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第3章
第41話
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ボールを返しに体育館へ入ろうとした時、ちび助と他4名の団体と鉢合わせをしてしまった。
ちび助は私の持つボールを見て、ほくそ笑んだ。
「どうやら、私を恐れて練習に励んでいるみたいですねぇ」
あぁ、そう言えば――こいつもバスケだったか。
ちび助の後ろにいる4名が九条たちに挨拶し、頭を下げた。
「実にいい心掛けですよ」
ちび助は腕を組み、何度か頷いた。
後ろに控える下級生Aは、ちび助の耳元に自分の口元を近づける。
「こはっちゃん、この人は?」
「この人が奈々先輩」
「あぁ、例の先輩か」
そう言って、私の顔を見る。目が合うと、軽く会釈してきた。
何だ? 静かに、目立たずに生きているこの私に、一体なんの例があると言うのか。
後で、ちび助を締め上げてでも聞き出そう。
「奈々先輩、当日が楽しみですねぇ」
そう言って、ちび助はまるで噛ませ犬のようなオーラを醸しながら、この場から離れていく。
「因みにだけど、さっきの奴ら知ってる?」
私は九条に尋ねた。
「3人はバスケ部の後輩だから知っているけど、月城さんが話していた子ともう1人は知らないわね」
「その3人は強いの?」
私の言葉を聞き、九条は少し考える仕草を行う。
「まぁ、これからじゃないかしら」
その言葉を聞き、私は彼女たちへの興味を失った。
私は家に帰ると、離れにある倉庫からバスケットボールを取り出す。かなり奥に眠っており、見つけ出すのに時間がかかった。
このボールに触れるのは一体、何年ぶりだろうか?
庭の奥に、埋め込み式のバスケットゴールがある。とてもじゃないが、日本らしい庭園にはミスマッチである。
雪乃が一時、バスケに嵌っていた。そのため、祖母は彼女のためにそれを庭に設置した。しかも地面をコンクリートで整備するこだわり用。フルコートではなく、ハーフコートの広さではあるが。
祖母は雪乃をかなり可愛がっていたし、雪乃も祖母に懐いていた。
私は昔のことを思い出し、つい――笑ってしまう。
それと同時に、私の心は鈍い痛みを感じる。
きっとこの痛みは永遠になくならない、不治の病。だけどそれを、治したいとは思わない。
ボールに空気を入れ、コートで軽く弾ませる。
昔の感覚で、3Pシュートを打つ。
しかし、バックボードにボールが当たり弾き返された。
あまり認めたくはないが、小倉は魅力的な人間だと思う。私なんかより、何十倍も。
だから、わたしでは無理でも、小倉なら藤宮の心に入り込むことができるんだろう。彼女ほどの人間に、何度も告白されたら、藤宮だって、心が傾くかもしれない。
そこまで考え、私は疑問に思う。
何で私は、こんなにも二人のことを気にしているのだろうか。
これではまるで、小倉に嫉妬しているみたいだ。
それは何故か――直ぐに考えるのを止め、シュート練習に戻った。
ネットを揺らし、ボールが入った。
いつの間にか、外は暗くなっている。
私はため息を吐き、地面を跳ねるボールを眺める。
視界に、静姉が映った。いつもの赤いジャージ姿。
彼女はボールを掴むと、私の傍まで寄ってきた。
「何か懐かしいわね。奈々がそんなに熱くなってるの」
「……別に、そんなことないけど」
「そう? でも、ずっと私の存在に気づいてなかったでしょ。凄い集中力だったわよ。だって30分くらいずっと眺めていたからね」
……確かに、気づいていなかった。外がいつの間にか暗くなり、殆どボールが見えなくなっていることすら。
「何かあった?」
「別に……」
正直、今の自分を顧みて、これではとても九条たちのことを馬鹿にできないと思う。
