3 / 3
解説〜前置きは読んでから本文を読んでくださいませ〜
しおりを挟む
まずは感謝を。本作を読んでくださってありがとうございます。評価もあり、嬉しい限りでございます。
さて、色々伏線を撒き散らして一気に回収したこの本作ですが、作者の力量のせいで回収し忘れた伏線もあったかもしれません。全部伏線を回収したつもりですが、回収し忘れた伏線を含めて急遽解説という形で補足させていただきます。
「なんのことだったかさっぱりだった!」という方も読んでくださって構いません。むしろそういう方は解説を読んで欲しいです。そうしてもう一度読み返すと、また面白いことに気づく、かもしれません。多分。
「そんなのなくたっていい!」という器の広い方は読んでいただく必要はないです。でも解説を読んでもう一度読み返すと、「なるほどねえ」と思うことがある、かもしれません。きっと。
では、解説に入ります。(BGM「人理の誓い」を流しながら読んでいただくと雰囲気があります)
この話は並行世界が存在するという前提での話です。
少し並行世界を知らない人のために説明しますと、並行世界とは言ってみれば「if」の世界。「もしあの時ジャンケンで勝っていれば」「もしあの時承諾を受けていたら」などの世界です。
本小説ではその並行世界を2種類に分類しています。それが「枝時空」と「本時空」です。
メタ的に説明しますと、枝時空とは終わることが決定された並行世界です。これはアリスの母のマキ博士の日記から推測できます。その終わり方はいくつか決められており、そのうちのいくつかは「『神』の出現」「魔物の出現」「概念の消失」などいくつかあります。またこの話は後でじっくり。
逆に本時空は終わらない並行世界です。たとえ「『神』が出現」したり「魔物が出現」したり「概念が消失」したりしても、終わることはない世界です。人類は滅ぶかもしれませんが、例えば犬が世界を支配しているかもしれません。
木を想像してください。枝時空とはその名の通り枝、本時空とは幹です。幹はどこまででも伸びるかもしれませんが、枝時空はその先がありません。伸びることはありません。私たちがそんな枝たちを伐採するのですから。
さて、軽く並行世界について話したところで本題です。解説はアリスの時空(ここも枝時空になった)を中心にして行おうと思います。
まず遡ること45億年前、地球が生まれて間もない頃に異星人が地球を見つけ、侵略しようとします。
地球にとっては、今から発展しようとするのにそんなスタートライン近くで邪魔されてはたまったものではありません。ですから、地球は「抑止力」という、地球が作り出す地球の敵に対してのカウンターを用意します。それが人型実体、私たちの言う神です。
神は異星人を撃退させました。後は地球の意思に従って地球を反映させました。
その終着点が人間です。
人間はその知能を使って地球上で発展をしていきました。もちろん弊害はありますが、その発展の水準は地球にとっては高いものになりました。
人間の発展により神は不要とみなされ、神は死んで、高次元へと昇華しました。そのため、神という概念が地球に残っています。
ですが、とあることをきっかけにしてその発展は終わり、滅亡への一歩を踏み出しました。
それが「神」、サオリがシオリを媒体にして作り上げたものです。
本小説ではその能力は明らかにしていませんが、「神」は世界を崩壊させました。世界がそれに気付いていないため、崩壊は物理的ではなく、例えば精神や社会性、経済などで崩壊させて行ったのでしょう。
「神」の出現以前に国連は世界が終わり始めていたのを知っていました。マキ博士も世界に違和感があると言っているそれです。それをなんとかしようとしてできた計画が「プロジェクトノア」です。
ノアの方舟という話があります。ノアは世界の大洪水の前に世界中の動物を船に乗せ、大洪水を免れるという話です。ですから、プロジェクトノアはノアという乗り物を作り出そうとする計画と推測できます。
ですが、日記の筆者__めんどくさいので筆者にしますが、筆者はノアに家族を乗せることを条件にプロジェクトノアに参加しましたが、何かしらの理由によりそれが拒否されました。
怒った筆者はマキ博士と結託。独自で家族を救うべく隠れ家に行き、別の研究に乗り出します。
