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序章 プロローグ 始まり……。『ウィズ ファントム ハート』

朝……。

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「ふぅ……。疲れたわ……」





「えっ……?」





 俺のトランクスの中の幽かすかな温もりが消えると同時に、アレなはずの彼女の言葉と吐息が、俺の耳もとにかかった。 

 壁側を向いて布団に潜っていた俺は、すぐさま後ろを振り返る。





「いない……」



 

 さっきまで、俺の後ろの背中に感じていた朧気おぼろげなアレなはずの彼女の存在感。

 布団の中の温もりは確かめるまでも無く、俺ひとりだけのものだった。





「なんだったんだろう……?」



 

 本来ならば、身も震えるような出来事のはずなのに、なぜか俺の気持ちは温かくて切ない。

 俺は、自身の頬を伝った涙の跡を拭い「フフ……」と、笑う。





「ありがとう……」





 俺は、そう呟いて目を閉じると、ほどなくして眠りに落ちた……。







♧◇♤♡







「おっはよー!!」





「わっ……!?」





 朝、目覚めると俺の視界いっぱいに広がる、可愛いアレなはずの彼女の笑顔。

 あまりにもドアップに迫るアンビリバボーな衝撃に、いきなり朝から胸のドキドキが、止まらない。





「心臓が、飛び出るかと思ったよ……」





「びっくりした?」





 もう消えてしまったのかと思ったアレなはずの彼女。



 夜中の様子とは打って変わって、天真爛漫なアレなはずの彼女が、くるくる踊りながら俺の方へと振り返り、パッと笑顔を輝かせる。





「びっくりしたよ。もう消えちゃったのかと思ったよ」





「ウフフ……。そんなワケないじゃん?」





 それにしても、夜中のアレなはずの彼女とは、明らかに様子が違う。





「なんか…。キャラ変わった?」





「えー? 普通だし。そんな違うかな? ま、アレは夜中だったし。演出ってヤツ? あの方が、雰囲気出るでしょ?」





「……まあ、そうだね」





 なんとなく嬉しい。って言うか、嬉しい。

 アレなはずの彼女だし、「もうアレっきりかな?」って、思ってたから尚更なおさら。





「そうそう。朝から仕事でしょ? 早く用意して行かなきゃ」





「ん?……まあ、そうだけど。もしかして、ついて来るの? (って、この場合、憑いて来る……になるのか?)」





「アハハ……。バレた? だって、暇なんだもん」





「仕事中は、邪魔しないでよ?」





「はーい」





 アレなはずの彼女と俺は、そんな不思議な会話の遣り取りをしながら、朝の支度をする。

 アレなはずなのに、彼女と普通に会話できてる自分が、不思議だ。





「用意できたよー?」





「おぅ。って、え……!?」





 俺が、アレなはずの彼女の方を振り返ると、フリフリのメイド服仕様に着替えている。





「き、着替えなんか出来るの? ど、どうやって……」





「へっへー。驚いた? イメージだよ。イメージ! こんなの着てみたかったんだ……。憧れ。」





「ふ、ふーん……。に、似合ってるよ? か、可愛いね」





「ヤッター!!」





 そんな風にして……俺とアレなはずの彼女との日常が、始まった。

























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