【完結】悪役令嬢に○されそうです。助けてください。

夢病マッキー

文字の大きさ
48 / 60

名付け方法

しおりを挟む
告白が失敗した時特有の地獄のような沈黙の中、私は動く。

「あの、私ちょっと行きたいところがあって...。サルバドールさんはここで待っててください!」

そう言い残し、私は足早にその場を離れる。

私は別に行きたい場所なんてなかった。ただ、あの空気から逃れるためだ。それはサルバドールさんも気付いているだろう。

私はとりあえず、あの噴水へと戻った。

そこには予想通り、おじいさんがいた。

私はとにかく誰かと話したかった。必死に気を紛らわせるために。

「まだ見てるんですね」

覇気のない声で幽霊のように囁く。

「おお、さっきのお嬢さんか。何、別に見てはいない。ただぼんやりとしてただけだ。老ぼれにすることなんてあんまりないんだよ」

お爺さんはまっすぐ前を向きながら自分を卑下する。

その姿からはあまりオーラを感じなかった。

「どうしたんだい。何か用か?」

「え、そうですね。何かマリアのことについて知っていたりします?」

何も考えずに話しかけたので、特に用はなかった。

私は咄嗟にそれっぽい質問をした。

「マリアちゃんか。まあ、あの子はいい子だろうな。スタイルも良く、顔立ちもいい。頭も良く、礼儀正しい。絵に描いたようなお嬢様だな」

「へぇ、そうなんですね」

私は興味なさげに相槌を打つ。

やっぱり知らないんだ。他の人たちは何も。

マリアの裏の顔を知ったらみんなはどんな反応をするんだろう。

まあ、どうせ言っても全く信じられず、私がこの国から迫害されるんだろう。

私はどこか諦めたような妄想をした。

私をあんな目に遭わせた人が、世間では褒め称えられているのが、やっぱり気に食わない。

私はこのお爺さんに少しマリアの裏の顔を仄めかしてみた。

「それって本当なんですかね?実は裏では酷かったり、なんてオチもよくありますよね」

私はできるだけ悟られず、あくまで机上の空論だと言うことを意識させた。

「そうだろうか。まあわしはどっちでも構わんよ。元々あの一家にあんまり興味がないもんでな」

思ったよりもノータッチだった。

私はもっと攻めれると思い、より確信をついたことを言ってみた。

「私、聞いたことあるんですけど、あの一家が住む館に地下の牢屋があるらしいですよ」

あくまでも噂。単なる妄想だと思わせる。

「牢屋か。あれだけ金を持っていたら、そんなこともしかねないか。お嬢さん、あんたすごいあの一家のこと知ってそうだな」

興味のなさそうなお爺さんが急に私に質問という名の鋭いナイフを突きつける。

「え、そんなことないですよ。ただ噂や都市伝説が好きなだけですよ」

私は必死に誤魔化す。分かりやすく目が泳いでいるのが自分でも確認できた。

「そうか。じゃあこれは知ってるか?」

「なんですか?」

お爺さんが急に乗り気になり、声のトーンが上がる。

「あの一家の名付け方法を」

「知らないです」

名付け方法?そんなの知るはずがない。
ただ少し興味はあるので私は話に集中した。

「あそこ、先祖代々から男が生まれたらこんな子になってほしいと言う願掛けで、意味のある言葉をそのまま付けてるんだ」

「意味のある言葉?」

「そう、例えばあそこの主人の名前。名前はビリオンだ。名の通りすっかり金持ちになりやがったよ」

あいつの名前はビリオンだったんだ。

あの極悪非道の大犯罪者。

私は名前を聞いて思わず拳を強く握りしめた。

あれ?よく考えたら長男の名前はミミック。ミミックって確か、「真似る」とか「似せる」って意味があった気がする。

その通り彼は変装が上手かった。

でも子供に願掛けでミミックなんてつけるのかな?

ふと、疑問に思ったがそんなことはどうでも良かった。

「あ、そうなんですね。しっかり実現してるってすごいですね。

では、また結婚式で会いましょう」

「ああ、じゃあな」

十分に話し、心が満たされたので私はお爺さんとの会話を切り上げた。

でも、何かがずっと引っかかっていた。

けどその原因もわからず、私はサルバドールさんの元へ向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。 破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。 しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。 外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!? さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、 静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。 「恋をすると破滅する」 そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、 断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています

月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。 しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。 破滅を回避するために決めたことはただ一つ―― 嫌われないように生きること。 原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、 なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、 気づけば全員から溺愛される状況に……? 世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、 無自覚のまま運命と恋を変えていく、 溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。

処理中です...