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side.3
しおりを挟むイーサンは気分が悪かった
公爵という地位のある家の娘であるにも関わらず、
自分の事を名前で呼ぶ目の前の、
やたら香水の香りがキツい女
そして露出の多い派手なドレス
貴族社会のマナーを何も知らないのか…?
唯一の救いは、隣にあるエラの気配だけだった。
「ところで、あなたがイーサン様の専属騎士?」
公爵令嬢がエラを横目で見る
なんて偉そうで無礼な態度だ…今すぐ追い返してしまいたい
だが、父からの『何か企みがあるかもしれない』という言葉を思い出し、
己を制する。
「私ぃイーサン様と、2人っきりでお話がしたいです!」
両手で頬杖をつきこちらに上目遣いをしてくる令嬢
2人っきり…なるほど、だから最初から護衛も付けずにやって来たのか
自分と2人きりになる為に。
目的が何であれ、狙いは僕だ
…彼女を危険な目に遭わせる訳にはいかない
訝しげに令嬢を見るエラを、一目見るイーサン
「…参りましょう」
「やったぁ!」
庭園を歩くイーサンとロリエッタ令嬢
「イーサン様?わたしの話聞いてますぅ?」
猫撫で声でこちらを覗き込む女に鳥肌が立った
「申し訳ない。考え事をしていた」
「それって、あの専属騎士の事ですか?」
「…は?」
「女性が騎士だなんてはしたないですよね~
しかも、淑女が家を継ぐなんて…
余程剣がお好きなのね!野蛮ですわぁ」
この女は…どれほど僕の神経を逆撫ですれば気が済むのだろうか
何も知らないくせに、彼女がどれ程の覚悟で家を継ごうとしているのか
怒りで小刻みに震えるイーサンは拳を握りしめた
女の話を右耳から左耳へ流し、何も考えずに足だけを動かしていた
気が付くと、人気のない庭園の端まで来ていた。
「…随分歩いたようだ。門までお送りしよう」
一刻も早くこの女から離れ、エラと茶を嗜みたい
グイッ
突如、令嬢に腕を引かれ、
向き合う姿勢に身体の向きを変えられた
「イーサン様…ごめんなさいねっ」
しまった…
その瞬間、頭上から殺気を感じた
しかし反応が遅かった
視界の隅に黒いマントに身を包んだ男が見えたが、
避けきれない
こんな時も脳裏に過ぎるのは
愛しいエラだけだった…
死を覚悟したイーサン
しかし、目の前に現れたのはライラック色の髪と
特徴的な赤色の騎士団の制服
「陛下っ!!!!!」
エラが僕を庇った…?
突然のことに身体が動かないイーサン
「エラっ!!!!!」
やっとの思いで声を絞り出した
華麗な剣さばきで刺客を制圧し、自慢の腕力で自分の体の2倍はある男を押さえ付け
イーサンに向ける温かく、優しい眼差しとは一変、
鋭い眼圧でこの事態を招いた不届きな女を睨みつけるエラ
城の護衛達が2人を連行するのを見送るエラの頬には
赤い汁が滴っていた…
「陛下、お怪我は…」
咄嗟に彼女を抱き寄せた
混乱する彼女を腕の中に収め、ぽろぽろと心の内が漏れ出るイーサン
「っつ…」
「すまない!…痛むか?」
急いで城へ戻ったエラとイーサン
エラは『城医に診てもらいます』と言い離れていこうとした
そんな彼女の腕を掴み、自分の部屋へと連れて行った
不慣れな手つきだが丁寧に、丁寧に
優しく血液を拭き取り、消毒をしてガーゼを貼るイーサン
愛する人に傷をつけてしまった…
何か起こると分かっていたのに、守りきれなかった
そんな僕の心を見透かしたように、
温かく優しく微笑むエラ
「私は貴方の専属騎士です。
剣となり盾となる存在。
こんなかすり傷、どうと言うことありません。」
「…エラ」
そっと、優しく…優しく
今、手にある彼女の温もりを確かめながら
「好きだ、エラ」
愛しい人に愛を告げる。
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