パワード・セブン

絶対に斬れない刃

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最終章

パワード・セブン 第十六話

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その日の夜。
幼い時、そう過ごすことが多くなってから当たり前となっていた柳宮家には勇一の幼馴染六名とルナ、勇一の父である鉄也と勇一の九名は、小さく見えるダイニングで過ごしていた。
テレビの所有権は家主である鉄也にあるはずだが、そんなことは知ったものではないというかのようにテレビを占有している空はここ数日、もはや定番となりつつある特撮番組のDVDを借りて来たらしくDVDプレイヤーにDVDを入れて見ていた。そんな彼女と共に見ているのは涼子と風音、のどかの三人で、翼と洋子の二人はどうしようか悩む様子を見せていたが、ここ数日、誰に頼んでもいない柳宮家の家事をしているルナの手伝いをしにキッチンの方に歩いていく。
勇一はそんな彼女たちの様子を横目に見ながら、鉄也に語り掛ける。
「なぁ、父さん。一つ訊いていいか?」
「私で答えられる範囲だったら答えよう。」
そう言って答えられないことなんてないだろう、と勇一は内心そう思いながら、鉄也に訊いた。
「昔さ。どっかの空港でテロがあったみたいなんだけど。」
「ああ。」
「その時、ルナがいたみたいでさ。・・・・・・ルナはその時に俺に会ったって言ってるんだけど、覚えてなくてさ。それに、その時、父さんがいたみたいに佐藤先生から聞いたんだよね。だから、どちらかと言うと、俺じゃなくて父さんと間違えてるんじゃないかと思って確認取ろうとしたんだけど、なんか怖くてさ。その時、何があったのか教えてくれないかなぁ、なんて思って訊いたんだけど、なにか知ってる?」
「知っている。だが・・・・・・・・・、覚えていないのか、勇一?」
「全く。」
「勇一。いくらなんでもはいかんぞ。」
はぁ、とどこか落胆した様に息を吐き手を額に彼は当てる仕草をした。だが、勇一が覚えていない以上は仕方がないので、勇一は彼の言葉に対しては何も言い返せなかった。
「思い違いがあるかもしれんので、先に言っとくぞ?テロはあったが、私は何もしていない。」
「えっ、?」
「身柄の確保程度しか出来なかったが、以外は私は関与していない。・・・・・質問は?」
彼の解答に勇一は呆気にとられた。
「えっでも、身柄の確保やってんでしょ?」
「それだけだ。正確に言えば、無力化したテロリストの身柄を警察に引き渡すまでの間、確保維持に努めた程度か。・・・・・・・・だから私は何もしていないぞ?」
「いやいや、嘘言うなよ、父さん。父さんがやんなかったら誰がやったって・・・・・・・・。」
「私と勇一、お前の二人がいて、私は何もしていないとなれば、答えは一つしかあるまい?」
さも当然の様に言う鉄也に対して、勇一は何も言うことが出来なかった。
「まさか。」
「そのまさかだ。・・・・・・・お前が無力化したんだ。覚えてないか?」
「俺が・・・・・・・・?」
いやいや、そんな馬鹿な。
この世の終わりかとでも言うかのように頭を抱える勇一に対し、そんな息子の様子を微笑ましく鉄也は見ていた。
「あの時のお前は凄かったぞ。銃声が聞こえてきて叫び声とか悲鳴とか上がってるところに自分よりも強い武装をしたテロリストたちに立ち向かっていったんだから。私は、あの時に、もう勇一に教えることはない、と思ったもんだ。」
しかし。
「最近のお前からは前に感じた安心感とか頼りがいというモノが感じられん。一応、訊くんだが、どうした?」
「どう・・・・・・・って、言われても・・・・・・。」
勇一が言った言葉に、鉄也は片手で制した。
「いや、分からなければ、それでいい。私の勘違いかもしれんしな。」
だが、まぁ、なんだ。
「何かあれば、助けを求めていいんだぞ?私はお前の父親なのだからな。せめて、頼るくらいはしてくれ。そうでないと、父親としての威厳がな・・・・・・・。」
「父さん・・・・・・。」
そういう理由で頼りたくないんだけどなぁ。
「まぁ、佐藤のヤツから何か言われたのかもしれんが、あの時、テロリストどもと対峙したのはお前だ、勇一。まだ、子供のお前に責任を取らせるわけにもいかないから、書類に私がやったと偽りの報告を書いたから誰も気が付かないがな。」
ハッハッハ、と軽く笑う鉄也に、いやいや、噓の報告はまずいでしょ、と言いたくなった勇一だったが、何も言えなかった。鉄也のこうした根回しのおかげでは勇一に目を掛けることはないのだから、と思えるのだから。
「それに、言ったろう。子供のうちは私たち大人がすべきことに首を突っ込むな、と。闇の世界に生けるモノにとって光が照らす世界とは生きにくいものだが、闇の世界から光が照らす世界を脅かすモノを排除するのも、また大人の責任だ。お前ら、子供の仕事じゃない。・・・・・・・せめて、はやらせてくれ。」
「父さん・・・・・・・・・・。」
「あっ。言っておくが、私は隠居はせんぞ?せめて、お前が結婚して、孫の顔を私が見ることが出来るまで、いや、その孫たちが笑顔で過ごせる世の中になるまでは引退する気はないからな。」
いいな?と言う鉄也に勇一は、父さんらしいな、と安堵したのだった。
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