28 / 34
本編
危篤
しおりを挟む
後少しで、目的地に到着するというのに、ちょっとウトウトしていたようだ。
『ん?』
着信があったことに気づいた。唯からかと心躍らせたが、姉からの着信だった。
複数回の着信だったので、急用なのだと思い、デッキに出て姉に電話をした。
「あんた今、どこ?」
「あ!出張で新幹線の中、何度も着信あったけど、急ぎ?」
「急ぎよ! 母さんが危篤だって、病院から連絡が来たの。あんたにも着信入ってると思うけど。」
たしかに姉の着信より前に見慣れぬ番号からの着信があった。
それ以上に姉からの着信履歴が多くて、あまり意識せずに姉に電話をした。
「それで、帰って来れないの?」
「あ、大丈夫、一旦、先方に連絡を入れて延期してもらう。東京に戻ったら、また連絡入れる!」
先方・・・。これは嘘だ。
実は仕事を終えて、明日は休暇を取り、唯に逢いに行くのだから、先方は、、、“唯”しかいなかった。逢えるかわかかない状況で、新幹線に乗ってしまった罰なのか。。。
ただ、次の駅はもう“新大阪”。
とりあえず、読むか読まないかわからないけど、唯にメールを打った。
『ごめん!今、新幹線で次が新大阪なんだけど、母が危篤と連絡が入ってしまったので、折り返して東京に戻ります。やっと、唯の近くに来たのに、、、。本当にごめん。帰りの新幹線の中からまた、メール入れます。』
明らかに自分が動揺しているのが、自分でもわかった。
“母が危篤。”
父が蒸発してからずっと、姉と僕を育ててくれた母が今、意識を失っている。
『母ちゃん、とにかく僕が病院に着くまでは、頑張ってくれ!』
今を思えば、病院からも回復は見込めず、衰退の一途だと言われていた。
それでも、頑張って自分の口から食事をとり、声にならない声で相槌を打って、見舞の度に笑顔で接してくれた母。
“もう会えなくなるのか。。。”
そんなことが頭をグルグルしていた。
まもなく新幹線は新大阪駅に到着した。駅員に折り返す旨を伝えて、発券してもらえば良かったが、僕は一旦、改札を出た。そして以前、仕事でバスをチャーターした際に発着所にしたひと気の少ない出口へ向かった。
『よし、ここだ。』
手荷物預かり所に入り、そそくさと新幹線乗り場に戻り、東京行きの新幹線に乗り込み、姉にメールを入れた。
『今、東京行きの新幹線に乗った。PM21:36に東京駅に着きます。そのまま病院へ向かいます。
今、母ちゃんの状態はどう?』
『さっき私も病院に着いたところ。今は、ちょっと落ち着いてるみたいだけど、時間の問題だって、先生が言ってた。』
『わかった、東京駅からタクシーで向かいます! 姉さんも落ち着いて対応してください。』
『了解。でも、母ちゃん。。。』
『動揺する気持ちはわかるけど、僕たちも母ちゃんも出来ることはしたんだから、大丈夫だよ。では、また後で。』
明らかにテンパっている姉の姿が目に浮かぶようだった。全てに全力投球する姉にとって、母の危篤を見届けるのは地獄のような時間だと思う。でも、その動揺は意識を失っている母にも、空気で伝わってしまう。
“姉さん、落ち着いて!”