抑止力により「神器」という概念を与えられた2人は神器を作成。しかし、地球を守るために作り出された神器の一つ、ゼウスの機能がとてつもない役割でした。
ゼウスは「世界の再構成」をします。ですがそのエネルギーになるのは300もの枝時空、つまり、終わりが決定づけられた世界たちを焼却し、1つの世界を作り出そうというわけです。
いわば「300もの世界を強制終了させ、それを燃料として1つの世界をやり直そう」というものです。倫理的に問題がありすぎる気がします。
2人がそれを否めながらも、結局2人はゼウスはじめとした神器を作り出します。マキ博士はその苦行をアリスと共に行うことを決意します。
ですが、プロジェクトノアが失敗に終わると知った政府が隠れ家に来ました。筆者は死んで、マキ博士も政府を足止めするべくその時空にとどまることを決意。最終的に、クロノスに取り残されたアリス1人だけが世界を救うことになりました。
アリスは時間遡行をして、何もわからないままに世界を焼却します。それが十三巡目になって初めて、母の日記を読み、自分が為していることを理解しました。
その際にアリスを守り続けるのが雲井希、主人公でした。
枝時空同士はおおよそ似たもの同士です。ですからどの枝時空上にも雲井希は存在し、どの時空の雲井希はアリスを守り続けます。それこそ、喧嘩しても、拒絶しても、拒絶されても。だからアリスは雲井希に惚れ、そんなアリスのあり方に雲井希は惚れたのでしょう。
しかし、問題だって出てきます。それが「終わりが加速」していることです。
0番目の時空、つまり、本来アリスがいた時空では20YR年1月までは人類は滅んでいませんでした。政府の存在がその証です。しかし、本作の舞台の164番目の時空では20XX年12月1日に人類は滅んでいます。
何の影響だったかは明らかになっていませんが、徐々に世界が終わる日にちが早まってしまい、結局20XX年12月1日に収束していきました。
そして世界を焼却し続けたアリスは本作、164番目の時空へとたどり着きました。
というのが、アリスを中心とした解説です。以上はメタ視点での解説もありましたが、日記やアリスの言動から読み取れなくもないです。
では、いくつか補足をつけていきましょう。まずは日記の内容からです。
まずは、大統一性理論、超越統一性理論についてです。
私たちの世界では大統一理論というものものがあります。この世界に存在する基本的な力は4つあり、それらを統一しようとする理論がありますが、そのうちの3つを統一しようとする理論です。4つの力を統一するのを超大統一理論と言います。
メタ視点から、筆者の言う大統一性理論は0番目時空での呼び名で、4つの力を統一する超大統一理論です。少しここがややこしいです。
以上から考えると、筆者たちがやろうとしていたことは世界中の全てを理解する理論を作っている、ということです。
ですが、できたのは答えではなく「答えが出ない」という答えでした。万物を理解することは不可能、という答えができたのです。そんな答えが出たら筆者は混乱します。
ここで筆者は考えました。「解が足りない」ということを。ここでいう「解」は4つの力のことで、「解が足りない」ということは、もう1つかそれ以上の別の力が存在しているのではと考え出します。
結局その別の力の存在を知り、筆者は超越統一性理論を完成させました。20XV年11月1日の日記で「単純に確率に帰結する超越統一性理論に確率を操作する」と言っていることから、筆者が理論を完成させ理解したということがわかります。
ここでいうもう別の力というのは今は伏せておきます。
筆者が完成させた超越統一性理論というのは、マキ博士の言う通り「起きる事象の確率を出す」だけです。
例えばサイコロの目はどの面も6分の1の確率でおきます。それと同じように、今日の私の夕食が焼き鳥の確率も導き出せるということです。もちろん私がオムライスを食べる確率も、そもそもご飯を食べない確率も。
その確率は全て枝時空か本時空かに分かれます。焼き鳥を食べれば枝時空、オムライスなら本時空、ご飯を食べないなら枝時空、というように。
そんな超有能な理論を政府が見過ごすわけではなく、プロジェクトノアの実行に協力させようとしました。結果としては、筆者とマキ博士は計画に参加せず、自分たちでなんとかしようとしました。
