婚約者が相手をしてくれないのでハーレムを作ってみた

俺の主は婚約者を好きすぎる

護衛騎士視点。浮かんで来たので追記してみた。



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　俺の主は婚約者を好きすぎる。

「お、下ろしてくださいませ！」
「駄目だよ。はい、あーん」

　婚約者のツレンデ様を膝に座らせて、菓子を口に運ぶ。
　俺だって彼女はいるが、そんなことをしたことはない。

「お、下ろしてくださいませ……」
「はい、あーん」

　かわいそうに。顔だけでなく、耳や首筋まで真っ赤ではないか。



「ツレンデをお茶会に誘ったのに、断られてしまったよ」

　窓辺で黄昏る、俺の主。
　そりゃあそうでしょうよ。
　公爵家の薔薇園は有名だ。制限はあるものの、一般にも公開している。
　その薔薇園の中央にテーブルをセッティングして、衆目の中で茶会を開こうっていうんだから、どんな羞恥プレイですか。

「どうして僕の想いが伝わらないんだろう？」

　街で拾ってきた猫を相手に、我が主はツレンデ様のために取り寄せたお菓子を食べながら、ぼやいている。
　ネコは公爵家の料理人が作った、ヤマイノブタ百％のクッキー型ハンバーグに夢中で聞いちゃあいない。



「長期休暇はツレンデと別荘に行こうと思ったのに、断られてしまったよ」

　領地に向かう馬車の中から、主に溜め息が聞こえてくる。
　そりゃあそうでしょうよ。
　婚姻するまでは手を出さないでしょうけれど、この男と半月も同じ屋根の下で生活するなんて、ツレンデ様の精神が持ちませんって。

「せっかく人気のお店にも予約しておいたのに」

　ツレンデ様を連れてくる予定だったというのに、椅子は一つしか用意されていない。
　断崖絶壁に張り出したウッドデッキは、下の海岸からよく見える。海岸を散歩する人から小舟に乗って楽しむ人まで、多くの人から丸見えだ。
　海辺で拾ったネコは新鮮な海の幸の盛り合わせに夢中で、主の話を聞いちゃあいない。



「ツレンデに生誕祭は街に行かないか誘ったのに、断られてしまったよ」

　お祭り騒ぎの町の中を歩きながら、主がぼやく。
　そりゃあそうでしょうよ。
　あんた去年、はぐれたらいけないからと、横抱きにして歩きまわっていましたよね？
　衆目の視線を浴びていたツレンデ様は真っ赤に染まって、その内に煙をたなびかせるんじゃないかって、俺は気が気じゃなかったですよ？

「楽しいと思うんだけどなあ」

　見かけたネコに串肉を分け与えながら、主は溜め息を落とす。
　ネコに与えて余った串肉をくれるのはいいんですけどね、これ、味が付いてないんですけど？　タレは諦めますから、せめて塩を！

「ねえ？　どうしたらツレンデはもっと僕の側にいたいと思ってくれると思う？」
「過度な溺愛を止めればいいと思いますよ？」
「却下」

　俺の主は婚約者を好きすぎる
　頑張ってください。ツレンデ様。