パワード・セブン

絶対に斬れない刃

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第二章

パワード・セブン 第五話

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「忍者・・・・・・・・ですか・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・流派については分かりませんが。・・・・・・・・・・・少なくとも身体スペックから判断しますとそう言えるのでは?」
「まぁ、飛んだり回転したり分身したりできる武道の流派については俺は知らないな。喧嘩とかも売られたりとかもされないし。」
今朝起きたことを教室に着いてから、ルナと話していた勇一であったが、話す話題が話題だからか、話に気になったであろう洋子は二人に寄ってくると、ルナの話した言葉に推測を言った。洋子が話す通り、鉄也の教えに元になったものには流派などといったものはないように感じた勇一は自分自身の考えを言った。武道などであれば少なくとも『なんとか流』などという流派が存在するはずだが、鉄也は『なんとか流』などの流派に関する事は一言も話してはいない。
まぁ、流派は存在はするかもしれないが、流派を隠すことによって成り立つ流派もあるのかもしれない。自身のルーツを隠すことによって成り立つというのも武術という刃を心のうちに隠すという『忍び』だと言えるのかもしれない。そこのところは勇一は何も知らないので何も言えないのだが。
「にしても、暇じゃないのかねぇ・・・・・・・・?朝っぱらからだぞ?」
「いえ、暇だから、かもしれませんよ?」
「嫌だねぇ、それ。」
「・・・・・・・・・・・暇つぶしに、ですか。・・・・・・・・・・確かにそうですね。」
「父さんがいたから、俺は相手しなかった、というより出来なかったんだが。暇つぶしの為に相手するっていうのも嫌な話だぜ。ロボットよりも小さい人間だぞ?」
「・・・・・・・・・・・・・だったら、そう言ってもおかしくはありませんが。」
ねぇ・・・・・・・。ま、か、そうじゃないかって訊かれると、そうじゃないわけなんだけどな。うちは父さんがだし。」
そんなな父親の手塩に掛けた息子がなのだから、世の中変に回ってるな、と勇一は思っていた。そう思っていると、今朝方ルナが鉄也に話していた話をふと思い出した。
「そう言えば、ルナ。一つ訊いていいか?」
「はい、。スリーサイズと体重、その二点以外であればお答えしましょう。」
「いや、それは訊こうとは思ってはいないさ。それに訊かないしな。」
「それでは、何でしょう?」
「ああ。父さんにも言ってたことなんだが、『パワード・セブン』ってのが、だってのに確認したいんだが。」
「それについては簡単に説明できます。」
こほんと軽くルナは咳払いをして、姿勢を正す。
「『パワード・セブン』。元は低烈度紛争LICという言葉が世に広まり、テロリズムに対抗して生まれた強化服パワード・スーツのプランの一つです。」
「『パワード・スーツ』?」
「ええ。当初は、対LIC兵器のプランとして、『パワード・スーツ』から始まり、『パワード・ア・マー』、そして、として開発された『パワード・ギア』。それらが計画されていたみたいですが、計画者である研究者が突如としていなくなり、『パワード』兵器の企画は頓挫した。」
しかし、とルナは言葉を続ける。
「政府は対『パワード』兵器である『パワード・ギア』の確立できないのであれば、他の『パワード』兵器を作ればいい、と考えたわけです。」
「それが、『パワード・セブン』ってわけか。」
「『パワード・セブン』は国に属してはいないので、正確には違うと言えるでしょう。少なくとも、自衛隊などと言った何かしらの部隊に属すれば、『パワード』兵器と言えるでしょうが。」
「だったら、?」
は兵器として、にはいません。にいます。少なくとも私は貴方と共に居ます。貴方がと言うのであれば、そうなのでしょう。ですが、私は貴方の口からはというお言葉は聞いてはいません。」
「・・・・・・・・いや、言わないさ。言いもしない。・・・・・・・・きっとな。」
ないとは勇一は言わなかったのだが、ルナと洋子はそうですか、とどこか納得しているように言っていた。
