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「おばあちゃんおはよー」
「おはよう紫穂ちゃん。いつも悪いね」
玄関を掃除している紫穂におばあちゃんはそう言った
「どういたしまして。お漬物だけひっくりかえしといたよ」
「助かるよ。すぐ朝ごはん作るからね」
おばあちゃんはそう言いながらキッチンに向かった
「紫穂新聞とって」
「はい、おはよう悠稀」
「おう」
「相変わらず新聞読むの欠かさないよね?」
「まぁな」
新聞を受け取って悠稀は奥に入って行く
紫穂が掃除を終えて中に入るとおじいちゃんが野菜を持って中に入って来た
「おじいちゃんおはよ!」
「おぉ。おはよう紫穂。足は大丈夫か?」
「クスッ。そんな毎日確認しなくても大丈夫だよ」
笑顔で言う紫穂におじいちゃんは満足げに頷いた
「紫穂ちゃん運んでちょうだい」
「はーい」
紫穂はおばあちゃんの作った料理を食卓に運んだ
両親がほとんど家を開けるため紫穂は大抵お隣の仁科の家で悠稀とその祖父母と生活していた
「悠稀新聞ストップ!」
「…分かったよ」
取り上げかけられて初めて顔を上げる
「さぁ召し上がれ」
「いただきまーす」
その声に皆が箸を持つ
「そうそう、さっき電話があって寛臣がこっちに来るそうよ」
「寛臣って?」
「俺の双子の兄貴だよ。両親に育てられた」
「あー…」
紫穂は過去に聞いた話を思い出す
悠稀の両親、階堂家は都会に住んでいる
生まれつき重度の喘息を持っていた悠稀は都会の空気が合わず田舎の祖父母、仁科の家に預けられたのだ
「まぁ兄貴って言っても会ったことはないけどな」
「お前の両親だったら来させなかったよ。こっちに預けに来て以来一度も連絡さえよこさなかったんだからね」
おばあちゃんは腹立たしげに言った
「でも寛臣に罪はないからね。悠稀と同じで大事な孫だから」
「おばあちゃん…」
「とにかく紫穂ちゃんも心良く迎えてやってね?」
「分かったわおばあちゃん。ところでその寛臣さんはどれくらいこっちにいるの?」
「さぁ、1週間くらいとは言ってたけど…」
「そう。じゃあ奥の客間掃除して風通しとかないとね。あと布団も一回干さないと」
紫穂はいつもと違う日常に少しワクワクしていた
「お前はしゃぎ過ぎんなよ?」
「大丈夫だよ」
心配そうに言う悠稀に紫穂は微笑んだ
「それより午後から買い物連れて行って欲しいんだけど…」
「ああわかった。昼飯食ったら出かけよう」
「ありがと」
「…あいかわらず仲がいいな?」
「そう?」
「そうだよ。とっとと結婚したらいいのに」
おばあちゃんが茶化すように言う
「ばあちゃんに言われなくても時期みて結婚するよ」
「え…?」
驚いたのは紫穂である
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