この恋、保障できますか?

美也

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episode.6

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「ハゥッ!
 …これは、上ったつもり寝落ち?」

お風呂上がりにリビングに戻ると、私の
ベットに永井君が寝ているではないか!?

テーブルで使っていたパソコンは、
中途半端に閉じられている。

そして、私のベットのスレスレによじ登った格好で…

うん。
ハシゴを上ってるまんまだ、ポーズが。
彼の中ではロフトに上がった事になってる。
眠くなると何かヤラかすんだよこの子は。

「困ったな。…おーい。永井くーん」

起きない。
ツンツン攻撃も… 無理だ。

あーあ、メガネも掛けっぱなしで。
そおっと外して…

「ん…」
「おおっ!?起きた!?」
「何がっ (-_-#) 」

えー… 寝言でキレてるし。
これ起こしちゃいけないやつだ。

わかりましたよっ。

メガネはテーブルに置いて、
布団を引っ張り掛けてあげる。
電気を消して、私がロフトへ。

もう、バアは寝ないと体力の限界です。

「お邪魔しますよ。お布団お借りします…
 って私のだし。おやすみなさぁい」

・・・・・。

「無理じゃね?
 匂いが… あー、男の匂いするぅ。
 えー、エロいよね…。
 これ何プレイ? …痴女じゃん。
 …やばー、、、捕まるか…も、、、zzz 」

・・・・・爆睡。

6時間経過後。

…ん?朝?
誰か呼んでるっぽい。
ぽーっとする意識に入り込んでくる、優しげな声。

せきさん。裕子ひろこさん。関裕子さん」

「(ぱちっ)!!」

「あ、起きた?
 ゴメンッ!ベット占領しちゃった」

「あ"~そうそう。ん"ぉ~よっこいしょ」

私がのっそり体を起こすと、彼はハシゴから顔を出して私を見ている。

渋々な顔で、おはようペコリを。
俺もう出なきゃ、と身を乗り出して着替えをとる。

「…いってらっしゃい」

「ちゃんと起きたの?下りれる?」

「ん~今は無理。マヨネーズの、
 最後のひと絞りな下り方になる…」

「最後のひと絞り?……ぷはっw」

「(笑った)!?」

ヒロコ、覚醒。
彼はスタスタっとハシゴを下りると…

「(ドキッ!?)な、何!?」

両手を広げて、上にいる私を見上げる。
高らかに腕を私に向けて…

「―――― おいで 」

そして、優しい顔で言ったのだ。

…ねぇ。
私――― おぉロミオ~!
ってるべき?

嘘でしょ!?
何を朝から激甘かましてくれちゃってんの!?

「ん!落ちそうだったら支えるから」

そんな楽しそうに、私を見つめないで。
心臓壊す気!?

ブンブンブン « (>_<) »

「後で自分で下りるからっ。早く行って」

「そお?じゃ」

おぉ永井… 
あなたはなぜ、永井なの?

なぜそんなに… 若いのよ、、、

アカン!!
この台詞は駄目なやつ。
私が彼を… 欲しがってるみたいでしょ…

わかってる。自分でもよく。
私達の年の差が、この暮らしを安定させてくれてるって。
それにロミオとジュリエットは結ばれない。
二人の恋路の結末は悲劇だもの。

たった今しがたまであった、ときめいた彼の残像を見下ろして、呆れた自分に私は顔を覆った。
誰か私を、滝修行に連れてって…

「う~、この布団がっ!(ばふっばふっ)
 駄目駄目、匂いが染みついてる」

まるで、
抱かれながら眠ったような、、、
錯覚を起こさせたのよ… 

「安眠しちゃったじゃない…」

余韻を噛み締めて、からの、ひとり反省会。

ヒロコ、最近、
警戒心が無さ過ぎじゃないか?

常に予防線を張ってないと、
簡単に侵入されるのよ。
男ってそうゆう生き物じゃない?

どこまでだったら許してくれるか。
じわじわ侵略しながら、心を荒らしていくの。
結果はいつも同じだったじゃない…

「よしっ!出番だファ○リーズ!
 1本、使い切ってやる」
(←適量を守りましょう。)



裕子ひろこ?」

その声は…
青天の秋空に、突如響き渡る稲妻のように…私の心臓を突き抜けた。

記憶の片隅に眠っていたその声に、
私はすぐさま振り返る。

「!?」

…なんで、今頃? 

何年も経過したのに。
私を見つめるその切なげな顔。
忘れることなど…できるはずなかった。

私の元彼、現わる。

渦巻くように胸の中で大嵐が発生した。
一周回って、、、何が起きるの!?