「・・・・・・・・そういうと、もそうであると言えるわけですか。・・・・・・・・ですが、なぜのでしょうか。」
「訊いてもいいか?」
「お父上にも言いましたが、まぁ、いいでしょう。事の始まりは航空機が撃墜されたことから始まります。」
ルナが話す言葉に勇一はピンと来るものがあった。
「ちょっと待て。撃墜?たしか、航空機は父さんの術式が施されていたはずだぞ。それが堕とされただと?ってことは・・・・・・・・・。」
「八弾式分裂ミサイル。機体に命中したのは四発だったらしいですが、他の四発のミサイルが見つかっておりますので、四発は回避したとなりますね。」
「合わせたら八発だな。・・・・・・・・ってなると、父さんの言った通りに四発は避けられたか。」
勇一はあの前日に交わした鉄也との会話を思い出す。
「それが原因で撃墜された旅客機にが居合わせたということになります。だとは言え、人のは容易にできたらしいです。問題はコアだけだったそうで。そのコアの定着に悩んでいたところに、例の話が舞い込んで、その結果が今に至ると言うわけです。」
「なんだかすげぇ話に聞こえるな。」
「・・・・・・・・・・・・に聞こえます。」
現実おとぎ話なら、今聞いたぜ?それが今の結果だってなら、でも見てるか?俺は起きるけど。」
「・・・・・・・・・・・・・なら、起こしてくれますか?」
「お姫様にキスを、ってか?ハッ、冗談キツいな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・冗談、ですか。・・・・・・・・・結構、頑張ったんですが。」
「・・・・・・・えっ。」
洋子の言葉に勇一は驚いた声を出す。
そんな二人の様子を見て、ルナは咳ばらいをする。
「あながち冗談で済まないかもしれませんよ?『パワード・セブン』の起動には、七人のコアの連動がカギになります。下手をすれば、誰かの身体に違う誰かが可能性もあります。」
「その場合、どうなる?」
「さぁ?」
「さぁ・・・・・・・って、お前。」
「起きていないについての対応策について訊かれても、現実に起きていない以上は対応策を提示することはできません。提示したところで、それが間違っていた場合、貴方マスターはどうするので?」
「どう・・・・・・・って訊かれてもな・・・・・・・・・・。分かんねぇな。」
ルナの質問に勇一は少し悩んで答える。実際に起きてしまったときに、対応策と提示されいるモノを解決できなかった場合、どうするかなどそんなことは勇一には分からなかった。事前に知ったからと言って実際に起きた場合に対処できるかなどというのは分からない。鉄也の言葉をふと思い出す。

『対応策というモノは実際に起きた場合に対する最良ベターなモノであり、最高ベストなモノではない。一番いいモノは、最良ベターとされる解答を独自のアレンジを加えて最高ベストの解答にすることだな。今の世の中、最良ベターなモノでは飽きが来ているからな。今を生き抜くためにはどうやって最高ベストのモノを編み出すかがカギとなっている。・・・・・・・・生き抜くには難しい世の中だな。』

独り身だと大変だぞ?と言っていた父の顔を思い出す。そんなことを思っていた勇一の顔を見て、ルナはふっと勇一に対して微笑んでみせた。
「大丈夫ですよ。貴方の傍には私がいます。そうなった場合、どうにかするのは貴方マスターがするべきことではありません。」
ルナの言葉に勇一はハッとする。男としてそれはどうなんだ、俺は男だろう!と心の中で自身を激励する。
「だとしても、だ。お前は最良ベターなモノを提示してくれればいい。最高ベストにするのは俺の仕事だ。」
「・・・・・・・・・・・・・・勇一。・・・・・・・・・・急にどうしたのですか?」
「いや、なに。ちょいとな。」
洋子の質問に二カッと勇一は笑いみせた。

『勇一。お前も男だろう!?そんな意地も根性もないのなら、お前はなんだ!?男なら意地があるだろう!?譲れないモノが!!この胸の中に!!私に見せてみろ!!それも出来なければお前は男ではないぞ!!』

少し昔のことではあるが、父の修行において言われたこととその場面を思い出す。他人に言うのは少し恥ずかしいが、あの時のそれがあったことで柳宮勇一という自身、一人の人間はだいぶと勇一は思っていた。おかげで、自分の中の心の根、信念を心の中に編み出せた。だが、勇一自身は自分が自分自身であるという確証はなかった。きっと、誰かが柳宮勇一という皮を被った人間を柳宮勇一であると断言しない限りは勇一は柳宮勇一自身にはなれないな、と勇一は思っていた。だが、そう思っているからこそ、勇一は柳宮勇一という一人の人間になっているわけだが、残念ながら、勇一はそのことに気付けずにいた。
