アイスさんの転生記 ~今回は食堂のオヤジです~

うしのまるやき

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第2話 何か呼び出されましたよ、ハイ。

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前回のあらすじ:ある程度落ち着いた状況での近況報告でした。

 時は遡(さかのぼ)る。といっても、そんなに時間は経っていないけどね。とはいえ、どうしてこうなってしまったのかを説明しないといけない。(「アイスさんの転生記~貴族になってしまった~」の状況からになります。)

 私が目覚めると、周りは白い大理石のようなもので覆われた空間であった。この風景は何度も見ている。そう、ここはアマデウス神のおわす場所であり、アイスをこの世界へと転生させた張本人(神?)である。時たま、ここに呼び出されては、話をしたりするので、今回もそんな気持ちでいたので、いつも通りにアマデウス神のおわす場所へと進んでいく。

 そのまま真っ直ぐ進むと、広間となっており、真っ白な大理石の部屋に似つかわしくないコタツが備えられており、ミカンを食べながらすでに到着していたマーブル達と楽しそうに話している老人がいた。その老人こそアマデウス神である。

「おお、アイスよ、来たか。まあ、コタツに入ってくれ。」

「では、失礼しますね。」

 お言葉に甘えて、コタツに入る。場所はアマデウス神の正面で、隣にマーブル達もおり、私が座ると、左肩にマーブル、右肩にジェミニ、頭の上にライムがそれぞれピョンっと飛び乗る。いつもの定番の位置なので、特に違和感はなく、むしろモフモフプヨプヨで心地よかった。アマデウス神もその光景には慣れているので、微笑ましくこっちを見ていた。

「それで、アマさん、今日は私達だけですか?」

「うむ、今日はお主達だけじゃ。」

「最近としては珍しいですね、私達だけとは。」

「うむ、今回はお主に頼みがあってのう、、、。」

 アマデウス神とは、何度も顔を合わせており、何かと親しくなっているので、私はアマデウス神を「アマさん」と呼んでいる。失礼に値するのではと思われるかも知れないけど、最近は逆にそう呼ばないと向こうが返事をしない。ある意味じいちゃんと孫の関係みたいになっている。そんな仲であるので、今回申し訳なさそうにしているアマさんを見るのは珍しい。でも、こういうときって碌な頼みではないのが定番であるので、多少、いや、かなり不安でもある。

「頼み、ですか? 何か面倒なことが起こったので?」

「うむ。それでのう、お主に頼みたいことなんじゃが、ちと別世界に転生をしてもらいたくてのう、、、。」

「はい? 転生ですか? なんでまた? というか、あの場所はどうなるので?」

「先に言っておくと、あの場所はそのままじゃ。どちらかというと、こっちにも存在した上で、別の世界に転生して欲しいのじゃ。」

「なるほど、何だかんだ言っても、こっちの世界は気に入っておりますので、異動してしまうのは勘弁して欲しいですね。マーブル達と離れたくないので。」

「うむ。こっちの世界にもお主は存在している状態にするから、そこは安心して欲しい。平たく言うと、分体を向こうの世界へと飛ばす感じになるかのう。ちなみに、向こうで経験したことは、こっちの世界でも役に立つじゃろうし、こっちの世界の知識や技能も向こうで活かせるようにするから、そこは安心して欲しい。」

「まあ、それに関しての返事は後にするとして、どうして私が向こうの世界へと転生しないとならないのですかね?」

「それなんじゃがのう、向こうの世界で主神として存在していた神がおったのじゃが、そいつがいろいろやらかしたらしくての、それで何故か知らんが、ワシがその後釜としてその世界で主神として異動させられたんじゃよ、、、。」

「神様が異動ですか、、、。って、神様の世界にも上下関係が存在するんですか?」

「ああ、その辺は人の世界と同様だと思ってくれて構わん。いや、それ以上に面倒かもしれんのう、、、。何せ拒否権は存在せんからのう、、、。」

「え? 拒否権がない? あれまぁ。神の世界もいろいろと大変なんですねぇ。」

「厳密に言うと、あるにはあるのじゃが、ワシの身分じゃと基本的には存在しないと言った方が早いかも知れん。」

「一応話はわかりましたが、アマさんはこっちの世界からいなくなるんですか?」

「いや、こっちの世界と兼任となるようじゃな。ワシ自身知らんかったことじゃが、何故か評価が高いみたいで、本来なら兼任ではなく、転任の予定だったようじゃが、評価のおかげでこっちにも籍を置いたままらしいのう。」

「なるほど。でも、主神として君臨できるなら、別に兼任でなくてもよかったのでは?」

「お主は何を言っておるのじゃ!? 兼任でなくなったら、お主が作り上げた数々の美味いものが食えなくなるではないか! これは食の神として譲れん!!」

「そっちかよ!!」

「当たり前じゃ! そもそも、ワシは主神なんて面倒な地位なぞ欲しくないのじゃ。下っ端としてのんびりと過ごす方がワシに合っておるからのう。お主ならわかってくれるじゃろう?」

「まあ、わかりますけどね。で、アマさんの異動の件と私の転生の件はどんな関係があって? って、まさか、そっちでも私のメシ目当てで!?」

 いや、神様に、しかも食の神様にそう思ってもらうのは光栄ですよ、でもねぇ、そんなしょうもない理由で転生させられるこっちの身にもなって欲しいと思うのは失礼ですかね?