――――「うわっ」

風呂上がりの永井君の声を聞いて、テーブルに突っ伏していた頭を勢いよく起こす。

「私は、もう… 
       死んでいる」

「新しい技だね。怒られるよ、原作に」

グビッと握りしめたままのグラスを飲み干す。
彼はため息まじりに着席した。
あたかも自分の役割かのように。

「随分キツいのキメてんね。
 明日も仕事なのに」

希少なウイスキーをロックで。

「何これ…って!?結婚すんの!?」

彼はテーブル上の紙を手に取り、
目をまん丸くして驚いている。

本日の酒の肴、1枚の “ 婚姻届 ”。

「そちら、7年もののヴィンテージ」

「…あぁ、察し」

ご丁寧に返却された。

「今日会ったの…彼に。偶然、出先で。
 少し話した」

「……3代目?クセのない?」

「当たり~。何でわかんのよ?
 ……指輪してた。結婚したんだって。
 もうすぐ子供生まれるんだってさ…」

「悔しかったの?」

「ううん。ホッとした。すっごい優男なの。
 幸せそうで良かった」

昼間に道端で話した彼の顔を思い出して、
またキリキリと胸が詰まる。
その度に、酒を継ぎ足す。

「もう止めときな」

グラスを取り上げられて、離して置かれた。
はけぐちを失った私は込み上げる虚しさを、また心の底へ流し戻せない。

「結婚はできなかったけど、
 この婚姻届が証明書だったの。
 私を選んでくれた。
 私が彼に一番愛されてた!
 って…お守りだったの。だから、
 婚活失敗しても、男運悪くても、
 笑っていられた…」

今まで笑ってきた自分が、やたらと惨めに思えてきた。

「結婚したって、
 生涯幸せが保証される訳でもないのに。
 ただの紙切れ1枚に何年もっ…
 でも、どうやって捨てたらいいのか、
 わかんないの!怖いのよ…」

失くした物にいつまでもすがって…
新しい幸せが掴めないことを、
誤魔化してただけなの。

本当は臆病なのよ。
笑って蹴散らしてるだけなの…

もう、お守りも効力を持たないって…
今日彼に会ってその事実を認めたら、
この先私は何を頼りに不安を和らげればいいのか、、、支えが崩れてしまった。

「…大丈夫だよ」

「何を、根拠に!?」

その場しのぎの慰め?
彼の放った単純な一言に憎たらしいとさえ感じて、眉間にシワをよせ睨みつけた。
しかしそれを彼は、穏やかな仏の表情で返すのだ。

「さっき、幸せそうで良かったって。
 2代目の昇進も初代様の成功も、
 クズなのに嬉しそうに話してた。
 生粋のママっ子も無類のギャンブラーも、
 親孝行と男前だって。関さんは…
 人の幸せを、喜べる人なんだよ。
 だから笑えるんじゃない?
 お守りのせいじゃないよ。関さんは、
 自分のちからで、幸せになれるよ」

何なのよ… 
私の事そんなに知らないくせに。
いつも全部見透かしやがって。

どうしてよ? 
自信たっぷりに…
私が一番欲しい言葉をくれるの!?

彼の実直な眼差しは…
そう、嘘なんかつかない。偽りは言わない。

「お前ムカつく~! うわぁ~ん!!
 (グシャグシャパクパク)…」

「あーあー」

「(ムシャムシャムシャ…)」

「もぉ、ぺってしなよ!」

婚姻届は…
泣きながら食べてやった。

ちゃんと消滅させてやったのだ。
私の、臆病な心から。

「おえぇっ…」

「ほら、あーんして。うぇ~コレどうする…
 いいや!(ポチャ)」

グチャグチャの婚姻届は、
ウイスキーのグラスの中へ。

「紙食べる奴、初めて見た。
 ヤギじゃねぇの?」

「メェ~。メェー…ふぇっ、メェェン…」

「…ぷはっw マジでヤギが泣いてるw」

「メェ~…ぐすっ…メェ…ぐすっ」

「ティッシュ×2。鼻拭いて。
 食べちゃ駄目だよ。ぷっくははっwww」

いちいち可愛いヤツだな、コンチクショー…

永井君は私に助けられてるって言ったけど、
私だよ。
助けられてるのは。

あなたがくれる思いやりに。
ひとつひとつの言葉に。
証明書も保障も、いらないと思えたの。

彼がくれたウイスキーの中で、
私の脆かったプライドはトロトロに溶けていた。

大事にしてきた婚姻届は―――
翌日、生ゴミに捨てた。

その時の私も、彼の言う通り… 
笑えていたのだ。

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