次に現実性の不全についてです。
これは簡単に言えば「現実が定まらない」ということです。
先ほど枝時空の終わり方は決められていると言いました。それは終わり方に種類はあれど、それぞれの枝時空の終わり方は1つに定まります。
ですが、0番目時空、もっと言えば本作に関わるほとんどの時空では、それが同時に起こっています。
例えば枝時空A、B、Cがあり、Aは「異星人が侵略して地球が爆発する」終わり方、Bは「地球が太陽に飲み込まれる」終わり方、Cは「環境汚染のせいで地球が荒廃してしまう」終わり方に決められたとします。
しかし、とある枝時空Dの現実性が不全になれば、終わり方が同時に起こってしまいます。つまり「異星人が侵略しながら環境汚染のせいで地球が荒廃して爆発しながら太陽に飲み込まれる」という終わり方になってしまうということです。
概念というものが現実性が不全である理由も納得できます。例えば「マナー」という概念は「音を立てて食事しない」「挨拶されたら挨拶し返す」「人の話は目を見て聞く」など色々な意味が重なっています。
しかし、それは現代日本であって、他の国なら「音を出して食事」するのがマナーだったり、昔なら「目下の人とはあまり目を見て話をするべきではない」などと言ったマナーがあります。
移り変わる、という意味で「定まらない」のです。
次に概念の消失による終わり方、についてです。
「概念の消失で世界が終わる?」と思った方はいるかもしれません。ですが、概念の消失というのはとても恐ろしいことなのです。
私たちは「法律」という概念を知っています。それは人が無闇矢鱈に行動することを防ぎ、社会を守るための則りです。だから私たちは「社会」という概念を知っています。人間が作り出す擬似的な集団のようなものです。
本作では雲井希は「法律」という概念を失いました。なぜなら人間が集まる「社会」が消えたことで「社会」という概念が失われた結果です。本作で「犯罪」「批判」という単語がないのは、「社会」という概念がなかったからなのです。
このように、本作では「概念」というのは観測者、つまり私たち人間のような生き物がいて初めて成り立ちます。
164番目時空では観測者は雲井希ただ1人だけです。観測者としての”人類”の力が弱くなり、結果「法律」「社会」また「空気」「気圧」「気温」といった概念も直接的な観測はしていないため、徐々に薄れていっていました。では、「世界」という概念自体なくなったら……
「学校がないのに主人公が学校を知っているのはおかしい」と思う人がいるかもしれません。それは雲井希が「学校に行った」という記憶が刻まれているため、雲井希は「学校に行った」ということは覚えていますが「学校」という概念自体を理解していないはずです。
そんな感じの概念は多くあります。
以下、壮大な作者の妄想が入ります。
次に暗黒球、についてです。
とは言ってもこれに関しては次の項目も含めると説明できます。
暗黒球は初めは「終わり方が混じることで起きた世界のバグ」のようなものです。「神」が現れ、「月の使徒」が現れ、そしてそこから概念の消失が始まりました。
ですが、結局最後には暗黒球は「神」を守る膜、バリアになりました。バグを使って「神」は自らを守ったのです。結局暗黒球の縮小を知った「神」はそこから抜け出し、暗黒球は消失しました。
最後にアダムとイヴ、についてです。
この2人についてはきちんとした伏線を撒いておりません。「神」に関わるものであるため重要なのですが、今回は世界の終末が同時に訪れた後の物語であり、訪れている過程の物語ではないので省かせていただきました。ご了承くださいませ。
私の頭をネタバレすると、この2人は「神」すなわちシオリの同級生です。以下、本作に1ミリも触れていない私の妄想を書き連ねます。それが嫌な方は次の項を読んでもらって構いません。
サオリは常日頃思っていました。世界を平和にするにはどうすればいいのか、争いの根源はなんなのか、万人の過ごしたいままに過ごすにはどうすればいいのか。
そうこう悩んでいるうちに、娘を生み、そして子育てをしながら思いつきました。
「すべての人類の願いを叶える装置」を作ればいいのだ、と。