と心で願うしかなかった。
母と姉の件を自分の中で消化し、次は“唯”だ。
自分としても母を思う気持ちに少しだけ蓋をして、唯にメールを打った。
『唯、本当に今日はごめんね。今、折り返しの東京行きの新幹線に乗ったところです。僕が大阪へ行く!と言ってから、何もレスがないけど、きっとメールは見てくれているものだと思って書いています!』
東京に戻れば、母のことでバタバタするだろう、だったら、ここで伝えるべきことを整理して伝えなくては、、、そう思った。
『もし、今、このメールを見てて、新大阪へ行けるのなら新大阪駅に行ってください!』
僕は唯にお願いを投げた。
『ん?』
着信があったことに気づいた。唯からかと心躍らせたが、姉からの着信だった。
複数回の着信だったので、急用なのだと思い、デッキに出て姉に電話をした。
「あんた今、どこ?」
「あ!出張で新幹線の中、何度も着信あったけど、急ぎ?」
「急ぎよ! 母さんが危篤だって、病院から連絡が来たの。あんたにも着信入ってると思うけど。」
たしかに姉の着信より前に見慣れぬ番号からの着信があった。
それ以上に姉からの着信履歴が多くて、あまり意識せずに姉に電話をした。
「それで、帰って来れないの?」
「あ、大丈夫、一旦、先方に連絡を入れて延期してもらう。東京に戻ったら、また連絡入れる!」
先方・・・。これは嘘だ。
実は仕事を終えて、明日は休暇を取り、唯に逢いに行くのだから、先方は、、、“唯”しかいなかった。逢えるかわかかない状況で、新幹線に乗ってしまった罰なのか。。。
ただ、次の駅はもう“新大阪”。
とりあえず、読むか読まないかわからないけど、唯にメールを打った。
『ごめん!今、新幹線で次が新大阪なんだけど、母が危篤と連絡が入ってしまったので、折り返して東京に戻ります。やっと、唯の近くに来たのに、、、。本当にごめん。帰りの新幹線の中からまた、メール入れます。』
明らかに自分が動揺しているのが、自分でもわかった。
“母が危篤。”
父が蒸発してからずっと、姉と僕を育ててくれた母が今、意識を失っている。
『母ちゃん、とにかく僕が病院に着くまでは、頑張ってくれ!』
今を思えば、病院からも回復は見込めず、衰退の一途だと言われていた。
それでも、頑張って自分の口から食事をとり、声にならない声で相槌を打って、見舞の度に笑顔で接してくれた母。
“もう会えなくなるのか。。。”
そんなことが頭をグルグルしていた。
まもなく新幹線は新大阪駅に到着した。駅員に折り返す旨を伝えて、発券してもらえば良かったが、僕は一旦、改札を出た。そして以前、仕事でバスをチャーターした際に発着所にしたひと気の少ない出口へ向かった。
『よし、ここだ。』
手荷物預かり所に入り、そそくさと新幹線乗り場に戻り、東京行きの新幹線に乗り込み、姉にメールを入れた。
『今、東京行きの新幹線に乗った。PM21:36に東京駅に着きます。そのまま病院へ向かいます。
今、母ちゃんの状態はどう?』
『さっき私も病院に着いたところ。今は、ちょっと落ち着いてるみたいだけど、時間の問題だって、先生が言ってた。』
『わかった、東京駅からタクシーで向かいます! 姉さんも落ち着いて対応してください。』
『了解。でも、母ちゃん。。。』
『動揺する気持ちはわかるけど、僕たちも母ちゃんも出来ることはしたんだから、大丈夫だよ。では、また後で。』
明らかにテンパっている姉の姿が目に浮かぶようだった。全てに全力投球する姉にとって、母の危篤を見届けるのは地獄のような時間だと思う。でも、その動揺は意識を失っている母にも、空気で伝わってしまう。
“姉さん、落ち着いて!”
と心で願うしかなかった。
母と姉の件を自分の中で消化し、次は“唯”だ。
自分としても母を思う気持ちに少しだけ蓋をして、唯にメールを打った。
『唯、本当に今日はごめんね。今、折り返しの東京行きの新幹線に乗ったところです。僕が大阪へ行く!と言ってから、何もレスがないけど、きっとメールは見てくれているものだと思って書いています!』
東京に戻れば、母のことでバタバタするだろう、だったら、ここで伝えるべきことを整理して伝えなくては、、、そう思った。
『もし、今、このメールを見てて、新大阪へ行けるのなら新大阪駅に行ってください!』
僕は唯にお願いを投げた。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる