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6-2★
「ぎ、んじ……ここ、では……」
このまま銀次と、とは思ったが、かつては両親と団欒していた場所で、明日からは加奈と竜也が過ごす場所だと思えば、やっぱり躊躇してしまう。
「ああ……そう、だね。掃除、しちゃおうか」
銀次は少し頬を赤くして笑う。それから深琴に腕を差し出した。深琴がそれを掴んで体を起こす。
「……銀次、うち……来る?」
「……え? いい、の?」
勇気を出して言うと、銀次が驚いた顔をして聞き返す。深琴はそれに頷いた。
「行く。すぐ行く」
銀次はそう言うと、深琴の体を抱え上げた。荷物のように肩に担がれ、驚いていると、銀次はそのまま階段を降りる。
「ちょっ、銀次! 歩けるから!」
「ドアの鍵掛けて、深琴さん。セキュリティーの方の鍵は俺が掛けるから」
深琴の体を降ろした銀次がバタバタと事務室へと入る。そこに鍵があることは銀次も知っていた。
一刻も早く移動したいという銀次の気持ちがストレートに伝わってきて、深琴は思わず笑ってしまう。そんな深琴を見た銀次が恥ずかしそうに俯いた。
「ごめん、がっついてるね、俺」
「ううん……嬉しいよ」
求めて貰えることは純粋に嬉しい。これまでの恋だって、別に体を求められることは嫌ではなかった。体だけでも魅力的に映っていて、それで相手が自分を好きでいてくれるなら、それは嬉しい事だった。ただこれまでは、それを上回るほどに、自分という存在がつまらなかったのだろう。
「俺、深琴さんの体だけが好きなわけじゃないけど、やっぱり好きって伝えるために、深琴さんのこと、抱きたい」
クリニックの外で銀次がそうはっきりと言う。田舎の夜はとても静かで、その声は随分響いた。深琴はそれに慌てて、銀次、と困った様に名前を呼ぶ。けれど銀次の方は全く動じていなかった。
「誰に聞かれても平気だよ、俺」
笑顔で言う銀次に深琴が浅くため息を吐く。仕方なく頷いた深琴の手を銀次が繋ぐ。
「行こう、深琴さん」
笑顔の銀次に深琴は頷いて繋いだ手を握りしめた。
「ぎ、んじ、ちょっ、玄関で脱がさないで」
「途中で脱がさなかっただけ褒めて」
深琴の部屋に着いた銀次は、玄関の中に入るや否や、深琴の上着を脱がし、ベルトを外した。驚いて抵抗する深琴を抱え上げ、靴を脱がすと、そのままベッドへと降ろす。見上げた銀次の顔はいつもより男らしかった。
「深琴さん……もう次は『忘れて』なんて言わせないから」
銀次の枷になりたくなくて、自分がまた傷つきたくなくてそんなことを言った。まだ確かに少し怖い。けれど、銀次なら信じてもいいと思えた。
「うん……僕も本当は忘れたくないし、忘れられなかったよ」
酔っていて気持ちが大きくなっていたけれど、あの日の記憶はきちんとある。優しい銀次の指も、低く響く声も覚えていた。多分、それは深琴自身が銀次のことを既に特別だと思っていたからなのかもしれない。
この気持ちが好きという気持ちなのかは分からないけれど、もっと銀次を知りたいし、特別にしたいと思っているのは確実だった。
「だったら、嬉しい」
銀次はそう言うと、深琴にキスを落とした。唇に短くすると、そのまま頬に、首筋に、鎖骨にと唇を這わせていく。そのたびに深琴の肌が小さくわなないた。
このまま銀次と、とは思ったが、かつては両親と団欒していた場所で、明日からは加奈と竜也が過ごす場所だと思えば、やっぱり躊躇してしまう。
「ああ……そう、だね。掃除、しちゃおうか」
銀次は少し頬を赤くして笑う。それから深琴に腕を差し出した。深琴がそれを掴んで体を起こす。
「……銀次、うち……来る?」
「……え? いい、の?」
勇気を出して言うと、銀次が驚いた顔をして聞き返す。深琴はそれに頷いた。
「行く。すぐ行く」
銀次はそう言うと、深琴の体を抱え上げた。荷物のように肩に担がれ、驚いていると、銀次はそのまま階段を降りる。
「ちょっ、銀次! 歩けるから!」
「ドアの鍵掛けて、深琴さん。セキュリティーの方の鍵は俺が掛けるから」
深琴の体を降ろした銀次がバタバタと事務室へと入る。そこに鍵があることは銀次も知っていた。
一刻も早く移動したいという銀次の気持ちがストレートに伝わってきて、深琴は思わず笑ってしまう。そんな深琴を見た銀次が恥ずかしそうに俯いた。
「ごめん、がっついてるね、俺」
「ううん……嬉しいよ」
求めて貰えることは純粋に嬉しい。これまでの恋だって、別に体を求められることは嫌ではなかった。体だけでも魅力的に映っていて、それで相手が自分を好きでいてくれるなら、それは嬉しい事だった。ただこれまでは、それを上回るほどに、自分という存在がつまらなかったのだろう。
「俺、深琴さんの体だけが好きなわけじゃないけど、やっぱり好きって伝えるために、深琴さんのこと、抱きたい」
クリニックの外で銀次がそうはっきりと言う。田舎の夜はとても静かで、その声は随分響いた。深琴はそれに慌てて、銀次、と困った様に名前を呼ぶ。けれど銀次の方は全く動じていなかった。
「誰に聞かれても平気だよ、俺」
笑顔で言う銀次に深琴が浅くため息を吐く。仕方なく頷いた深琴の手を銀次が繋ぐ。
「行こう、深琴さん」
笑顔の銀次に深琴は頷いて繋いだ手を握りしめた。
「ぎ、んじ、ちょっ、玄関で脱がさないで」
「途中で脱がさなかっただけ褒めて」
深琴の部屋に着いた銀次は、玄関の中に入るや否や、深琴の上着を脱がし、ベルトを外した。驚いて抵抗する深琴を抱え上げ、靴を脱がすと、そのままベッドへと降ろす。見上げた銀次の顔はいつもより男らしかった。
「深琴さん……もう次は『忘れて』なんて言わせないから」
銀次の枷になりたくなくて、自分がまた傷つきたくなくてそんなことを言った。まだ確かに少し怖い。けれど、銀次なら信じてもいいと思えた。
「うん……僕も本当は忘れたくないし、忘れられなかったよ」
酔っていて気持ちが大きくなっていたけれど、あの日の記憶はきちんとある。優しい銀次の指も、低く響く声も覚えていた。多分、それは深琴自身が銀次のことを既に特別だと思っていたからなのかもしれない。
この気持ちが好きという気持ちなのかは分からないけれど、もっと銀次を知りたいし、特別にしたいと思っているのは確実だった。
「だったら、嬉しい」
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