瞬間移動がやりたくて〜空間魔法編〜

ストレットフィールド

文字の大きさ
31 / 265

第31話 逃走劇②

しおりを挟む
ドンドンドンドン

地鳴りが響く

ウォーという鳴き声はすぐ後ろに迫っている

僕らは今、緩やかな山を登っているが、魔物はもう500mもないくらいまで迫っていた

「いそげ!これを超えたらあとは坂を下れば川だ!!」

「少しブリンクで距離を稼ぎましょう!もう追いつかれますよ!」

「駄目だ!川はお前の転移で渡る必要がある!MPが足りるかわからん!」

アルは考えがあるようで、僕の提案を拒否した。

ナタリーは疲労と道中の戦闘でMPがきれてしまい気絶していた。今はアルが背負っているため歩みが余計に遅くなっていたのだ

その状態で魔物は勢いよく近づいている危機的状況になっていた

それでも元気な僕が頂上に一番に着いた時、斜め下を見下ろせば川が広がっていた。川幅は大きく長い川の様だ

頂上から川岸まで坂道で200mほどの距離なので、これでは魔物に追いつかれるのではないかと思える。

「ノエル君、弓だしてくれる?もう私も歩けそうにないから・・・ここで少しでもあいつらの足止めをするよ」

ティアが2番目に頂上に着いてそういう、その言葉はティアらしくない。

「嬢ちゃん、坊主いそげよ!」

店主が3番目についてそのまま転がるように坂を下る

アルはナタリーを担ぎながらも、そこまで遅れずに山を昇って来た。

「早く行けお前ら!」

アルは登ると同時にそう言ってくる

「私が足止めをするよ、先に行ってて」

ティアはまたそういう

「ここで言い合いする時間はない、ノエル頼んだぞ」

アルは真剣な目で僕の目をじっと見てそう言うと、坂を下っていく

下を見るともう200mもないだろう距離に魔物が迫っていた

「早く弓をだして!」

ティアが怒鳴り気味にそういう

・・・

僕はまた仲間を見捨てるか、見捨てないかの選択に迫られた

結局一人の方が楽なのはこの脱出劇で身をもって感じた

仲間がいるせいでのもどかしさも感じてそれに対して、イライラもしていた。


だけどアルは僕を信頼し、言葉は発せずともティアを連れてこいと任せてくれたのだ。僕はそれに応える為にティアに告げる

イベントリから、この道中で拾った岩や巨木を出して上から転がした。その岩たちは坂の勢いを借りて徐々に早くなっていく。

「無理です、アルに任されました。足止めはこれで十分です」

そう言って、岩が魔物に着弾する前にティアの手を握り一度ブリンクを使用し坂を下った。

「ちょっと、ノエル君!」

「大丈夫!僕を信じて!」

僕の見立てでは、川幅は300mぐらいだろうブリンク10回あれば届くはず。

今の僕は全部でブリンク12回使用できる

マジックポーションを使用すれば14回使えるのだ。移動距離としては420M

この坂から川岸まで200M、川岸から対岸まで300M

坂を少しブリンクで下ったとしても、ギリギリなんとかなるだろうと思えた。

ブリンク後に、アルのところまで走って駆けおりる。ティアも僕が絶対にこの手を離さないと分かったのか、観念した様子で坂を下る。

「アル!手を!」
そのままアルの少し前へとブリンクをして手を伸ばすと、僕の手をアルが掴む。

その時後ろから魔物が槍を投げ飛ばしてきたのを横目で見えていた。

(ブリンク!)

すぐにブリンクをして間一髪避けれたの思えたが

「ぐおっ・・・」

アルのふくらはぎに刺さっていたのだ!

そのままブリンク先でアルは体制をくずして倒れてしまった!

僕の手を離し、坂を転がっていく。

担いでいたナタリーも同じように転がり、アルとも離れてしまった。

「アル!ティア掴まって!」

両手を空ける必要があると思い、繋いだ手を離しティアから捕まって貰うように指示をする。

「うん!いいよ!」

ティアは後ろから抱き着く、身長差からか首あたりに手が回る感じになっている

僕は急いでアルの元へブリンクし、右手で腕をつかみ

ナタリーにもブリンクをして、うつぶせに倒れている背中に左手を置く

予定は少しくるってしまったが川岸まであと50mほどになっていた

店主は川岸近くまで降りているのが見えた

僕はもう一度ブリンクをして店主の少し前に降り立ち、店主に叫ぶ

「店主!」

それと同時にポーションを取り出し、一気に飲み干した

川岸を確認する、5M下に水が流れているちょっとした崖だ。

後ろを振り返ると下り坂の為、魔物の行軍速度もかなり早い。

その中で魔物から投石まで飛んできている。

はやくはやく店主・・・

そうは思うが店主も投石を喰らいながら坂道を駆け抜け・・・店主は飛んだ。

店主は後ろからダイブする形で僕の足を掴んだ!

その瞬間に僕はブリンクを使用。

そこから連続9回のブリンクで川岸まで50mほどの距離まで移動したのだ

ザッパーン!

