[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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13.サラサの危機

5

「あいつらにはちゃんと説明したよ」
「…」
「言いふらすつもりもないし、お前を国や貴族に渡す気もないらしい」
「…そう…」
「まぁどっちかと言えばお前の料理が食えなくなる方がイヤっぽかったけどな」
半分呆れたようなレイに思わず笑ってしまう

「とにかく、今日はゆっくり休んでろ」
そう言いながらベッドから出るレイの腕をとっさにつかむ

「どうした?」
「…レイのそばがいい…」
わがままだとわかっていた
でもレイの温もりを感じていたかった

「ダメ…?」
声がひどく震えた

「…そんな甘え方されたらちゃんと応えないとな」
からかうような言葉なのにその目はどこまでも優しい
恥ずかしさに顔が熱くなるのがわかる

「でも服は着替えないとな」
引き裂かれたままの服は確かにいただけない
適当に見繕って取ってきてくれた服に着替えると気分的にも楽になった
私を抱き上げたままリビングに移りソファにおろされる

「飯どうするかな…」
「大丈夫」
私はインベントリから取り出した料理を並べる
ストック料理は結構豊富にそろえてある

「…そういう奴だったな」
苦笑交じりに言われた

「でも助かる。飲み物だけ取ってくるよ」
レイはそう言ってキッチンでお茶を淹れてきてくれる

「ありがと」
手渡された暖かいお茶を飲むと体の中が少し暖かくなる
血がまだ足りていないためか少しボーっとしたりふらついたりするものの体調的にはさほど悪くないようだ
レイはこちらを気遣いながらも大量に並んだ料理を平らげていく
その姿を見るのが好きだと改めて思う

「どうした?」
「え?」
「何笑ってんだ?」
無意識のうちに表情に出ていたようだ

「レイがそうやっておいしそうに食べてくれる姿見るの好きだなーって思っただけ」
「…」
レイは聞くんじゃなかったとでも言うように視線を逸らす
耳が少し赤い

「照れてる?」
「黙れ」
会話になっていないなーと思いながらもこれ以上言えば返り討ちにあうことが分かっているのでやめておく

食事の後本を読もうと思ったら取り上げられた
「お前は横になってろ。嫌なら上に戻す」
言葉はそっけないのに心配してくれているのが伝わってきた

素直にレイの膝を枕にして横になると、自分でもよく本を読もうと思えたものだと驚くほど簡単に睡魔に襲われていた
そのまま夕方まで眠り続けたおかげか翌日には普段通りの生活を取り戻すことができた
でもこのあとレイに異変が起きるなんて予想もしていなかった


スタンピードから数日経ち、私の体調もすっかり元通りになっていた
でもレイだけは少し変わった

「ねぇ」
自分を抱え込む手に触れながら声をかける
「ん?」
「今日も依頼、受けないの?」
「ああ」
レイは頷きながら背後から私の肩に顔を埋める

あの日からレイは可能な限り私を抱きしめている
「傷も治ったし、体調も元に戻ったよ?」
「分かってる」
そう答えながらも離そうとはしない
こんなやり取りも既に数えきれないほど繰り返していた

「一体どうしちゃったの?」
「…」
「ねぇレイ?」
私はレイの手を外しレイと向き合うように体の向きを変えた
そこには少し強張った顔がある
その目にあったはずの光がいつの間にか消えていた
虚ろなその目が現実逃避した人間の目だと理解するのに時間はかからなかった
どうして…?
あの次の日は何ともなかったはずだ
でもその後はずっと背後から抱きしめられていたせいで全く気付かなかったのだ
レイの頬に触れるとその手がすぐに包み込まれた
「レイ…?」
そのまま甲に口づけた後解放されると頭を引き寄せられた
いつもと違ういきなりの深い口づけに戸惑いながらも必死で答える

「…んっ…は……ぁっ………」
貪るような口づけは、それでも足りないというようにどんどん激しくなる

「サラサ…!」
ようやく解放されたかと思うと強く抱きしめられる
その手が少し震えているのがわかる
一体どうしたというのか…
私は一旦立ち上がるとレイの頭を抱えるように抱きしめた
レイは縋るように手を回し私の腰を引き寄せた

「どこにもいくな…」
その言葉はかすれるような声で吐き出された
「この温もりを取り上げないでくれ…」
レイの腕に力がこもるのが分かった

「あんな思いはもう嫌なんだ…」
その言葉に思わず抱きしめる腕を強めた

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