だったからな」
「そうか。まぁ、依頼主も『相棒はもう帰ってこないだろうな』って最初から諦めていた感じはしてたしな。さして問題はねェだろ。ご苦労だったな、報酬だ」
そう言ってレクターは引き出しから金貨の詰まった小袋を取り出してカウンターの上へ放り投げた。
「………アイツは?」
「下だ」
そう言って背後の扉を親指で差す。
報酬を受け取ったスレイはレクターの傍を通り抜け、店奥にある地下室への扉を開ける。
扉の向こうは闇が広がっていた──。
スレイは扉の裏側に備え付けられていた小型ランタンを手にして灯りを点けると、階段の向こうへ歩を進める──。
程なくして、木製の扉が見えた。
スレイは扉の前に立つと灯りを消し、扉を押し開ける。
すると──
「えっと………この金具をココと、ココの部品にぃ……あれ? チガウ? それとも、コレかな……んん~??」
部屋は古びたベッドと傷んだテーブル。床や木棚にはナイフや使用済みの薬莢、分解された武器の部品等が散乱している。
テーブル前に、この殺風景な場所には似つかわしくない可愛らしくも無邪気な声と黒く長いスカートのゴシックワンピースを身に付けた少女。背中まで真っ直ぐに伸びている金色の髪が洋服に映え、灯りの乏しい場所でその存在を主張していた。
少女は一人、机の周りに散らばっている部品達をあれやこれやと手にしながら何度も左右に首を捻っていた。
彼女はスレイの来訪に気付いていないらしく、彼に背を向けたまま独り言を呟きながら何かを組み立てているようだ。
「………アン」
「ッ!! ビックリしたぁ…いつ帰って来たの?」
「今さっきだ。ここで何をしている」
「エッ!? えーっと…」
スレイは鋭い眼差しでアンを見つめると、彼女は目を逸らして必死に言葉を探しているようだ。
「…ここは俺の部屋であり工房であること。そして『中の物は弄るな』と、言っただろう」
「ま、待ってッ! 勝手に入ったのはゴメンなさい! でもコレはレクターからワタシにって渡してくれた物なの」
「何?」
「ワタシも『何かスレイの役に立ちたい!』って、言ってみたら突然こんなモノ渡されて『組み立ててみろ』だって! ナニコレって聞いても教えてくれなくて困ってる!」
と、スレイは文句を言うアンをどかすとテーブルに散らばっていた部品を目にした。
湾曲している木のパーツの先には切れた弦が垂れており、繋ぎ目と思わしき部分の金具は見事に錆びている。本体や他の部品も朽ちている箇所が多い。
スレイはため息を吐いた。
「………クロスボウか」
「クロスボウ?」
「簡易式の矢発射装置だ。初心者でもまだ扱い易い部類の武器で、非力な奴でも当りどころが良ければ十分獲物を仕留める事が出来る……だが、コイツはあちこちがガタついてるからな。仮に出来上がったとしても使いもんにならん」
「エェーッ!? むぅぅ、レクターのイジワル!!」
「しかしどんな物でも、傷み具合によっては補強すればちゃんと使えるようにはなる」
「ホント!?」
アンが目を輝かせて詰め寄るが、スレイは特に反応せず彼女を脇にどかす。
「本当だ。頑張れよ」
「えー」
「組み立てるのはオマエだ。俺は手伝わん」
「エエーーー!! じ、じゃあせめてどうやって作るか教えて!」
「断る」
「そんなのムリぃぃぃ!! 何もワカンナイのに出来っこないよーッ!!」
アンはとうとう手足をばたつかせ、その場で地団駄を踏みながら喚き出した。
見た目こそ成人に等しいが、その精神は外見に見合わず、とても幼い。
──その理由も、彼女はこれまで外の世界をろくに知る事無く、奴隷と同様の扱いでしか生かされていなかったからだ。
陽の当たらない納屋、暗く狭い檻の中。
不条理で理不尽な一方的暴行、虐待の数々。
彼女は、誰からも愛されなかった。
そんな彼女がスレイと出会い、自らの足でようやく歩み出したのは、ほんの一年前の事。
彼女は檻から出たはいいもののそれ以上は動かず、立ち尽くして『この後どうすればいいか分からない』と、涙目でスレイに訴えた。