その素体にシオリは使われました。シオリに「願いを叶える装置」を搭載させ、これを軸にすれば世界は平和になるのではと。
そんなシオリは2人の同級生に相談していました。相談しましたが、それでも母の行いを止めることはできず、結局シオリは万物の願望機にされてしまいました。
サオリはそれをNYのオークション会場に持ち出し、売り捌き始めました。もちろん1つの値段は超高額で。この時のサオリは「万人を救いたいと願う科学者」ではなく「娘を改造し利益を得るためだけに行動するマッドサイエンティスト」になっていました。
ですが、シオリは売れました。1つしかないですが、富豪に買われ、売られ、買われ、売られ………その度にサオリの懐は温かいなりました。確かにこんな状況なら世界の崩壊なんて見向きもしないでしょう。「目先の願望にばかり囚われている」のですから。
しかし、サオリの最も誤算だったところがありました。それは人類の欲望は枯渇することがないということです。
サオリのせいで経済は混乱します。富豪がダイヤモンド1億トンと願えば1億トンを作り出し、金が欲しいと願えば大金を作り出す。インフレデフレも思うがまま。
シオリは助けを求めました。しかし、誰も助けてくれませんでした。
もう狂ってしまったのでしょう。シオリはかつて自らを助けんとしていた2人に手を出しました。彼らを自分の傀儡にしてしまいました。
シオリの概念を消して「神」と崇めさせ、その横に「アダムとイヴ」がいる。ようやく一部の人間がおかしな世界に気づいた時には時すでに遅し。
………というわけで、「アダムとイヴ」が生まれました。
というわけで解説を入れましたが、最後に一つだけ本作で振られらていない、ですが重要な要素を説明しないで終わります。
それは、超越統一性理論における「もう一つの力」です。
これは読者様のご想像にお任せします。作者が直々に答えを出すのはちょっといけないような気がしたので。
一通りの解説はできたと思います。これでも抜けているものがあれば……ごめんなさい。
最後になりましたが、この作品を読んでいただきありがとうございました。
続きは……書かないかもしれませんし、書くかもしれません。
さて、色々伏線を撒き散らして一気に回収したこの本作ですが、作者の力量のせいで回収し忘れた伏線もあったかもしれません。全部伏線を回収したつもりですが、回収し忘れた伏線を含めて急遽解説という形で補足させていただきます。
「なんのことだったかさっぱりだった!」という方も読んでくださって構いません。むしろそういう方は解説を読んで欲しいです。そうしてもう一度読み返すと、また面白いことに気づく、かもしれません。多分。
「そんなのなくたっていい!」という器の広い方は読んでいただく必要はないです。でも解説を読んでもう一度読み返すと、「なるほどねえ」と思うことがある、かもしれません。きっと。
では、解説に入ります。(BGM「人理の誓い」を流しながら読んでいただくと雰囲気があります)
この話は並行世界が存在するという前提での話です。
少し並行世界を知らない人のために説明しますと、並行世界とは言ってみれば「if」の世界。「もしあの時ジャンケンで勝っていれば」「もしあの時承諾を受けていたら」などの世界です。
本小説ではその並行世界を2種類に分類しています。それが「枝時空」と「本時空」です。
メタ的に説明しますと、枝時空とは終わることが決定された並行世界です。これはアリスの母のマキ博士の日記から推測できます。その終わり方はいくつか決められており、そのうちのいくつかは「『神』の出現」「魔物の出現」「概念の消失」などいくつかあります。またこの話は後でじっくり。
逆に本時空は終わらない並行世界です。たとえ「『神』が出現」したり「魔物が出現」したり「概念が消失」したりしても、終わることはない世界です。人類は滅ぶかもしれませんが、例えば犬が世界を支配しているかもしれません。
木を想像してください。枝時空とはその名の通り枝、本時空とは幹です。幹はどこまででも伸びるかもしれませんが、枝時空はその先がありません。伸びることはありません。私たちがそんな枝たちを伐採するのですから。
さて、軽く並行世界について話したところで本題です。解説はアリスの時空(ここも枝時空になった)を中心にして行おうと思います。
