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20.結婚式

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5月最後の週末を前に家の中はいつも以上に騒がしくなっていた
なぜならその週末にバルドさんとミリアの結婚式があるからだ
婚約して1年半、と言っても2人はもう10年近く付き合ってるんだけど
バルドさんは竹細工と薬草で作る雑貨を町の店におろしてるし、ミリアは町の洋品店で売り子をしている
中々結婚に踏み切れなかったバルドさん達がようやく重い腰を上げたのは、竹細工の店主であるランディさんから店を引き継ぐことになったからだ

***
「バルドさんが店主に?」
皆の集まる場でバルドさんはそう言った

「ランディさんが前から引退を考えてて、この間腰を痛めたのもあって店に出るのが限界だって言うんだよ」
「あぁ…」
たしか2週間ほど前に騒いでた様な気がする

「それで店を継いでくれないかって言ってくれてね」
バルドさんはまんざらでもない顔でそう言った
***

バルドさんは13歳の頃から細工品を売りに行ってたから信用はかなりのものだ
これからはバルドさんが店をしてランディさんが小遣い稼ぎ程度に作品を売ることになっているらしい
「バルド、荷物はこれで全部なの?」
「ああ」
「リル、そんなに心配しなくても忘れ物があってもすぐ取りに来れるから」
「ナターシャさん…それは分かってるんだけどぉ…」
両親を亡くしてからバルドさんの親代わりだったリルさんは、ここの所情緒不安定になってる

「バルドにはミリアもシナイもいるんだから大丈夫よ。バルド自身も随分丈夫になったしね」
「そうだよ姉さん。もう長いこと発作とは無縁だし、もし発作が起きてもサラサさんがミリアにあのスキル渡してくれてるから」
あのスキルというのは気道確保というスキル
バルドさんは子供の頃、強い喘息のような発作をよく起こしてたらしい
そのせいで色々辛い思いもしてたって聞いたことがある
今はそんな過去があったなんてわからないくらい普通に暮らし、俺はあんまり記憶にないんだけどな

「シア、ルークいらっしゃい」
母さんに呼ばれてファミリールームに入るとルークだけでなくシャノンとスカイ、ケインまで揃っていた

「なに?」
「これ、試着してみて」
「なにこれ?」
「結婚式用の服よ。流石に身内同様なのに正装じゃないのはね」
「え…」
嫌なんだけど

「こればっかりは諦めてね」
母さんににっこり微笑まれれば否はない、よなぁ…

「…わかったよ」
しぶしぶ母さんから洋服の一式を受け取った
自分の部屋で一旦着替えて再びファミリールームに戻ると…

「やだシアカッコいい!」
「母さんこれヤバいヤツなんじゃない?」
シャノンとルークの言葉は同時に発せられた

「そうね。レイの若い頃を思い出すわねぇ」
母さんはどこか嬉しそうに笑う

「シアがシアじゃないみたい」
「私シアみたいな王子様に出会いたいなぁ…」
「お前らまで言うか…」
ケインとスカイ迄続くと俺の味方はいない
スカイに至っては何の世界を夢見てるのか…

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