「なぁに、辛気臭い雰囲気出してるっすか、勇一。」
そう言いながら、空は勇一の肩に手を掛けてきた。勇一は空の行動に少し驚いた様子だったが、誰であるのかが分かると納得した様に空に言った。
「おはよう、空。だけど、一応言うと、俺じゃなかったらどうするんだ?」
「それはないっすよ、勇一。星川さんと洋子の二人が話せていて、しかも、星川さんが笑ってるってなると勇一だけってなるっすよ?」
「そうなのか?」
「そうっすよ。勇一以外に笑顔を向けてるってのは見てないっすからね。」
「木ノ葉さん。」
空の指摘を受けて、ルナは空に訂正を求める様に空に言う。しかし、空はルナにニシシっと意地悪い笑顔を向けると。
「それは出来ない相談っすね。それに訂正したところで、もう言っちゃいましたし。」
テヘッと舌を出して片目を閉じた顔をルナに向けた。
「なんだぁ、お前ら。朝から騒がしいな。」
軽く欠伸をしながら涼子は教室に入ってくると、勇一たちの方を見てそう言った。
「うっす、涼子!騒がしいのは当たり前っすよ!人が集まるんだから!」
「おはようさん、涼子。悪いねぇ、五月蠅くて。」
「・・・・・・・・・・・おはようございます、涼子。」
「おぉ、おはようさん。ま、人が集まりゃ、それは五月蠅くもなるか。」
「おはようございます、柊さん。否定したいですが、その通りですね。」
「おはようさん。お前も勇一こいつに忙しいみたいだな。」
背中にいる勇一を指す様に親指で勇一を涼子は指差す。
「いえ。それを言うなら、私が世話をかけているので何とも答えにくいですね。」
そう言ったルナの言葉にヒュ~と軽く口笛を吹く。
「世話を見るのが見られるってのはそりゃ笑えるな。」
「何もできないお前が言えることじゃないぜ?」
「おいおい、勇一。明日食べる飯位はどうにか出来るぜ?」
「涼子。、出来ないと言ってるのも同じっすよ・・・・・・・。」
勇一の言葉にどこか対抗してか胸を張りながら、さも当然だと言う様に涼子は言ったが、空は涼子の言葉においおい、と言う様に意見を言った。
「おはよう。あら、五人も集まってどうしたの?」
そんな風にしていると、また一人、新たに話に加わって来る。
「おはよう、風音。いや、話してたらいつの間にか。」
「おはようっす、風音。」
「・・・・・・・・・・・おはようございます、風音。」
「よう、風音。」
「おはようございます、青野さん。」
「ええ。おはよう、星川さん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい。」
風音の言葉に涼子は怒気を含ませた声で風音に言った。だが、風音は涼子の方を見向きもしなかった。
「涼子。落ち着け。気を落ち着けるんだ、そう、のどかの様にのんびりと。」
「のどかの様にって、そりゃのんびりしすぎだろうが。舐めてんのか、おい。」
勇一と涼子の二人がそんなやり取りをしていると、また誰かが加わって来た。
「呼ばれて~出てきて~ジャジャジャジャ~ン。」
そんな気の抜けた声を出していたのは噂となっていた当の本人、のどかであった。
「おぅ、おはよう、のどか。」
「うっす、おはようっす、のどか。」
「・・・・・・・・・・・おはようございます、のどか。」
「おはよう、のどか。」
「よぅ、のどか。起きてるか?」
「おはようございます、十九野さん。」
「みんな、おはよう~。朝から元気だねぇ~。」
呑気に言うのどかのセリフに勇一は言った。
「いや、朝の一番から相手したんでな。」
「え~、『ハガネイラー』の四人~?大変だねぇ~。」
「父さんが相手したよ。」
「あれ?鉄也さんがっすか?確か、海外とか言ってませんでしたっけ?」
「空。鉄也さんが一日で帰って来れないわけないでしょう。」
「そうっすね。鉄也さんが帰って来れないわけないっすもんね。これは迂闊。勇一、すまないっす。」
「いや、の反応だから、謝らなくてもいいぞ。」
と勇一は空の謝罪に気にしない様にと言葉を継げたした。とは言っても、空の反応がなのだ。いくら時差があると言っても、距離があって遠いのだから、いたらおかしいのだ。それを鉄也だからと納得してしてまうのも問題だとは思うのだが。