まず遡ること45億年前、地球が生まれて間もない頃に異星人が地球を見つけ、侵略しようとします。
地球にとっては、今から発展しようとするのにそんなスタートライン近くで邪魔されてはたまったものではありません。ですから、地球は「抑止力」という、地球が作り出す地球の敵に対してのカウンターを用意します。それが人型実体、私たちの言う神です。
神は異星人を撃退させました。後は地球の意思に従って地球を反映させました。
その終着点が人間です。
人間はその知能を使って地球上で発展をしていきました。もちろん弊害はありますが、その発展の水準は地球にとっては高いものになりました。
人間の発展により神は不要とみなされ、神は死んで、高次元へと昇華しました。そのため、神という概念が地球に残っています。
ですが、とあることをきっかけにしてその発展は終わり、滅亡への一歩を踏み出しました。
それが「神」、サオリがシオリを媒体にして作り上げたものです。
本小説ではその能力は明らかにしていませんが、「神」は世界を崩壊させました。世界がそれに気付いていないため、崩壊は物理的ではなく、例えば精神や社会性、経済などで崩壊させて行ったのでしょう。
「神」の出現以前に国連は世界が終わり始めていたのを知っていました。マキ博士も世界に違和感があると言っているそれです。それをなんとかしようとしてできた計画が「プロジェクトノア」です。
ノアの方舟という話があります。ノアは世界の大洪水の前に世界中の動物を船に乗せ、大洪水を免れるという話です。ですから、プロジェクトノアはノアという乗り物を作り出そうとする計画と推測できます。
ですが、日記の筆者__めんどくさいので筆者にしますが、筆者はノアに家族を乗せることを条件にプロジェクトノアに参加しましたが、何かしらの理由によりそれが拒否されました。
怒った筆者はマキ博士と結託。独自で家族を救うべく隠れ家に行き、別の研究に乗り出します。
抑止力により「神器」という概念を与えられた2人は神器を作成。しかし、地球を守るために作り出された神器の一つ、ゼウスの機能がとてつもない役割でした。
ゼウスは「世界の再構成」をします。ですがそのエネルギーになるのは300もの枝時空、つまり、終わりが決定づけられた世界たちを焼却し、1つの世界を作り出そうというわけです。
いわば「300もの世界を強制終了させ、それを燃料として1つの世界をやり直そう」というものです。倫理的に問題がありすぎる気がします。
2人がそれを否めながらも、結局2人はゼウスはじめとした神器を作り出します。マキ博士はその苦行をアリスと共に行うことを決意します。
ですが、プロジェクトノアが失敗に終わると知った政府が隠れ家に来ました。筆者は死んで、マキ博士も政府を足止めするべくその時空にとどまることを決意。最終的に、クロノスに取り残されたアリス1人だけが世界を救うことになりました。
アリスは時間遡行をして、何もわからないままに世界を焼却します。それが十三巡目になって初めて、母の日記を読み、自分が為していることを理解しました。
その際にアリスを守り続けるのが雲井希、主人公でした。
枝時空同士はおおよそ似たもの同士です。ですからどの枝時空上にも雲井希は存在し、どの時空の雲井希はアリスを守り続けます。それこそ、喧嘩しても、拒絶しても、拒絶されても。だからアリスは雲井希に惚れ、そんなアリスのあり方に雲井希は惚れたのでしょう。
しかし、問題だって出てきます。それが「終わりが加速」していることです。
0番目の時空、つまり、本来アリスがいた時空では20YR年1月までは人類は滅んでいませんでした。政府の存在がその証です。しかし、本作の舞台の164番目の時空では20XX年12月1日に人類は滅んでいます。
何の影響だったかは明らかになっていませんが、徐々に世界が終わる日にちが早まってしまい、結局20XX年12月1日に収束していきました。
そして世界を焼却し続けたアリスは本作、164番目の時空へとたどり着きました。
というのが、アリスを中心とした解説です。以上はメタ視点での解説もありましたが、日記やアリスの言動から読み取れなくもないです。
では、いくつか補足をつけていきましょう。まずは日記の内容からです。
