親友のお願いを聞いたら異世界から来た騎士様に求婚されました

藤吉めぐみ

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「魔力は生命力とイコールです。まずは私の中に魔力を満たして、それから泉に注ぐことになっています。そうしないと、私の命が尽きてしまうので」
「それは……確かに無理な話でした。では、リゲルさんが安全に泉の調整が出来るまで、どのくらいかかりますか?」
「二週間、といったところでしょうか……ただ、泉が使えるようになってもあちらに確実に送るには条件があるので、調整が終わったからすぐにというわけにはいきません。無視してしまうと、全く別の時代や場所に送ってしまうかもしれないのです。それに、やはりきちんと国王様に許可を貰ってから戻る方が安全で確実に戻れますよ」
 焦って泉に飛び込んで、心都が生きていた場所と違うところに送られてしまうのはとても怖い。許可が下りてから戻るのが一番いいに決まっているのだが、正直今は許可が下りる気が一切しないのだ。
「まず、僕は何をするためにここに来ているのか、それすら分からないのですが……」
 その任務を果たせば帰してもらえることもありえるとは思うのだが、何をすればいいのか分からないのなら、最初から積んでいる。
「……私たちには、問題が問題として見えていません。それが見えるのは、きっと心都様だけなのです。ただ、見つけるのには時間もかかるでしょう。まずは、泉がきちんと使えるようになるまでの数週間、長期休暇だと思って過ごしてみてもらえませんか?」
 リゲルが優しく微笑む。きっと心都は不安を表情に出してしまっていたのだろう。リゲルの言葉を聞いて心都は大きく深呼吸をした。
「……分かりました。そうします」
「ありがとうございます。それと……アイゼル、国王様やマリアに言いつけられているんでしょうが、あなたの態度が一番心都様を不安にさせていること、ちゃんと理解した方がいいと思いますよ」
 やはりリゲルに隠し事は出来ないらしい。アイゼルに距離を取られていることに対して心都が寂しく思っていることもお見通しのようだ。リゲルに言われてアイゼルが心都に視線を向ける。とても久しぶりにその目が合った。
「アイゼルは……この距離でいい?」
「いいわけないだろう! 本当は心都と目を合わせて話したいし、抱きしめたい。でも、そうするともっと心都との距離が開く。こうして、傍に居て見つめられる権利を貰ったことだけでも嬉しいと思わなきゃ、心都を遠くへ攫ってしまおうかって、考えまで浮かぶんだ」
 少し怒っているアイゼルの顔を見て、心都はほっとしてしまった。騎士としての役目を徹底する姿を見ていたら、やっぱり寂しかったし少し不安もあったのだ。
「だったら、私が一緒の時は気にせず心都様に寄り添って差し上げるといいと思いますよ。きっと、協力者はこの先増えるはずですから」
 リゲルがアイゼルに微笑む。その言葉を受けて、アイゼルは心都の傍に寄り添った。心都が手を差し出すと、アイゼルがそれを強く握りしめてくれる。久々に触れたアイゼルの手はとても冷たかった。ずっと燻った思いを抱えて安心できる時間なんかひとつもなかったのかもしれない。
「リゲルさんの言う通りになって、また向こうで暮らせるようになるといいね、アイゼル」
「……きっとそうなるし、俺はどこにいても心都のことを離さない。心都の傍を離れるのは、俺が死ぬ時だ」
 アイゼルがまっすぐにこちらを見つめる。情熱的なその言葉は心都の心臓を掴んで、鼓動を跳ねさせた。ドキドキが止まらなくて、自分でも頬が赤くなっているのが分かる。繋いだアイゼルの手もいつの間にか温かくなっていた。心都の体温が移ったのかもしれない。
「……確かに気にしなくていいとは言いましたが、見せつけられるとは思ってませんでしたよ」
 短い咳払いのあとにリゲルがそう言ってため息を吐く。心都とアイゼルは二人同時に手を離し、すみません、と謝る。
「アイゼル、二人で会う時間を作ろう。このままじゃ僕たちすれ違うよ」
「じゃあ……散策の時間のルートを考えよう。ここに来るのも手だが、厩舎の裏か、庭の植え込みの陰とかなら誰にも気づかれないかもしれない」
 アイゼルの表情が次第に明るくなる。心都の手を握るまではあんなに真面目で表情のない顔をしていたのに、今は本来のアイゼルらしく生き生きとしていた。それに比例して心都の気持ちも前向きになる。
「うん……そう考えると、ここの生活も少し楽しみになってきたね」
 心都がアイゼルを見上げ微笑むと、アイゼルはそれに頷いて、心都の髪を優しく撫でた。
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