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第1章
第7話 貴族と平民
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児童施設の子供達にお菓子をあげ、喜ぶ姿を見たマリアはホクホク顔になる。
子供達と昼食を共にし、夕方まで一緒に遊んだ後、教会に戻った。
自分の部屋でダラダラとしていると、ノックもなしに扉が開く。
「マリア、入るよ」
訪問者は部屋に入りながら口にする。
「アンナじゃないですか。どうしました?」
マリアは上体を起こし、急な訪問者に対応する。彼女が断りもなしに入ってくるのはいつもの事であり、特に気にしない。
「次期聖女候補とは思えないだらけぶりだね」
「ちょっとー、それは言わない約束ですよね?」
「ごめんごめん」
アンナは快活に笑うと、部屋の真ん中にあるテーブルから椅子を引き、逆向きに座った。
「マリアには頑張って貰わないとね。何せ、私達平民の希望なんだから」
「それも禁止ですよー」
「そうだったっけ?」
アンナはわざとらしく首を傾げる。
身長は170cm、そばかすと男の子のような短い赤毛が特徴的な少女。
年齢はマリアより1歳年下だが、教会に入ったのは彼女が先だ。昔は先輩ずらをしていたが、今は一番の友人となっている。
「聖女様が探してたよ。見つけたら私の部屋にくるように伝えてくれって、言われちゃった」
「マジですか?」
「うん、マジだよマジの話」
マリアは呼び出される理由が分からない。
昨日の雑用を頼んだ件だろうか? マリアは顎に手を置き、首を傾げる。
「怒ってました?」
「そんなことないよ。それを聞いていた、他の聖女候補のご令嬢は嫉妬で怒ってたかもだけど」
「面倒事を押し付けられ、更に嫉妬までされたら、そんなの堪ったもんじゃないですねー」
マリアはウンザリとした顔になる。
「私だって、聖女様とフランクに話せるマリアが羨ましいもん」
「そんなものですかね?」
「そんなものだよ。だって、聖女様に憧れている子はやっぱ多いよ?」
「なるほど、気を付けますかねー」
アンナは笑う。
「気を付けなくていいよ。だって私、聖女様とマリアが話てるのを聞くのが面白くて好きなんだから」
マリアはアンナをジト目で睨む。
「私が他の方から嫌な感情を向けられてもですか?」
「うん」
マリアはベットから腰を上げると、アンナの額に軽くチョップをかました。
アンナがひとしきり痛がって見せた後、しばらく2人で笑い合った。
***
貴族は血統を重んじる。魔力の高い者が多く、平民は魔力が低い。それが一般的な認識である。
魔力が高い者ほど優遇される。そのため、貴族は平民に対して優越感を抱く。
光属性の者は教会に所属する。それも一般的な考えだ。
人は必ず1つの属性を持って生まれる。魔力は遺伝すると言われているが、属性は個性であり、遺伝しないと考えられている。
光属性は女神の祝福だと、教会は信仰する。
貴族は産まれた時に、自分の子供の属性を調べ、小さい時から魔法の英才教育を行う。
平民は自分の子供の属性は調べないのが大半である。魔力の低い可能性が高く、そもそも魔法の教育には多額のお金がかかるからだ。
そのため、教会は12歳になった平民の子供を集め、光属性だと分ると教会に引き入れ、教育する。
貴族も、平民も12歳の年で教会の門を叩く。それが1つの流れとなっている。が、その時点ですでに差は開いている。
マリアは14歳の頃に教会へ入ったが、それは稀なケースである。
教会は各地にあるが、王都にある教会が大元になる。そこに聖女がおり、教皇がいる。各地から魔力の高い者を集め、聖女候補と呼ばれるエリートが存在する。
建物も綺羅びやかで壮観、王家の方が住むお城にも決して引けは取らない。
王都の教会に滞在している貴族と平民の比率は6対4で、貴族の方が多くなっている。
雑用は全て平民の仕事であったが、今では貴族も同じ事を行う。
それは今から13年前、まだ聖女になったばかりの女が起こした1つの革命だと、王都中で話題になった。
本人としては、効率が悪いからそうしただけで、革命を起こしたつもり等さらさらない。それは彼女がまだ30歳になったばかりの事だ。
聖女はシンボルとしての存在であり、全てを取り仕切るのは教皇。それが一般的な認識だったが、今では聖女の采配により教会が動く。
教皇は聖女より20も年上の男性であり、昔は抵抗をしていたが、今では聖女に付き従っている。
貴族が平民と同じ仕事をさせることには、当然不満が出た。それでも大した争いにならなかったのは、聖女の絶対的な魔力の高さと、人をひきつけ、心酔させる力があったからだ。
聖女の采配により表面上の平和は10年以上続いたが、マリアが現れ、決壊した。
マリアは平民代表として祭り上げられ、槍玉となった。彼女としては平和を望み、静かにしていたいのに、周りが勝手にヒートアップして行く。
聖女も面白がって、危険がない内は好きにさせた。
今は少し落ち着いたが、今だに貴族VS平民の火種は燻ぶったままである。
まぁ、今ではその争いもただの子どもの喧嘩と成りさがってしまったのだが。
昔は、シスター服も貴族と平民で違った。素材の質も違うし、耐魔力の性能も違う。服の色の濃さが違うため並ぶと直ぐに分かる。貴族は濃い黒で、平民の黒は薄い。
ちなみに余談だが、男女の比率も6対4であり男の方が多い結果となる。
教会は女神を信仰し、王国は精霊を信仰する。
王家には精霊の血が入っていると言われ、王国は精霊の地と呼ばれる。
火、水、風、土の魔法は、精霊の力によると信じられている。
人は1つの属性しか扱えず、自分の体内にある魔力しか扱えない。
精霊の子は4つの属性が扱え、自然界にあるマナの力を扱い、その力はほぼ無尽蔵と言われている。
それは、人の範疇を超えている。
化け物の子。
誰かがそう言った。
だけど、誰も否定できなかった。
子供達と昼食を共にし、夕方まで一緒に遊んだ後、教会に戻った。
自分の部屋でダラダラとしていると、ノックもなしに扉が開く。
「マリア、入るよ」
訪問者は部屋に入りながら口にする。
「アンナじゃないですか。どうしました?」
マリアは上体を起こし、急な訪問者に対応する。彼女が断りもなしに入ってくるのはいつもの事であり、特に気にしない。
「次期聖女候補とは思えないだらけぶりだね」
「ちょっとー、それは言わない約束ですよね?」
「ごめんごめん」
アンナは快活に笑うと、部屋の真ん中にあるテーブルから椅子を引き、逆向きに座った。
「マリアには頑張って貰わないとね。何せ、私達平民の希望なんだから」
「それも禁止ですよー」
「そうだったっけ?」
アンナはわざとらしく首を傾げる。
身長は170cm、そばかすと男の子のような短い赤毛が特徴的な少女。
年齢はマリアより1歳年下だが、教会に入ったのは彼女が先だ。昔は先輩ずらをしていたが、今は一番の友人となっている。
「聖女様が探してたよ。見つけたら私の部屋にくるように伝えてくれって、言われちゃった」
「マジですか?」
「うん、マジだよマジの話」
マリアは呼び出される理由が分からない。
昨日の雑用を頼んだ件だろうか? マリアは顎に手を置き、首を傾げる。
「怒ってました?」
「そんなことないよ。それを聞いていた、他の聖女候補のご令嬢は嫉妬で怒ってたかもだけど」
「面倒事を押し付けられ、更に嫉妬までされたら、そんなの堪ったもんじゃないですねー」
マリアはウンザリとした顔になる。
「私だって、聖女様とフランクに話せるマリアが羨ましいもん」
「そんなものですかね?」
「そんなものだよ。だって、聖女様に憧れている子はやっぱ多いよ?」
「なるほど、気を付けますかねー」
