[完結]憧れの場所

真那月 凜

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16.最高の時間

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流れ込むように会場に入りライブが始まるのを待つ
たった数十分が何時間にも感じた

そしてライトが消えライブは始まった
流華にとって久々のライブだった
初ライブの時に感じた光の渦はさらに大きくなっていた
でもその光は初ライブのときと違って温かかった

『今日は会場にお越しいただきありがとうございます』
彗耶が声を張り上げていった

『今日は1周年記念ライブということで俺らの中でテーマを決めました。このライブのテーマは!』
彗耶はそこで大きく息を吸った

『原点に戻る事!この1年お世話になった方はもちろんそれ以前から俺たちを支えてくれた軽音部の仲間、ライブで競い合った奴ら…他にも大勢の人たちに支えられて俺たちel cruceは今ここにいます』
会場は静まり返っていた

『俺たちは皆さんへの感謝の為に今回のライブを企画しました。途中いくつかイベントも入れていくつもりなので最後まで楽しんでいってください!』
その言葉に会場は割れんばかりの拍手であふれた

『まず最初に俺たちがデビューする前の曲を聞いてください』
そう言った瞬間ステージのライトが消え会場の1点にライトが当てられた

「何だよ一体」
ライトを当てられた亨が面食らったように言う

『デビュー前の曲に欠かせないギターを飛び入り参加で迎えたいと思います。俺の親友でもある男です。彼とはいろいろありました。彼の最後のライブでは殴り合いの喧嘩までして、それでも切れない人間でした。そんな彼のギターでもう一度el cruceの曲を歌わせてください。亨、ステージに上がれよ』
最後の言葉は亨にだけ向けられていた

「良かったね亨君」
「?」
「望んでた場所に立てるんだよ。皆と一緒に」
流華は笑顔で言った

その言葉に背中を押されるように亨はステージに上がった
波のように押し寄せる拍手の中で真二からギターを受け取った

『ということで亨から一言』
『え?』
突然マイクを渡された亨は戸惑いはしたものの話始めた

『突然引っ張り上げられてしかもマイクまで渡されたわけですが、こうしてステージに立つのは最後のライブ以来初めてです。この会場の中にはその最後のライブを見に来てくれた人もいると思います。辞める事をライブ直前にこいつらに伝えたせいもあって最悪のライブだったと思います。こんな俺にまたこいつらとやれるチャンスをくれた皆さんに感謝します。手を傷めて以前のようなギターはもう弾けませんが聞いてください』
亨が彗耶にマイクを返した瞬間ドラムが鳴った

懐かしい曲が流れてくる
デビュー前から知っている人たちはコーラスを入れてくれた

一瞬過去にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えた
泣き出す女の子まで出てきた

そして亨は最高の時間を過ごしていた
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