親友のお願いを聞いたら異世界から来た騎士様に求婚されました

藤吉めぐみ

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 親友の悠隆が姿を消したのは、三カ月前の夏休みの終わりだった。
 バイトを終えて帰宅した心都のスマホに着信が入り、心都はいつも通りそれを取った。
『心都、バイト終わった?』
「今帰ってきたとこだけど、どうかした?」
 相手は高校からの親友である悠隆だ。同じ大学の教育学部に通っていて、心都は小学校、悠隆は中学校の教員だが、同じ教職を目指す仲で、自然と一緒にいることが多かった。だから、こんなふうに突然電話が来たり、遊びに来たりというのも日常で、この時もこの後家に来たいとでも言うのだろうなと予想していた。
『……夏休み課題のレポートひとつ忘れてた……』
「で? うちに来て一緒にやってほしいって?」
『さすが、親友。おやつ買っていくからさ、頼む!』
 電話の向こうで頭を下げている悠隆が簡単に想像できて、心都は、仕方ないなあ、と笑った。
「いいよ。あ、でも外、結構土砂降りだから気をつけろよ。バイクはダメ」
『遠くないし歩いていくよ。今から家出てコンビニ寄ってから行く』
 悠隆の言葉に、分かった、と返事をしてから心都が電話を切る。
 まさかここから三カ月も悠隆と会うことも話すこともなくなるなんて思わずに、三十分くらいで来るだろうと予想して心都は先にシャワーを浴びて着替えていた。
 けれど一時間経っても二時間経っても悠隆は家に来なくて、電話をかけても電源が入っていないというアナウンスしか流れない。
「……スマホ水没でもさせたかな……」
 外はそれもおかしくないほどの雨だ。それで連絡が取れないのかもしれない。悠隆のことだから慌ててしまって、まずは心都の家に向かえばいいなんてことも思いついていないかもしれない。
『何かあった? 遅くなっても待ってるから連絡くれよ』
 心都はそんなメッセージだけ送って、ただ悠隆を待っていた。
 けれど翌朝心都のスマホを鳴らしたのは悠隆ではなく悠隆の母親だった。
『朝早くからごめんね、心都くん。悠隆、そっちにいない?』
 そんな言葉に心都の心臓がぎゅっと握られるように縮んだ感覚はいつまで経っても覚えている。
 その日から悠隆はその姿を消したのだった。

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