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21・明日から…

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「Sクラスの30人中、10番だった…!!」
テスト結果が発表となった日、マロンは寮に戻ってマリンと合流するなり、結果を嬉しそうに伝えて来た。
「あ、そうか、そっちは順位が出るのかぁ。」
マリンの方の白魔導師クラスは、テストの点数はそれぞれ結果として返されるがクラス内順位とかは特に書いていなかった。
「マリン、本当にありがとぉぉっ…!
10番なら、目立たないけど半分より上だし、現状維持が出来るよ~~~!」
泣きながら抱き付いて来たマロンを、よしよしと背中を撫でてやる。
「王子とかシータちゃん、ティアは何位くらいだったんだろうね。」
「分かんない。
すごく成績が良ければ鼻に掛けて言う人もいるかもだけど、みんな結構だんまりだったから。
クラス落ちするかどうかも、期末の結果が出た後の2年の進級の際まで分からないし。」
「そっか。
なんとか現状維持しつつ、目立たないように過ごして、無事に卒業したらグロッシュラーから旅立とうっ。」
ぐっと両手の拳を握り締め、力説するマリン。
マロンは顔を上げ、マリンを見る。
「でも旅立つって、どこに行くの…?」
「どこ…、そう…だね。
色々考えてはいるんだけど、この西の大陸から出て中央大陸の世界で一番大きい国、クォーツ目指すのが良いんじゃないかなぁって。」
「クォーツ?
うーん…、誰かに相談したいけど…。」
マロンはクォーツがどこでどんな国か、仕入れた知識を忘れてしまったようだ。
クォーツは、とても近代的な都市でもあると書物には書いてあったが、マリンも書物での知識しか知らない。
誰か、世界中を移動して見聞きしている人から話を聞きたいが――――。

「はっ、そうだっ、チューブさん!」
ハッとなり、マリンは突然大声を上げる。
それにマロンは驚きビクリとなった後、マリンに顔を寄せ、マリンの言葉の先を待つ。
「チューブさんに相談するんだよ!
チューブさんなら、世界中を行き来してるだろうからっ。」
「あっ、そ、そっかっ!!
そうしようっ!」
「問題は、チューブさんとどうやって会うか…。」
腕組みをし、目を瞑って眉を寄せ考える。
「わたし達が寮生活なのは、知ってるからもうあの家にもきっと来てないよね。」
うーんとマロンも同じポーズで考え始める。
「冬季休暇の休みに…、家に戻ろう。
もしかしたら、来てくれるかもしれない。」
「なるほど!」
「その時に、またガラス細工を引き取って貰えるよう、色々作っておこう。
こっちに来てから、ほとんど作ってなかったからさ。」
「そだね。
テストも終わったし、寮生活にも慣れて来たし。」
うんうんと、マリンとマロンは頷き合う。
「じゃあ、さっそくこれから何か作ろうか。」
「あ…、明日から、は、どうかな?」
ガクッ
やる気をみなぎらせたマリンだったが、マロンは同じ気持ちではなかったようだ。
出鼻をくじかれて、思わずコケそうになってしまうが。
「じゃあ、今日はどんなの作るか考えながら寝よう。」
苦笑しながら返すと、マロンはコクコクと大きく頷いたのだった。
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