アンナは笑う。
「気を付けなくていいよ。だって私、聖女様とマリアが話てるのを聞くのが面白くて好きなんだから」
マリアはアンナをジト目で睨む。
「私が他の方から嫌な感情を向けられてもですか?」
「うん」
マリアはベットから腰を上げると、アンナの額に軽くチョップをかました。
アンナがひとしきり痛がって見せた後、しばらく2人で笑い合った。
***
貴族は血統を重んじる。魔力の高い者が多く、平民は魔力が低い。それが一般的な認識である。
魔力が高い者ほど優遇される。そのため、貴族は平民に対して優越感を抱く。
光属性の者は教会に所属する。それも一般的な考えだ。
人は必ず1つの属性を持って生まれる。魔力は遺伝すると言われているが、属性は個性であり、遺伝しないと考えられている。
光属性は女神の祝福だと、教会は信仰する。
貴族は産まれた時に、自分の子供の属性を調べ、小さい時から魔法の英才教育を行う。
平民は自分の子供の属性は調べないのが大半である。魔力の低い可能性が高く、そもそも魔法の教育には多額のお金がかかるからだ。
そのため、教会は12歳になった平民の子供を集め、光属性だと分ると教会に引き入れ、教育する。
貴族も、平民も12歳の年で教会の門を叩く。それが1つの流れとなっている。が、その時点ですでに差は開いている。
マリアは14歳の頃に教会へ入ったが、それは稀なケースである。
教会は各地にあるが、王都にある教会が大元になる。そこに聖女がおり、教皇がいる。各地から魔力の高い者を集め、聖女候補と呼ばれるエリートが存在する。
建物も綺羅びやかで壮観、王家の方が住むお城にも決して引けは取らない。
王都の教会に滞在している貴族と平民の比率は6対4で、貴族の方が多くなっている。
雑用は全て平民の仕事であったが、今では貴族も同じ事を行う。
それは今から13年前、まだ聖女になったばかりの女が起こした1つの革命だと、王都中で話題になった。
本人としては、効率が悪いからそうしただけで、革命を起こしたつもり等さらさらない。それは彼女がまだ30歳になったばかりの事だ。
聖女はシンボルとしての存在であり、全てを取り仕切るのは教皇。それが一般的な認識だったが、今では聖女の采配により教会が動く。
教皇は聖女より20も年上の男性であり、昔は抵抗をしていたが、今では聖女に付き従っている。
貴族が平民と同じ仕事をさせることには、当然不満が出た。それでも大した争いにならなかったのは、聖女の絶対的な魔力の高さと、人をひきつけ、心酔させる力があったからだ。
聖女の采配により表面上の平和は10年以上続いたが、マリアが現れ、決壊した。
マリアは平民代表として祭り上げられ、槍玉となった。彼女としては平和を望み、静かにしていたいのに、周りが勝手にヒートアップして行く。
聖女も面白がって、危険がない内は好きにさせた。
今は少し落ち着いたが、今だに貴族VS平民の火種は燻ぶったままである。
まぁ、今ではその争いもただの子どもの喧嘩と成りさがってしまったのだが。
昔は、シスター服も貴族と平民で違った。素材の質も違うし、耐魔力の性能も違う。服の色の濃さが違うため並ぶと直ぐに分かる。貴族は濃い黒で、平民の黒は薄い。
ちなみに余談だが、男女の比率も6対4であり男の方が多い結果となる。
教会は女神を信仰し、王国は精霊を信仰する。
王家には精霊の血が入っていると言われ、王国は精霊の地と呼ばれる。
火、水、風、土の魔法は、精霊の力によると信じられている。
人は1つの属性しか扱えず、自分の体内にある魔力しか扱えない。
精霊の子は4つの属性が扱え、自然界にあるマナの力を扱い、その力はほぼ無尽蔵と言われている。
それは、人の範疇を超えている。
化け物の子。
誰かがそう言った。
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