まずは、大統一性理論、超越統一性理論についてです。
私たちの世界では大統一理論というものものがあります。この世界に存在する基本的な力は4つあり、それらを統一しようとする理論がありますが、そのうちの3つを統一しようとする理論です。4つの力を統一するのを超大統一理論と言います。
メタ視点から、筆者の言う大統一性理論は0番目時空での呼び名で、4つの力を統一する超大統一理論です。少しここがややこしいです。
以上から考えると、筆者たちがやろうとしていたことは世界中の全てを理解する理論を作っている、ということです。
ですが、できたのは答えではなく「答えが出ない」という答えでした。万物を理解することは不可能、という答えができたのです。そんな答えが出たら筆者は混乱します。
ここで筆者は考えました。「解が足りない」ということを。ここでいう「解」は4つの力のことで、「解が足りない」ということは、もう1つかそれ以上の別の力が存在しているのではと考え出します。
結局その別の力の存在を知り、筆者は超越統一性理論を完成させました。20XV年11月1日の日記で「単純に確率に帰結する超越統一性理論に確率を操作する」と言っていることから、筆者が理論を完成させ理解したということがわかります。
ここでいうもう別の力というのは今は伏せておきます。
筆者が完成させた超越統一性理論というのは、マキ博士の言う通り「起きる事象の確率を出す」だけです。
例えばサイコロの目はどの面も6分の1の確率でおきます。それと同じように、今日の私の夕食が焼き鳥の確率も導き出せるということです。もちろん私がオムライスを食べる確率も、そもそもご飯を食べない確率も。
その確率は全て枝時空か本時空かに分かれます。焼き鳥を食べれば枝時空、オムライスなら本時空、ご飯を食べないなら枝時空、というように。
そんな超有能な理論を政府が見過ごすわけではなく、プロジェクトノアの実行に協力させようとしました。結果としては、筆者とマキ博士は計画に参加せず、自分たちでなんとかしようとしました。
次に現実性の不全についてです。
これは簡単に言えば「現実が定まらない」ということです。
先ほど枝時空の終わり方は決められていると言いました。それは終わり方に種類はあれど、それぞれの枝時空の終わり方は1つに定まります。
ですが、0番目時空、もっと言えば本作に関わるほとんどの時空では、それが同時に起こっています。
例えば枝時空A、B、Cがあり、Aは「異星人が侵略して地球が爆発する」終わり方、Bは「地球が太陽に飲み込まれる」終わり方、Cは「環境汚染のせいで地球が荒廃してしまう」終わり方に決められたとします。
しかし、とある枝時空Dの現実性が不全になれば、終わり方が同時に起こってしまいます。つまり「異星人が侵略しながら環境汚染のせいで地球が荒廃して爆発しながら太陽に飲み込まれる」という終わり方になってしまうということです。
概念というものが現実性が不全である理由も納得できます。例えば「マナー」という概念は「音を立てて食事しない」「挨拶されたら挨拶し返す」「人の話は目を見て聞く」など色々な意味が重なっています。
しかし、それは現代日本であって、他の国なら「音を出して食事」するのがマナーだったり、昔なら「目下の人とはあまり目を見て話をするべきではない」などと言ったマナーがあります。
移り変わる、という意味で「定まらない」のです。
次に概念の消失による終わり方、についてです。
「概念の消失で世界が終わる?」と思った方はいるかもしれません。ですが、概念の消失というのはとても恐ろしいことなのです。
私たちは「法律」という概念を知っています。それは人が無闇矢鱈に行動することを防ぎ、社会を守るための則りです。だから私たちは「社会」という概念を知っています。人間が作り出す擬似的な集団のようなものです。
本作では雲井希は「法律」という概念を失いました。なぜなら人間が集まる「社会」が消えたことで「社会」という概念が失われた結果です。本作で「犯罪」「批判」という単語がないのは、「社会」という概念がなかったからなのです。
このように、本作では「概念」というのは観測者、つまり私たち人間のような生き物がいて初めて成り立ちます。