確かに、静姉の言う通りだ。
――とは言え、何をそんなに熱くなっているのか、自分でもよく分かっていな
ちび助は私の持つボールを見て、ほくそ笑んだ。
「どうやら、私を恐れて練習に励んでいるみたいですねぇ」
あぁ、そう言えば――こいつもバスケだったか。
ちび助の後ろにいる4名が九条たちに挨拶し、頭を下げた。
「実にいい心掛けですよ」
ちび助は腕を組み、何度か頷いた。
後ろに控える下級生Aは、ちび助の耳元に自分の口元を近づける。
「こはっちゃん、この人は?」
「この人が奈々先輩」
「あぁ、例の先輩か」
そう言って、私の顔を見る。目が合うと、軽く会釈してきた。
何だ? 静かに、目立たずに生きているこの私に、一体なんの例があると言うのか。
後で、ちび助を締め上げてでも聞き出そう。
「奈々先輩、当日が楽しみですねぇ」
そう言って、ちび助はまるで噛ませ犬のようなオーラを醸しながら、この場から離れていく。
「因みにだけど、さっきの奴ら知ってる?」
私は九条に尋ねた。
「3人はバスケ部の後輩だから知っているけど、月城さんが話していた子ともう1人は知らないわね」
「その3人は強いの?」
私の言葉を聞き、九条は少し考える仕草を行う。
「まぁ、これからじゃないかしら」
その言葉を聞き、私は彼女たちへの興味を失った。
私は家に帰ると、離れにある倉庫からバスケットボールを取り出す。かなり奥に眠っており、見つけ出すのに時間がかかった。
このボールに触れるのは一体、何年ぶりだろうか?
庭の奥に、埋め込み式のバスケットゴールがある。とてもじゃないが、日本らしい庭園にはミスマッチである。
雪乃が一時、バスケに嵌っていた。そのため、祖母は彼女のためにそれを庭に設置した。しかも地面をコンクリートで整備するこだわり用。フルコートではなく、ハーフコートの広さではあるが。
祖母は雪乃をかなり可愛がっていたし、雪乃も祖母に懐いていた。
私は昔のことを思い出し、つい――笑ってしまう。
それと同時に、私の心は鈍い痛みを感じる。
きっとこの痛みは永遠になくならない、不治の病。だけどそれを、治したいとは思わない。
ボールに空気を入れ、コートで軽く弾ませる。
昔の感覚で、3Pシュートを打つ。
しかし、バックボードにボールが当たり弾き返された。
あまり認めたくはないが、小倉は魅力的な人間だと思う。私なんかより、何十倍も。
だから、わたしでは無理でも、小倉なら藤宮の心に入り込むことができるんだろう。彼女ほどの人間に、何度も告白されたら、藤宮だって、心が傾くかもしれない。
そこまで考え、私は疑問に思う。
何で私は、こんなにも二人のことを気にしているのだろうか。
これではまるで、小倉に嫉妬しているみたいだ。
それは何故か――直ぐに考えるのを止め、シュート練習に戻った。
ネットを揺らし、ボールが入った。
いつの間にか、外は暗くなっている。
私はため息を吐き、地面を跳ねるボールを眺める。
視界に、静姉が映った。いつもの赤いジャージ姿。
彼女はボールを掴むと、私の傍まで寄ってきた。
「何か懐かしいわね。奈々がそんなに熱くなってるの」
「……別に、そんなことないけど」
「そう? でも、ずっと私の存在に気づいてなかったでしょ。凄い集中力だったわよ。だって30分くらいずっと眺めていたからね」
……確かに、気づいていなかった。外がいつの間にか暗くなり、殆どボールが見えなくなっていることすら。
「何かあった?」
「別に……」
正直、今の自分を顧みて、これではとても九条たちのことを馬鹿にできないと思う。
確かに、静姉の言う通りだ。
――とは言え、何をそんなに熱くなっているのか、自分でもよく分かっていな
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