「あれ、そう言えば、翼は?」
「そういや、いないな。またどっかで道草食ってんじゃねぇのか?」
空の疑問に涼子は答えるように言った。しかし、涼子の言葉も確証を得たうえで言った言葉ではなく、あくまでも推測の言葉だ。
そのとき、外で大きな爆音が聞こえた。


















「なんだ!?」
「なんっすか!?」
「なに!?」
「ったく朝から騒がしいのはアタシらだけじゃねぇってか。」
「・・・・・・・・・・・・面倒な。」
「どうしたの~?」
何事かと互いに言う勇一たちとは裏腹に、喧嘩っ早い涼子はニヤッと口元を歪め、洋子はこれから起こるであろうという推測を導き出して面倒だと言った。そんな五人の様子と違って呑気に訊くのどかの声で緊張が走った場の雰囲気がほんやかと柔らかなものへと変化した。
。状況から判断しますに、です。」
そんな風に柔らかくなった場の空気を引き締める様にルナは言った。
「『ハガネイラー』か?でもよ、父さんが相手したんだぞ?」
「言ってる場合かよ。現場の状況に『でも』とか『しかし』とかは関係ねぇ。起きちまってる以上は仕方ないだろうが。」
勇一の疑問に涼子が答えたその時、外から窓が揺れるほどの音量で言う声が聞こえる。
『そう。その通り!を倒せと生徒が言う!その声に応えまして、「ハガネイラー」!ただいま、推参!相手になりますわ、「パワード・セブン」!』
『流石ですわ、宮子様!特に生徒たちが言ってはなかろうとも、言ってしまえば合法になりますわ!にお気付きになられるとは、流石です!』
『そんなつもりは特にはなかったのだけど。・・・・・・・・「パワード・セブン」!早く現らなければ、どうなるか!分からない貴方ではないでしょう!!』
外から聞こえる宮子たちの声に、どこかが触れてはいけないところに触れてしまったのか、涼子は外に出ようとする。だが、勇一は咄嗟に出ようとした涼子の腕を掴む。
「野郎、生徒に手を出そうってか!そうはさせねぇ!」
「待て、涼子!外に出たとこで何ができる!」
「少なくとも何もしないよりかはマシだ!放せ、勇一!」
「待ちなさい、涼子。」
涼子はそう言って勇一の手を振り払おうとした時、風音が涼子に語り掛ける。
「勇は貴女一人で何ができるのかを訊いてるのよ。その質問に応えないで外に出たところで、無駄だとは思わない?」
「はっ、だったら、何も持たない生徒たちが危険に晒され様が気にしねぇってか。その方が嫌だね!何もせずにただやられるってのは好きじゃねぇ。あの一体くらいぶっ潰してやる!」
「この前、何もできなかったのに?」
「例えそうでも、何かは出来る!」
「待つっすよ、涼子。一人でするより皆でしたら出来ることはあるって私は思うっすけどね。」
風音が言いたいことを汲み取って空はそう言った。その空の言葉に勇一は頷いて涼子に言った。
「空の言う通りだ。一人でするより、皆でやった方がまだマシだと思うぜ、涼子。」
「勇一・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そうと決まれば、ぶっ飛ばそうぜ!」
涼子の肩をバンと叩いて勇一は教室の外へ出る。



















『遅いですわね。』
『そうですね。』
『学校には来ているでしょう?』
『はい、下駄箱には靴があったので、少なくとも来てはいると思いますが。』
『だったら、もう来てもおかしくはないでしょうに。』
何を思ってか宮子たちは何かを話し出す。その様子に、ハッ、と軽く笑う。
「分かってないっすね。は遅れてやって来るもんっすよ!」
「ヒーロー?誰が?」
「それはのことでしょう?」
「・・・・・・・・・・面倒ですね。」
「ま、いいんじゃねぇの?空の言う通り、遅れてやって来たし。ヒーローかどうかは別として。」
「ですね。私にとってのは貴方だけですが、皆のヒーローかと訊かれれば別でしょう。」
「勇一君、好かれてるね~。ヒュ~、のヒーロー。」
まったくこいつは、と嘆息交じりに呟きつつ勇一は目の前に立つ『ハガネイラー』を指差した。
「朝からご指名とは迷惑極まりないが、来てやったぞ、『ハガネイラー』!」
『えぇ。指名しましてよ!それでも、遅くはありませんかしら!』