「まあ、正直に言ってしまうと、それも大きな要員ではあるな。しかし、それ以上に大事なことがあってのう、お主を連れて行くのが一番いいのじゃよ、、、。」

「なるほど。ただ、転生となると、能力がリセットされるでしょ? そうなると、調理スキルとかもリセットされるのでは?」

「いや、そこは、向こうに異動するに当たって、数人だけ能力そのままで転生させてもよいと許可をもぎ取ってきた。」

「なるほど。それで、料理以外で大事なことって?」

「うむ、それはな、お主の戦闘能力じゃよ。最初に言ったのを覚えておるか? 前担当の神がやらかしたと。基本的には不干渉である神の世界で異動させられるほどのことをやらかしているのじゃぞ? かなり面倒な世界になっているのは想像に難くないじゃろう?」

「まあ、確かにそうですね。それで、そこまで私を買ってくれるのは光栄ですがね、それでも、私だけの転生は勘弁して欲しいですね。」

「わかっておる。皆まで言うでない。それに言ったじゃろう? 戦闘能力が必要じゃと。お主の身近にいる戦闘能力の高い者達と言えば?」

「あ、とすると、マーブル達も一緒ということですか!!」

 なるほど、マーブル達も一緒なら、私に異存はない。しかし、アマさんが呆れたようにため息をついたのは何でだろう? あれ? マーブル達も何かこっちをジト目で見ている、、、。まさか? マーブル達は一緒なのを喜んでいない!?

「ああ、うん、マーブル達も一緒に来てもらうから安心せい。あと、マーブル達が変な目で見ておるのは別にお主と一緒に行きたくないから、という訳ではないぞ。しかし、真っ先にマーブル達の名前が出てくるのはいいとしても、、、。彼女たちが不憫じゃのう、、、。」

 アマさんの言葉が本当かどうかちょっと心配である。もし嘘だったら、二度と立ち直れないぞ、、、。私の表情を見たマーブル達はそのモフモフを押しつけてきた。ああ、癒やされる、、、。

「アイスさん! また、アイスさんと一緒でワタシ達は嬉しいですよ、これは本当です!! でも、それはそれ、これはこれなんです!!」

 ジェミニがフォローしてくれているのが正直ちょっと痛々しいけど、私と一緒に行けて嬉しいのはどうやら本当のようだ。

「マーブル達も一緒なら、私に否やはないです。」

「まあ、どちらにせよ、お主が一緒に来てくれるなら心強いの。一応聞いておくが、今回は身分はどうしたいのじゃ? 一応、今回は状況が状況じゃから、一庶民として予定しておるが。」

「それで構いません。もう、貴族とかそういったものは勘弁して欲しいです。」

「そうか、今回も一冒険者として活動するつもりなのかのう?」

「いや、どういった世界になっているのか知らないので、、、。」

「おう、そうじゃった、忘れておった。今回はのう、自制の効かぬ魔物がもの凄く多くなっておると聞いておる。」

「なるほど。とはいえ、また冒険者として活動するのは面倒ですかね。そういえば、アマさん、ワタシ達の能力はそのままなんですよね? でしたら、やばい魔物がいる森で適当に魔物を狩って過ごしてみるのもアリなんじゃないですかね?」

「ふむ、確かに、お主達の戦闘能力なら、それでもどうにかなるかもしれんのう。よし、わかった、お主の希望通りにするぞい。まあ、魔物の討伐が主ではあるが、いつもどおり好きに過ごして良いぞ。で、美味いものが作れたら、ワシにも食べさせてもらえたら嬉しいぞい。」

 というわけで、こんな感じで転生することになったけど、面倒だな、と思う反面、向こうの世界でもマーブル達と一緒というのはありがたい。

「では、これより転生してもらうが、心の準備は大丈夫かの?」

「いつでもどうぞ!」

「では、また会おうぞ!」

 アマさんのその言葉を最後に、私の意識は遠のいていった。さて、どんな世界に飛ばされるのだろうか、、、。

「ふう、ここまでマーブル達にしか気が向いていないとは思わなかったのう、、、。まあよい、後でいろいろと手を打つとするかのう。」

 もちろん、このアマデウス神のつぶやきはアイスには聞こえていなかった。
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