当初そんな事情も知らない彼は呆れて『ついて来るな』と突っぱねていたが、その後の帰路にて何処までも後ろを追いかけて来る彼女をあしらって撒こうとするも、どうした事か追いつかれてしまい、挙句にはこの【アロンダーク】にまでついて来てしまったのだ。
そこでとうとう根負けしたスレイはレクターに経緯を話し、彼女の身の上話しも聞き、事情を把握したレクターは暫くの間家に置いていい事を許可した。当然、彼女がレクターの“手伝い”をするという条件付きではあるが。
そしていつの日だったか──スレイは、彼女に『アン』という名前を与えた。
「スレイこの後は!?」
アンがお構い無しに再び彼の側へ詰め寄って来た。
「特に無い。が、オマエのワガママに付き合う道理も無い」
と、相変わらず素っ気無く投げやりに返す。アンを再び横にどけてベッドまで向かい、身に付けていた装備一式と道具を無造作に床へ置き並べる。
「ケチぃぃぃッ!! 少しはスレイも何か教えてよー!」
「断る。俺から教えるものなんざ特に無い」
「むーーー!」
「……俺が他に教えられるのはバケモノの“殺し方”だけだ。まさかそんなモノが知りたいのか?」
「知りたい!」
即答だ。そんな彼女にスレイは眉間を皺寄せた。
「どうしてだ?」
「スレイと一緒にいたいから」
「ナニ?」
何とも予想外の返答に今度は面食らってしまった。
「アタシはスレイと一緒にいたいの! でもアタシは“戦い方”なんか知らないし、一緒に居ても手入れだけで役に立たない。だから──」
「もういいウルサイ。喋るな」
強引に言葉を遮り、スレイはベッドに横たわるとすぐに瞼を閉じた。
そんな彼の態度にアンは歯を食いしばって犬のように唸るが、これまで反抗して勝った試しが無いことに渋々ながらも強引に怒りを抑え、鼻息荒くして背を向けると再び机に戻って組み立て始める。
──片方だけ薄目を開けてアンの様子を覗き見た。
背中越しでも彼女が頭を捻って唸りながらあれでもない、これでもないと、めげずに挑戦し続けていた。
「…………………………おい」
「…なに?」
「一眠りしたらその後近くの町へ行く。そこで物資の調達と……帰りに気が向いたら、武器の手入れくらいの話しはしてやる」
「!! 分かった! ゼーッタイに教えてヨッ!!」
「気が向いたらって言っただろうが」
「へへへ」
「…ふん」
どうやら少しは上機嫌になったようだ。
保護者になったつもりは毛頭無いが、いつまでも喚かれるよりはマシだ。とスレイは込み上げる苛立ちを強引に抑えながら再び瞼を閉じた。
【ウィレミル森林地帯】
其処は『誰も立ち寄らない』と、近隣の町村から噂されている場所。そして『立ち入った者は悪霊によって命を奪われる』と云われ、今も尚恐れられている。
そんな物騒な森を、スレイは片手に黒い布袋を背負いながら事も無しに黙々と馴れた足取りで歩いていた。
鬱蒼と生い茂り、まだ陽が高いにも関わらず、此処は暗い。さらには常に湿っぽく、この場で死んでいった生き物達の腐臭も漂う。
この地では常に静寂が支配し、不気味としか感じられないこの場所には、彼が草木を踏む音だけが小さく響き渡っている──。
彼が目指している場所は、唯一付き合いのある老人が住む小さな家。
その老人は、ギルドでは扱われなかった、もしくは果たせなかった依頼や表沙汰にしたくない依頼を仕入れてはスレイに投げ渡す。
そして依頼を受け持つ彼も必要な武器調達をここで行なっている。
老人曰わく、こんな辺鄙な場所に居を構えているのは『俗世から離れたかった』という理由らしい。
──暫くして、遠くから場に相応しくない暖色の灯りが見えてきた。
さらに進めば、古びたロッジが姿を現す。
吊るされたランタンの灯りよって浮かぶ朽ち欠けた木板に【アロンダーク】と書かれた看板。繋いでいる錆びた鎖が、微風に揺られて軋んだ音を等間隔で鳴らし不気味さを余計に醸し出している。
スレイは店に到着すると、躊躇せず玄関の扉を開けて中へ足を踏み入れた。
「…おぅ、オメェか」
壁側に備えてある小さなカウンターにいた老人が軽く振り向き、スレイに一言済ますと読書に耽る。
「終わったぜ」
これがスレイと老人──【アロンダーク】の店主こと『レクター』との挨拶。この二人の間では、大体それで済む事がほとんどだ。
お互いが日常会話を大事としない性分らしく、用がある時しか話さない。そのため雑談など、稀にするくらいだ。
「依頼完了の証拠品だ」
スレイはレクターの元まで歩き、何も置かれていないカウンターの上に布袋を放り投げ、軽い物同士がぶつかる乾いた音が鳴り響いた。
レクターは一瞥し、片手で袋を手に取ると結び紐を解いて中を覗き見る。
鋭く尖った牙と血のように赤黒い小石達が積まれている中に、一つだけ《血痕によって穢された腕輪》が覗かせていた。
「……予想通り、だったか」
「ああ。碌に調べもせず行くからこうなる」
受けた依頼は『行方不明者の救出』であり、冒険者である依頼者の仲間が遺跡を探索中に突如行方不明になってしまったのである。
しかし後に知ったことで、そこはランドワームが生息する危険地帯だったのだ。
ランドワームは普段地中に生息し、地表や地中の振動を感知して獲物に襲いかかるミミズ状の怪物。
全長およそ五メートル。大の人間も一飲みしてしまう程の大顎を誇っている。
その神出鬼没な襲撃方法に、ベテランの狩人や冒険者でも奇襲を余儀無くされる場合は少なくない。
ましてや行方不明者はまだまだ初心者だったらしい。つまりは──不幸にも死神に目を付けられてしまったのだ。
「当然救出なんざ無理だった。俺が来た頃には既に怪物の腹の中で、消化途中だったからな」
「そうか。まぁ、依頼主も『相棒はもう帰ってこないだろうな』って最初から諦めていた感じはしてたしな。さして問題はねェだろ。ご苦労だったな、報酬だ」
そう言ってレクターは引き出しから金貨の詰まった小袋を取り出してカウンターの上へ放り投げた。
「………アイツは?」
「下だ」
そう言って背後の扉を親指で差す。
報酬を受け取ったスレイはレクターの傍を通り抜け、店奥にある地下室への扉を開ける。
扉の向こうは闇が広がっていた──。
スレイは扉の裏側に備え付けられていた小型ランタンを手にして灯りを点けると、階段の向こうへ歩を進める──。
程なくして、木製の扉が見えた。
スレイは扉の前に立つと灯りを消し、扉を押し開ける。
すると──
「えっと………この金具をココと、ココの部品にぃ……あれ? チガウ? それとも、コレかな……んん~??」
部屋は古びたベッドと傷んだテーブル。床や木棚にはナイフや使用済みの薬莢、分解された武器の部品等が散乱している。
テーブル前に、この殺風景な場所には似つかわしくない可愛らしくも無邪気な声と黒く長いスカートのゴシックワンピースを身に付けた少女。背中まで真っ直ぐに伸びている金色の髪が洋服に映え、灯りの乏しい場所でその存在を主張していた。
少女は一人、机の周りに散らばっている部品達をあれやこれやと手にしながら何度も左右に首を捻っていた。
彼女はスレイの来訪に気付いていないらしく、彼に背を向けたまま独り言を呟きながら何かを組み立てているようだ。
「………アン」
「ッ!! ビックリしたぁ…いつ帰って来たの?」
「今さっきだ。ここで何をしている」
「エッ!? えーっと…」
スレイは鋭い眼差しでアンを見つめると、彼女は目を逸らして必死に言葉を探しているようだ。
「…ここは俺の部屋であり工房であること。そして『中の物は弄るな』と、言っただろう」
「ま、待ってッ! 勝手に入ったのはゴメンなさい! でもコレはレクターからワタシにって渡してくれた物なの」
「何?」
「ワタシも『何かスレイの役に立ちたい!』って、言ってみたら突然こんなモノ渡されて『組み立ててみろ』だって! ナニコレって聞いても教えてくれなくて困ってる!」
と、スレイは文句を言うアンをどかすとテーブルに散らばっていた部品を目にした。
湾曲している木のパーツの先には切れた弦が垂れており、繋ぎ目と思わしき部分の金具は見事に錆びている。本体や他の部品も朽ちている箇所が多い。