「ハッ!はてめぇの都合で動いてるわけじゃねぇんだよ!」
『よろしいですわ!ちょうど新しい武装の確認をしたいんですの!』
そう言った途端に、左手を勇一たちがいる方に向ける。向けると、手のひらを広げた。その手のひらには分厚い光の粒子が塊となっているのがはっきりと見えた。
『食らいなさい!ブレイク・レーザー・カッター!!』
!」
「来い、ルナ!」
赤細いレーザーが勇一たちに向かって放たれた瞬間、ルナが勇一に向かって手を伸ばして来る。その伸ばされた手を勇一はルナに応える様に掴み取る。掴んだ瞬間にその赤細い光は勇一たちのいた場所を刈り取るように爆風で覆いつくす。
『やったか!?』
『流石に、あのタイミングでは避けられなかったでしょう。』
自信を持つように言う宮子たちであったが、爆煙が収まると、勇一の身体を覆う様に勇一を軸として渦が渦巻いていた。
『な、なんですって!?』
宮子が上げる声に応える様に徐々に渦の勢いが弱っていき、渦から銀色に塗装された鋼鉄の腕が生えて、渦を切る。とそこには勇一たちの姿はなく、銀色に塗られて太陽光を眩しく反射している金属に身を纏ったがそこにはいた。
「そうは簡単にはくたばらないぜ、『ハガネイラー』!」
『そう、その通り!そんなやわには育ってないっすよ!』
『空。そう言えるの、たぶん勇だけよ。』
『・・・・・・・・・・・・たしかにそうですね。』
『いやいや、三人とも。そこは口上言うとこじゃない~?』
『ハッ、相手はんなこたぁ構ってはくれねぇみたいだぜ!』
涼子はそう言うと、勇一の身体を、両腕のアームを外し、一つの殺戮兵器げいじゅつひんを組み立てる。
『軽く一発、いっとくか!?くたばれ!!』
「待て、涼子!気が早い!!」
『ハッ、待てねぇな!』
組み立てると、勇一の言葉には耳を貸さずにトリガーを引き絞る。
ッキィィィィィィィィィィィィン!!
甲高い高音と共に全てを撃ち抜く弾丸が『ハガネイラー』に向けて放たれる。
だが。
『無駄ですわ!プロテクション・ウォール!!』
放たれた弾丸は『ハガネイラー』を貫くことなく、左手から生まれた障壁に阻まれ、エネルギーを失い、何も力が加わらない鋼の玉へと変わり、地に落ちる。
が貴方の力ですか!「パワード・セブン」!!』
『頭に来るっすね!勇一、!』
一回組み立てた殺戮兵器げいじゅつひんを元の形へと分解し、両腕にアームを取り付けると、空は勇一の指示を待たずに、勇一の身体を空に上げる。
「待て、空!頭に来るのは俺も同じだ!」
『だったら、倒すっすよ!』
「そうは言うが、翼がいない!」
『それがなんっすか!?』
「だから、待て!」
勇一は空を落ち着かせるように言うが空は勇一の言葉に耳を貸そうとはしなかった。このままではいけない、と勇一は感じた。その勇一の思いを汲んだように、風音は空に言った。
『空、落ち着いて。今は貴女、。』
『だったら!!』
『それでも、よ。勇は皆がいなければいけない、と言ってるわ。』
『でも、それじゃ!』
『口を挟ませてもらいますが、今はではありません。言うのは勝手ですが、使のであらば、こちらにも考えがあります。聞きますか?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!』
「すまんな、ルナ。」
『いえ、お気になさらず。我が主マイ・マスターの赴くがままに。貴方の征く道こそが私の道であり、貴方が死ぬ時が私の死ぬ時です。ですが。』
そうルナの言葉が聞こえた瞬間、自身の身体を動かせることを勇一は確認し、かどうかの確認のため自分の手を握ってみた。握った時に、自身が握ったという感触が伝わった。
ではありません。』
『すまないっす、勇一。』
「気にすんな、空。誰にでもはある。」
俺の場合は父さんにしごかれてあまり出すようにはなってはないがな、と声には出さずに心の中で言った。
『アタシからも謝る。悪かった。』
「過ぎたことを謝ってちゃ、いけねぇな。謝るんなら次に生かさねぇと。・・・・・・・だろ?」
『ハッ、確かにな。そうだな、その通りだ。・・・・・・・・・鉄也さんの言葉か?』
「いや、俺の言葉だ。父さんアレンジだけどな。」
『だろうな。ああ、知ってた。』
空に上がった身体から勇一は大地を見下ろす。と見下ろして見れば、翼の手を名前をよく知らない宮子の取り巻きその二とその三が掴んでいるのが見えた。
