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「……滝口さん、そうくんと別れるって言ってたの、僕の誤解だったんです。だから、僕はこの人ともう絶対別れたりしません。あなたのものになることも、永遠にない。それでも、いい友人でいてくれるというなら……また、食事にでも行きましょう。今度はそうくんと三人で」
円の言葉を聞いて滝口が顔を上げる。それから大きく頷いた。
「あー、ホント円は優しいよね。女神なのかな? 天使かな? そのうち羽根でも生えない?」
二人のやり取りを黙って聞いていた想生が大きく息を吐いてから円の肩を抱き寄せる。円はそんな想生を見上げ、そんなんじゃないよ、と笑った。
「僕たちはまだこの関係を公表できないでしょう? だったらそれまで味方は一人でもいてくれた方がいいと思って」
「……弱み、握ったからね。まーちゃんは天才小悪魔ちゃんだ」
ふふ、と想生が笑う。ようやく見れたその優しい表情にほっとして、円は目の前の滝口に視線を向けた。
「オレが会社を辞めて、二人のことを話すとか、考えないんですか?」
「そうしてくれるなら、その方が嬉しいです。他人がぶちまけてくれる分には、大歓迎なので」
想生との結婚を公表しないのは、子どもができない相手とは結婚を認めないと言われてしまったからだ。もし本当に円と別れることになって、すぐに想生が別の女性と再婚したら、他人は想生を非難するだろう。一度は永遠の愛を誓った相手を『子どもが出来ない』を理由に捨てるなんて、と責められることが分かっていた。
だから円はあえて公表しないことを選んだ。でも、きっともう、そんな心配をする必要はなさそうだ。きっと、想生はどんな未来になっても円の傍に居てくれる――今はその確信があった。
「それ、いいね。ぜひそうして。そうしたら、まーちゃんは俺のって会社でも言えるし、今の仕事からも解放してやれる。そもそも、女性社員のスケープゴートなんて考え方が間違ってるんだよ。そんなふうに隠してしまうから、職場なのか出会いの場なのか分からなくなってしまうんだ」
確かに、現状のシステムで女性社員を守りながら安心して働く場を与えるというのは、いいことだとは思う。ただ、想生の言うように隠してあるものは見てみたいという心理も働いて女性が特別なものになってしまう。そうすると、会社に仕事に来ているのか、女性と近づくために来ているのか分からない社員も出てきてしまうのは、きっと必然なのだろう。
「じゃあ、そうくんが社長になるまでにたくさん考えようよ。どうすればいいのか……滝口さんも、一緒に考えませんか?」
円が滝口に微笑むと、滝口は驚いた顔をしてから小さく息を吐いた。
「とびきりの案を思いついたら、出世させてくださいよ」
「……人事権は円に譲ろうと思ってるんだ。せいぜい円に尽くすといい」
想生はそれだけ言うと、円の腰を抱き、歩き出した。
「円の体が冷えてきた。ここで失礼するよ。君も帰りなさい……滝口くん」
想生に導かれて歩きながら、その言葉を聞いた円はなんだか嬉しくて、想生に体を寄せた。歩きにくくなるが、今は気にしない。
「滝口さんのこと、許してくれてありがと、そうくん」
「まーちゃんが許したからね。俺の世界の中心はまーちゃんだから仕方ない」
想生が小さく息を吐いてからこちらを見つめる。円は少し背伸びをして想生に顔を寄せた。円の思いが伝わったように、想生が円の唇にキスを落とす。
「そうくん、大好き……もっと、伝えたい」
円が素直に告げると、俺もだよ、と二度目のキスが落ちてきた。
円の言葉を聞いて滝口が顔を上げる。それから大きく頷いた。
「あー、ホント円は優しいよね。女神なのかな? 天使かな? そのうち羽根でも生えない?」
二人のやり取りを黙って聞いていた想生が大きく息を吐いてから円の肩を抱き寄せる。円はそんな想生を見上げ、そんなんじゃないよ、と笑った。
「僕たちはまだこの関係を公表できないでしょう? だったらそれまで味方は一人でもいてくれた方がいいと思って」
「……弱み、握ったからね。まーちゃんは天才小悪魔ちゃんだ」
ふふ、と想生が笑う。ようやく見れたその優しい表情にほっとして、円は目の前の滝口に視線を向けた。
「オレが会社を辞めて、二人のことを話すとか、考えないんですか?」
「そうしてくれるなら、その方が嬉しいです。他人がぶちまけてくれる分には、大歓迎なので」
想生との結婚を公表しないのは、子どもができない相手とは結婚を認めないと言われてしまったからだ。もし本当に円と別れることになって、すぐに想生が別の女性と再婚したら、他人は想生を非難するだろう。一度は永遠の愛を誓った相手を『子どもが出来ない』を理由に捨てるなんて、と責められることが分かっていた。
だから円はあえて公表しないことを選んだ。でも、きっともう、そんな心配をする必要はなさそうだ。きっと、想生はどんな未来になっても円の傍に居てくれる――今はその確信があった。
「それ、いいね。ぜひそうして。そうしたら、まーちゃんは俺のって会社でも言えるし、今の仕事からも解放してやれる。そもそも、女性社員のスケープゴートなんて考え方が間違ってるんだよ。そんなふうに隠してしまうから、職場なのか出会いの場なのか分からなくなってしまうんだ」
確かに、現状のシステムで女性社員を守りながら安心して働く場を与えるというのは、いいことだとは思う。ただ、想生の言うように隠してあるものは見てみたいという心理も働いて女性が特別なものになってしまう。そうすると、会社に仕事に来ているのか、女性と近づくために来ているのか分からない社員も出てきてしまうのは、きっと必然なのだろう。
「じゃあ、そうくんが社長になるまでにたくさん考えようよ。どうすればいいのか……滝口さんも、一緒に考えませんか?」
円が滝口に微笑むと、滝口は驚いた顔をしてから小さく息を吐いた。
「とびきりの案を思いついたら、出世させてくださいよ」
「……人事権は円に譲ろうと思ってるんだ。せいぜい円に尽くすといい」
想生はそれだけ言うと、円の腰を抱き、歩き出した。
「円の体が冷えてきた。ここで失礼するよ。君も帰りなさい……滝口くん」
想生に導かれて歩きながら、その言葉を聞いた円はなんだか嬉しくて、想生に体を寄せた。歩きにくくなるが、今は気にしない。
「滝口さんのこと、許してくれてありがと、そうくん」
「まーちゃんが許したからね。俺の世界の中心はまーちゃんだから仕方ない」
想生が小さく息を吐いてからこちらを見つめる。円は少し背伸びをして想生に顔を寄せた。円の思いが伝わったように、想生が円の唇にキスを落とす。
「そうくん、大好き……もっと、伝えたい」
円が素直に告げると、俺もだよ、と二度目のキスが落ちてきた。
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