徐々に高度を落としながらブリンクをしたが、距離を少しでも稼ぐ為にに高さ3mぐらいの上から勢いよく川に落ちた。

「ぷっは、みんな大丈夫ですか!」

すぐに水面に浮上し、周りを見るがこの川は流れが速く、通常でも泳ぐのは大変な様に感じた。

店主がナタリーを抱え浮上してくるのを確認し、ティアとアルも確認できた

皆疲弊し、気を失っているナタリー、足に槍が刺さったままのアル。両方とも泳ぐのは困難だろう

こちら側も川岸は崖の様になっていて、すぐに登れそうにないのだ

「俺はナタリーを向こう岸まで連れていく」

店主はそういい、ナタリーを仰向けにして、流されながらも泳いでいる

ティアもは一人で泳ぐのがやっとだが・・・顔を水面から覗かせている為大丈夫そうだ。

「僕がアルを連れていきます、ティアは向こう岸へ!」

アルはもう力なく、浮いている状態だったが、流れが速い為ドンドン流されて行っていた。

くそっ流される・・・いやでも思ったよりも泳げるぞ

僕はアルにたどり着き、顔をなんとか水面にあげるように泳いだ

流されながらも、僕の体は大の大人を引っ張って泳ぐことが出来き、ディティマールの能力値の恩恵を受けていた。

徐々に崖から河原のような、登れる場所になり、ティア達が先に対岸へ着いたのが見えた。

僕達もティア達よりも50mほど流された場所から陸に上がり、アルを引き釣りながら地面へ引っ張り上げることができた。

(流石にこれは疲れた・・・)

アルは軽く水を飲んだみたいだったが呼吸はしていた。僕は足に貫通していた槍を抜くと、アルは鈍い声を上げている。すかさずイベントリから店主のポーションを足に振りかける、これで応急処置は出来ているはずだ。

血は止まったようだったので安堵した

アルの顔色もよくなっていくように見え、ボソっとアルは呟いた。

「また助けられたな・・・」

その一言だけ言うと、気を失ってしまったのか目をつぶり喋らなくなる。

「・・・生きている、大丈夫か」

一応口元から呼吸をしている事を確認し、安堵から僕もそこで尻もちをついて川を確認。

魔物が川を流れている様子はない。流石にブリンクなしではこの距離の川は水棲生物でない限り無理だろうと、勢いがある川で良かったと今は思う。


しばらくするとふらふらとティアとナタリーをおんぶした店主がやってきた。

「アルフレッドは無事か?」

「はい、ポーションを使用したら寝ちゃいました」

「そうよかった」
ティアはそう言って、座り込んだ。

「緊急だったので店主の使っちゃいました。すいません」

「いや構わねーよタダでやるって、ふー・・・なんとかみんな無事だな」

店主もナタリーを背中から降ろして、寝かせた後にドカっと座る

「ナタリーも大丈夫そうですか?」

「こっちも大丈夫そうだ。気を失っているのはMP切れと疲労だろう、そろそろMPも回復して起きる頃だ」

店主はにっと笑って答えてくれた

この中では僕の次にタフなのは店主のようで、歳のわりに元気そうだ。それにアル同様に頼りがいがあり、安心させてくれる言葉をくれるのだ

ティアの方を見やると所々にキズがあり、額からも血が流れていた

僕に後ろから抱き着くようにしたのは、敵の投石から守っていてくれていたようだ

「ポーションもう一個買うので使っていいですか?」

「気にすんな、やるよ」

「ありがとうございます」

「ティア、怪我をしているようなので飲んでくださいね」

「ありがとう・・・」

やはり疲れているようで喋るのもしんどいようだ

ポーションと水、食料を出して店主とティアの前に並べた

大き目のタオルをティアに掛けた後に、ファイアで焚火をつける

ナタリーとアルの下にマットを引いて、こちらもタオルを掛けておく

「坊主その辺でいいぞ、お前も休んどけ」

手持無沙汰な僕が色々やろうとしているのを、店主は見かねて声を掛けてくる

「あっ分かりました」

ティアもナタリーの横で横になっているので、焚火近くの店主の横へ座る

それでも気になってしまうので、つい喋ってしまうのだ

「魔物たちは当分追いつけませんかね?」

「あぁあいつらが泳いだとしても、この川の流れだ直ぐにこれねーだろ。こっち側にくるとなると橋を渡るしかないが、あの位置からなら北東へ移動しなければならないからな」

店主はそう言い放つ

僕は店主のその言葉を聞いて少し疑問に思う

「店主やアルは、最初から僕のブリンクを考えて川を渡る予定だったんですよね?」

「そうだ、じゃないと村からなら北西なんて道は使わんな」
店主は答える

「なぜ魔物も僕らの後を追って、渡れない川岸までついてきたのでしょう?村の襲撃までは分かるのですがそのあとの道どりはあきらかに僕らを追っているかの様じゃないですか?」

魔物は明らかに僕達を追跡していると確信していた

「たしかに・・・そうだな・・・まぁ難しいことは今は考えず、お前も休んでおけ。俺も少し横になる」

そのまま店主は黙りこくってしまった

僕は不安から目をつぶることが出来ず、干し肉をかじりながらみんなが起きるのを待つのだった
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...