やれやれ、と思いながらその場所に蹴りを突き入れる様に、身体を地面に降ろす。
「勇一さんっ!」
「ゲッ、『パワード・セブン』!?」
「なぜここがバレた!?」
「なぁに、お天道様にゃ丸分かりってな。・・・・・・・・・翼、来い!」
そう言うと、勇一は翼に手を伸ばした。
「はいっ!」
光る水粒を目元から零しながら翼は勇一が伸ばした手を強く握りしめた。その瞬間、翼の身体が消えて、ベルトにピンク色のランプが点灯する。
「くっ、失敗か!!」
「おのれ、『パワード・セブン』!」
「とっとどっかに行きやがれ!」
自身の身体に力が漲るような気分に浸っている余裕は今はなかったので、どこかに行くようにその二とその三に言うと、勇一は再び天高く飛び上がった。
『コンプリート。エネルギーフル。イケます。』
「了解だ、ルナ。空、一発イケるか?」
『一発とは言わず、何発でもやれるっすよ!』
そう言うと、天高く上がった勇一は身体を一回転させて、『ハガネイラー』の身体に蹴り突き入れる様に構える。
『パワァァァァァァァァァァァァァァァァァド・キックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
「一文字突きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
蹴りが突き入る前に『ハガネイラー』は左手を勇一たちに向けて突き出す。
『させませんわ!プロテクション・ウォール!!』
障壁が『ハガネイラー』を勇一の蹴りから守るように障壁が現れる。その障壁に勇一の蹴りが突き入るが障壁に阻まれて、一瞬、動きが止まる。止まった瞬間に宮子はフッと笑う。だが、次の瞬間には障壁にヒビが入り、障壁が砕かれると、『ハガネイラー』の胴体に勇一の蹴りが突き入る。
『っぐ!ですが、負けません!受けなさい!ドリル!クラッシャー!マグナム!』
『勇!』
「いや、のどか!」
『了解~。んじゃ、よ~?』
『ハガネイラー』の右拳がキュィィィィィィィィィィン!!と高速に回り出し、勇一に向かって打ち出された瞬間。その動きに合わせる様に、勇一は右拳を引き絞った。
『一撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、粉砕ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~。』
「パワァァァァァドォォォォォォォォ・パンチィィィィィィィィァァァァァァ!!ぶち抜け!!」
高速に回る撃ち出された拳に気後れすることなく、自身の拳を気合を入れて、突き入れた。突き入れた瞬間、バギッと入ると、そのままその拳は勇一の拳に打ち砕かれる。
『ぬぅ!やりますわね!』
『勇一!』
『勇一君!』
『やっちまえ、勇一!』
『ぶった切っちゃえ、勇一君~!』
『・・・・・・・・・・・・・・・・勇一っ!』
っ!』
『勇!』
、風音!」
『誰に向かって・・・・・・・・・・・・・・・ッ!』
両腕のアームが噛み合わさり、左右一本ずつの刃となり、二本の刃を振り抜くと、勇一は身体を回し始める。
「疾風怒濤ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!大回転っ、魔弾っ!」
自身の身体を回しながら、勇一の身体は『ハガネイラー』の巨大な鋼鉄の身体に向かっていく。その行方を阻もうと勇一の身体を握ろうと『ハガネイラー』はまだ無事の左手を伸ばして来る。だが、その動きを阻まれることなく勇一は身体を目にも止まらぬほどの高速に回しながら突き進んでいく。その回転を止めることが出来ずに、『ハガネイラー』の左手は細かく切り刻まれ、空中で分解し、地面に大きな残骸を落とす。
そのことに一歩、宮子は『ハガネイラー』を引かせる。だが、その時には遅かった。両腕、二本の刃が鋼鉄の胴体に触れると、左手が辿った結末を胴体も迎えることとなり、切り刻まれ形をとることが出来なくなると、大きく崩れ去ることになった。
『ハガネイラー』が崩れると同時に勇一は回転を止め、正面にある天高く上がった陽を見る。
「滅、殺っ!」
『我が刃に断てぬものなし!っていうの~?』
『だから、パクりだから。』
締まらないな、と勇一は思った。
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