30 / 54
12-4
しおりを挟む「そうやって無防備に笑うの、おれの前だけにしてくださいね」
「そんな……違いなんて分からない」
「それでもです。なんならもう、会社では仮面でも付けてて欲しいくらいです」
「それは……怪しすぎるな」
「央樹さんの可愛い笑顔をみんなに見られるよりマシです。大体、榎波さんだって、あんなこと言って、本当は央樹さんに気があるんだと思うんですよ。じゃなきゃ、Subだって知ったくらいで、同性の同期に馬乗りになんかなります? 裸にしようなんて思いつかないですよ」
要は狙われてたんですよ、と暁翔が少し不機嫌に言う。央樹はそれを聞いて、そんなはずないだろ、と笑った。
「榎波は……今でこそあんな態度だが、少し前までは仲のいい友達みたいな感じだったんだ。互いの家に行って飲んだりもしてたくらいで……」
そういう気持ちがあるならもっと前にどうにかなってるかもしれない、と央樹が返すと、それは、と暁翔が口を開く。それから少し躊躇って、それでも言葉を繋いだ。
「……央樹さんに恋人がいたから、じゃないんですか?」
「いや、榎波にはそういうことは話してない」
「話さなくても、そういうのって分かると思うんです。休日出勤を避けたり、遊びの誘いに乗らないことが増えたり、そういう細かいことで、恋人の有無って分かると思うんです。特にそれが好きな相手なら」
「……そういうものか?」
「そういうものです。確信はなくても、おれも央樹さんに恋人はいないって思ってましたから。恋人のいる人は、あんなに残業しないし、休日出勤もしないですしね」
確かに涼成と別れてから、仕事が恋人だった。治療で休暇を使い果たし、仕事の遅れも取り戻したかったのもあるのだが、なにより仕事に打ち込んでいると何も考えなくて楽だった。仕事中は、自分の性癖なんか関係なく、ただの柏葉央樹として扱ってもらえる。そのことが嬉しかったのだと思う。
「そう、だな」
「だから、おれは央樹さんに近づこうって必死でした。仕事が出来ないことで央樹さんに構ってもらえる後輩たちが羨ましかった。でも、自分もそれと同じにはなりたくなかったから……今こうして居られるのは、おれにとって奇跡です」
暁翔は笑顔で言うと、央樹に再びキスをした。お湯の中で暁翔の手が動いて、央樹の肌を撫でていく。
「ちょっ、結城……」
暁翔の手が胸に触れる。焦ってその手を掴むと、暁翔が、嫌ですか? と聞いた。
「嫌ならやめます。プレイじゃないので、嫌ならそう言ってください」
嫌なら言って、と言いながら、暁翔の指先は震えている。拒まれるのが怖いと思っているのだろう。プレイではなく暁翔に体を委ねていいものかと央樹は迷った。
このまま暁翔と関係を進めてしまったら、自分が戻れない気がする。もう二度と、暁翔を離してあげられないかもしれない。
暁翔に恋人の関係はなかったことに、なんて言われても、嫌だと縋ってしまうかもしれない。
「……本当に僕でいいのか? 僕は、プレイ以外で、軽い気持ちでこんなことはしない。もし、結城が僕とのプレイを魅力的に感じていて、その延長なのだとしたら離して欲しい」
63
あなたにおすすめの小説
ファントムペイン
粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。
理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。
主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。
手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった……
手足を失った恋人との生活。鬱系BL。
※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる