神業(マリオネット)

床間信生

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☆第2章☆リエン山

2ー63★気になるもの

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『ねーねー、ナカノさん。その間って、やっぱり連絡とれないの?』

俺はフェン達と話し合いをした後、アンテロとエルメダを呼んで別室にて直ぐに話し合いを始めた。
そこで明日からは別行動をしなければいけないと言う旨を話すとエルメダが若干いい顔をしない。

『んー…、この小屋から貿易都市ルートまででしょ…?さすがに、そこまで離れると連絡を取る手段って言うのは無くなるよね…』
『だよねー…』
『お嬢様、やはりナカノ様のことが心配なのですか?』
『ナカノさんのことが心配って言うよりは…んー…でも、まだ良く分かんないから、今はいいや…』

エルメダの言葉が何か含んでいるように思える…

『今はいいやって言われると、明日から別々だし気になっちゃうよね…。何となくとかでもいいから教えてくれると嬉しいんだけど…』
『あー…、そっかー…。明日から別か…、それなら…もう一回おさらいしておくけど、行くのはトーレさんのとこと貿易都市ルートだけだよね?それで、全部スキル使って、誰にも分からないように移動するんだよね?』
『寄るのはトーレの所と貿易都市ルートって言うのは間違いないよ。後、移動も基本はスキル使ってだね。ただ、誰にも分からないようになのかどうかはちょっと良く分からないんだけど、それがどうしたの?』
『そっかー、それなら取り敢えずは大丈夫だとは思うけど、でもね何か風が忙しいんだよね…』
『風が忙しい?』
『うん!』
『えっ…?何それ…?』

俺はエルメダの言っていることが良く分からない。
なので、アンテロの方は何か分かるかと思って、顔を向けては見たのだが…
彼女の方も不思議そうに顔を傾けただけだった。

『えーっとね。私が風魔法を使えるのはナカノさんも知ってるよね?』
『うん、そりゃーねー』
『それで、この前、セアラおばさんに警戒魔法アラームっていう風魔法を教えてもらって、何回か使ってるんだけど…明らかに山や森にいるはずのない音が聞こえるときがあるの…』
『音が聞こえる?どこから?』
『んー、ちょっとまだこの魔法を使いこなせてないからハッキリとは分かんないんだけど…』
『そう言われると、ちょっと気になっちゃうよね…』
『だって…この魔法、範囲がスッゴい広くてチョー難しいの』
『えっ…どのくらいの広さとか分かる?』
『分かんない…』
『もしかして…昼間も使ってた?』
『うん。でも、頭に入ってくる情報が、多分、見える範囲を越えてるみたいで、まだ良く分かんないの…』
『えっ…って言うことは、それ聞くと山のどこかで異変があるのは間違いないとか言う感じに聞こえるんだけど…』
『うーん。それも分かんない。もしかしたら小屋にいるフェンさんとフィアの音とかだったのかもしれないし…』
『あー…なるほど。そう言うことも考えられるのか』
『でも…、もしかしたらって思う場所もあるよ…』

エルメダが珍しいと言ってはなんだが、緊張した面持ちで俺の方を向き喋ってきた。

『もしかしたら?それって…どこ…?』
『洞窟…』
『洞窟って…グリエルモさんとフィリアさんの二人に会った場所か…』
『うん』
『あそこは、確かに俺も変だなって思ったよ。確か、フィリアさんは最初、洞窟の近くに羊皮紙か何かあったとか言ってたよね。それって…ねぇ…』
『だよねぇー。それにあの時確認した術式も、多分、フィアじゃ組めないくらいに難しいものだったし…』
『ん?フィリアさんじゃ組めないくらい難しいって、そうなの?そんなお前達って、そんな深いとこまで喋ってたの?』

エルメダとフィリアが、ある程度親しげに話していたのは知っている。
だが、それはほとんど洞窟の中で喋っていた間とここにくるまでの移動の間くらいだったはずだ。
そして、その時は話す内容については俺も横で聞いていたりしたが、何気ない会話みたいな感じが中心だったはず。
恐らく時間にして考えると、数時間~半日程度なのではないかと思うのだが…
彼女はいつの間にフィリアの実力を図れるほど深い会話をしていたのだろうか。

『んーっとねー。洞窟の外の森の周囲の認識阻害の術式を組んでいたのが、フィアだって言っていたんだけど…』
『あー、それ俺も聞いた。確か洞窟の中でテント張るときに言ってたね』
『うん。でも、あれって…一個間違ってたんだよね』
『えっ…マジで?』
『うん、マジ!だから私たち見つけることができて湖まで侵入できたんだよ。あの程度の術式を間違える感じだと洞窟の外と中にあった術式とかは組めないかな…特にグリエルモさんが寝てた横の装置の術式はかなり難しいよ。それに…字も違う人が書いた感じに見えたし…』

確かにあの時、エルメダは奥の部屋の装置などを調べたり、フィリアの羊皮紙を見たりと色々なものをチェックしていた。
俺も、あの時のフィリアの発言などは辻褄が合わないと思ったところもある。
だが、それらは彼女に細かく聞いても解決などしないなと思った手前、流したのだが…
どうやら、あの時エルメダも俺と同じような感覚を持っていたらしい…

自分一人だけでは何となくで済ませられることであるが、似た考えの者が見つかってしまった今では、そう笑い飛ばすこともできない。
なので、俺はエルメダの言葉と言うのをしっかりと受け止めて行動しようと肝に命じた。
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