スレイはため息を吐いた。
「………クロスボウか」
「クロスボウ?」
「簡易式の矢発射装置だ。初心者でもまだ扱い易い部類の武器で、非力な奴でも当りどころが良ければ十分獲物を仕留める事が出来る……だが、コイツはあちこちがガタついてるからな。仮に出来上がったとしても使いもんにならん」
「エェーッ!? むぅぅ、レクターのイジワル!!」
「しかしどんな物でも、傷み具合によっては補強すればちゃんと使えるようにはなる」
「ホント!?」
アンが目を輝かせて詰め寄るが、スレイは特に反応せず彼女を脇にどかす。
「本当だ。頑張れよ」
「えー」
「組み立てるのはオマエだ。俺は手伝わん」
「エエーーー!! じ、じゃあせめてどうやって作るか教えて!」
「断る」
「そんなのムリぃぃぃ!! 何もワカンナイのに出来っこないよーッ!!」
アンはとうとう手足をばたつかせ、その場で地団駄を踏みながら喚き出した。
見た目こそ成人に等しいが、その精神は外見に見合わず、とても幼い。
──その理由も、彼女はこれまで外の世界をろくに知る事無く、奴隷と同様の扱いでしか生かされていなかったからだ。
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そんな彼女がスレイと出会い、自らの足でようやく歩み出したのは、ほんの一年前の事。
彼女は檻から出たはいいもののそれ以上は動かず、立ち尽くして『この後どうすればいいか分からない』と、涙目でスレイに訴えた。
当初そんな事情も知らない彼は呆れて『ついて来るな』と突っぱねていたが、その後の帰路にて何処までも後ろを追いかけて来る彼女をあしらって撒こうとするも、どうした事か追いつかれてしまい、挙句にはこの【アロンダーク】にまでついて来てしまったのだ。
そこでとうとう根負けしたスレイはレクターに経緯を話し、彼女の身の上話しも聞き、事情を把握したレクターは暫くの間家に置いていい事を許可した。当然、彼女がレクターの“手伝い”をするという条件付きではあるが。
そしていつの日だったか──スレイは、彼女に『アン』という名前を与えた。
「スレイこの後は!?」
アンがお構い無しに再び彼の側へ詰め寄って来た。
「特に無い。が、オマエのワガママに付き合う道理も無い」
と、相変わらず素っ気無く投げやりに返す。アンを再び横にどけてベッドまで向かい、身に付けていた装備一式と道具を無造作に床へ置き並べる。
「ケチぃぃぃッ!! 少しはスレイも何か教えてよー!」
「断る。俺から教えるものなんざ特に無い」
「むーーー!」
「……俺が他に教えられるのはバケモノの“殺し方”だけだ。まさかそんなモノが知りたいのか?」
「知りたい!」
即答だ。そんな彼女にスレイは眉間を皺寄せた。
「どうしてだ?」
「スレイと一緒にいたいから」
「ナニ?」
何とも予想外の返答に今度は面食らってしまった。
「アタシはスレイと一緒にいたいの! でもアタシは“戦い方”なんか知らないし、一緒に居ても手入れだけで役に立たない。だから──」
「もういいウルサイ。喋るな」
強引に言葉を遮り、スレイはベッドに横たわるとすぐに瞼を閉じた。
そんな彼の態度にアンは歯を食いしばって犬のように唸るが、これまで反抗して勝った試しが無いことに渋々ながらも強引に怒りを抑え、鼻息荒くして背を向けると再び机に戻って組み立て始める。
──片方だけ薄目を開けてアンの様子を覗き見た。
背中越しでも彼女が頭を捻って唸りながらあれでもない、これでもないと、めげずに挑戦し続けていた。
「…………………………おい」
「…なに?」
「一眠りしたらその後近くの町へ行く。そこで物資の調達と……帰りに気が向いたら、武器の手入れくらいの話しはしてやる」
「!! 分かった! ゼーッタイに教えてヨッ!!」
「気が向いたらって言っただろうが」
「へへへ」
「…ふん」
どうやら少しは上機嫌になったようだ。
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