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「わかってくれるか! 銀次くん!」
「わかります! 加賀さん!」
駅前で会ってから一時間後、深琴の目の前には握手をしながら乾杯を繰り返す銀次と加賀がいた。
「深琴さんって、嫌いな食べ物さりげなく残しますよね」
「あー、そうそう。それ子どもの時から、一番多いのが……」
「「ピーマン!」」
意気投合した二人が声を合わせる。
「もうやめてよ……僕の話ばっかり」
いつも加賀と行くやきとり屋の一角、盛り上がる二人を見て盛り下がる深琴がため息をついた。
「よかったな、深琴。こんなにお前のこと理解してくれる人、これからどれだけ現れるかわかんないぞ」
すっかり酔った加賀が深琴の肩を叩きながら父親めいたことを言う。
「そりゃ、そうだけど……」
ちらりと銀次を見やると、その視線を感じたのか、銀次がこちらに笑顔を向ける。その笑顔につられ、深琴も少し微笑んだ。
そんな二人を見て加賀は、ホントに、と優しく口を開いた。
「ちょっと変わったよ、深琴。人らしくなった」
「……僕は機械じゃないんだけど」
「でも、『めいた』ところはあったよ。下手くそな愛想笑いとか、会話を途中でぶった切るところとか」
俺はそれが深琴だと思ってたけどね、と加賀が笑う。ぐうの音も出ない、とはまさにこのことで、そんなの山ほど身に覚えがある深琴は加賀から視線を逸らすことしか出来なかった。
「責めてないよー、深琴クン。こっち向いて、可愛いお顔見せてー」
「……またそうやって、すぐからかう……」
仏頂面で加賀に視線を向けると、加賀はゲラゲラと笑う。ひとしきり笑ってから、目尻に溜まった涙を拭った加賀は、だからさ、と口を開いた。
「大事にしな、銀次くんのこと」
「……そんなの、わかってる」
仏頂面のまま小さく答えると、加賀は満足そうに頷いて、またグラスに手を伸ばした。
午前零時を過ぎ、加賀と解散した深琴は、銀次とともに自分の部屋に戻ってきた。
「いい友達だね、加賀さん」
「こんな僕に、飽きずによく一緒にいてくれるなって思ってる」
「深琴さんは魅力的だよ」
リビングのソファに座り、銀次が深琴を抱き寄せる。甘い、恋人のような時間は、まだなんだか慣れなかった。そわそわしてなんだか落ち着かない。
そんな深琴に銀次は少しだけ笑って、深琴さん、と呼ぶ。でも恥ずかしさで顔を上げられず俯いたままの深琴の手に、銀次が優しく触れる。
「深琴さん、こっち向いて……キレイな顔、見せてよ」
さっき、加賀が言った言葉の真似だろうとすぐにわかった。けれど、加賀に言われた時はからかわれてるとすぐに分かって怒りしか湧かなかったのに、銀次に言われると、心臓がドキドキとして頬が火照る。深琴はゆっくりと顔をあげた。
「俺もドキドキしてるよ。一緒だね」
銀次はそう言うと、ちゅっ、と音を立てて深琴の唇にキスを落した。それからもう一度優しく唇を合わせる。
「深琴さん、今日は加賀さんに会わせてくれてありがとね。加賀さん通じて、深琴さんのこともっとよく分かった気がする」
「え? わかったって……?」
銀次を見上げ聞くと、その顔は微笑んで、たとえば、と口を開く。
「恋愛慣れしてないから、俺がリードしなきゃダメなこと、とか?」
言いながら、再び銀次は深琴にキスをした。口の中を愛撫するような優しいキスは少し甘くて、すぐに体が微熱を持つ。
「ん……」
徐々に深くなるキスに、深琴が吐息を漏らす。銀次は少しだけ唇を離して優しく笑んだ。
「ベッド、行こうか」
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