164番目時空では観測者は雲井希ただ1人だけです。観測者としての”人類”の力が弱くなり、結果「法律」「社会」また「空気」「気圧」「気温」といった概念も直接的な観測はしていないため、徐々に薄れていっていました。では、「世界」という概念自体なくなったら……
「学校がないのに主人公が学校を知っているのはおかしい」と思う人がいるかもしれません。それは雲井希が「学校に行った」という記憶が刻まれているため、雲井希は「学校に行った」ということは覚えていますが「学校」という概念自体を理解していないはずです。
そんな感じの概念は多くあります。
以下、壮大な作者の妄想が入ります。
次に暗黒球、についてです。
とは言ってもこれに関しては次の項目も含めると説明できます。
暗黒球は初めは「終わり方が混じることで起きた世界のバグ」のようなものです。「神」が現れ、「月の使徒」が現れ、そしてそこから概念の消失が始まりました。
ですが、結局最後には暗黒球は「神」を守る膜、バリアになりました。バグを使って「神」は自らを守ったのです。結局暗黒球の縮小を知った「神」はそこから抜け出し、暗黒球は消失しました。
最後にアダムとイヴ、についてです。
この2人についてはきちんとした伏線を撒いておりません。「神」に関わるものであるため重要なのですが、今回は世界の終末が同時に訪れた後の物語であり、訪れている過程の物語ではないので省かせていただきました。ご了承くださいませ。
私の頭をネタバレすると、この2人は「神」すなわちシオリの同級生です。以下、本作に1ミリも触れていない私の妄想を書き連ねます。それが嫌な方は次の項を読んでもらって構いません。
サオリは常日頃思っていました。世界を平和にするにはどうすればいいのか、争いの根源はなんなのか、万人の過ごしたいままに過ごすにはどうすればいいのか。
そうこう悩んでいるうちに、娘を生み、そして子育てをしながら思いつきました。
「すべての人類の願いを叶える装置」を作ればいいのだ、と。
その素体にシオリは使われました。シオリに「願いを叶える装置」を搭載させ、これを軸にすれば世界は平和になるのではと。
そんなシオリは2人の同級生に相談していました。相談しましたが、それでも母の行いを止めることはできず、結局シオリは万物の願望機にされてしまいました。
サオリはそれをNYのオークション会場に持ち出し、売り捌き始めました。もちろん1つの値段は超高額で。この時のサオリは「万人を救いたいと願う科学者」ではなく「娘を改造し利益を得るためだけに行動するマッドサイエンティスト」になっていました。
ですが、シオリは売れました。1つしかないですが、富豪に買われ、売られ、買われ、売られ………その度にサオリの懐は温かいなりました。確かにこんな状況なら世界の崩壊なんて見向きもしないでしょう。「目先の願望にばかり囚われている」のですから。
しかし、サオリの最も誤算だったところがありました。それは人類の欲望は枯渇することがないということです。
サオリのせいで経済は混乱します。富豪がダイヤモンド1億トンと願えば1億トンを作り出し、金が欲しいと願えば大金を作り出す。インフレデフレも思うがまま。
シオリは助けを求めました。しかし、誰も助けてくれませんでした。
もう狂ってしまったのでしょう。シオリはかつて自らを助けんとしていた2人に手を出しました。彼らを自分の傀儡にしてしまいました。
シオリの概念を消して「神」と崇めさせ、その横に「アダムとイヴ」がいる。ようやく一部の人間がおかしな世界に気づいた時には時すでに遅し。
………というわけで、「アダムとイヴ」が生まれました。
というわけで解説を入れましたが、最後に一つだけ本作で振られらていない、ですが重要な要素を説明しないで終わります。
それは、超越統一性理論における「もう一つの力」です。
これは読者様のご想像にお任せします。作者が直々に答えを出すのはちょっといけないような気がしたので。
一通りの解説はできたと思います。これでも抜けているものがあれば……ごめんなさい。
最後になりましたが、この作品を読んでいただきありがとうございました。
続きは……書かないかもしれませんし、書くかもしれません。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる