双子ぷろでゅーーす!!!

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文化祭準備!其の二

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「みんな知ってると思うんですけど、うちのクラスは準備が遅れてます」

 みんなが席に座る中、一人教壇に立ち危機を宣告するこの子は、今回お化け屋敷をするにあたっての、リーダーだ。

 身長は小学生と間違われるほど小さく、童顔。

 どこからどう見ても高校三年生には見えない。

 名前は横沢菜奈といい、みんなからは「よこなな」と呼ばれている。

「ということで、みんななるべく放課後は残って作業しましょう!」

 こういう状況になった時、大まかに分けると3パターンに反応が分かれる。

 一つは、よし、やるぞ!、と意気込む文化祭エンジョイ組。

 もう一つは、やろうという気持ちはあるものの、残業をしてまで準備はしたくない人たち。

 残りは文化祭自体に興味がない人たちだ。

 ちなみに俺は、文化祭は好きだが仕事の関係であまり準備に参加できない、という都合のいい立場をとることにする。

 終わりのチャイムが鳴った。

「じゃあとりあえず今日はここまでで」

「木部は残って作業な」

「え~~」

 締めくくりにそんなことを言うのは、うちのクラスの委員長の木村と副委員長の尾朝だ。

 文化祭は主に、文化祭リーダーと、委員長、副委員長が仕切って進行していく。

 俺は当然のごとく鞄をもって、準備をするみんなを横目に帰ろうとしたその時だった。

「なあ日向君、ちょっといい?」

 突然目の前に小学生が現れた。

「なんだ、よこななか。どうした?」

「えっとね、さっきも言った通り、準備遅れてるんだよね」

「あ、ああ、そうだな」

「それでね」

 ごくりと唾をのむ。

「日向君、家近かったよね! 週末日向くんちで作業してもいいかな?」

「へ?」

 思わず間抜けな声を出してしまった。

「放課後だけじゃどうしても衣装まで作れなくて、週末は学校しまってるから、それじゃあ誰かの家に集まってやろうということで、日向くんちに決定しました!」

「うーん・・・」

「え、もしかしてお仕事?」

 本当は今週末に予定なんか入っていない。しかし、なんとか言い訳をしようとスマホのカレンダーを見て時間を稼いでいるのだ。

「ちょっと厳し・・」

 断る寸前までいったところで、廊下の向こうから何やら騒がしい子が、手を振りながらこっちに走ってきた。

「お兄ちゃ~ん」

「どうした、千代」

「別に何でもないんだけど、今から帰るとこでお兄ちゃんを見かけたから」

「ねえ千代ちゃん、今週末おうち言っていい?」

 よこななが突然千代に質問した。

 とっさに俺が阻止しようとしたのだが、時すでに遅しだった。

「いいですよ~、週末は久々にオフですし~」

「やった! じゃあお邪魔するね~」

 ため息をつく俺。はしゃぐよこなな。

「あれ、どうしたのおにいちゃん?」

「あー、いや、何でもない」

「そっか、今から帰るんでしょ? 一緒に帰ろうよ」

 こいつ、俺が嫌がるの知っててやりやがったな。

 まあ今まで準備してこなかったし、これでチャラにしといてやろう。

「じゃあ横沢先輩、また今度!」

「よこななでいいよ~、またね!」

 二人があいさつを交わしている。

 ああ。

 俺のオフが。
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