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都合のいい男
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いいな…。さやかの担当してる増田さん…。かっこいいな。僕の担当だったら良かったのに…。
僕はでも、あんな素敵な人と恋なんて出来ない。だって…。
「准、久しぶり!」
また…。僕のこと、何だと思ってるんだ。でも、手を振り払えない。いつも見せかけの優しさに、今度こそ僕のこと大事にしてくれるんじゃないかって期待してしまう。僕が忘れられないのを知ってて、祐貴は時々こうしてやって来て、気まぐれに優しくしてヤるだけヤったら「またな」って…。
今日こそ断ろう。僕はもう祐貴の言いなりにはならない。
「准、やっぱりお前がいい」
「嘘ばっかり…。半年前も同じ事言ってたの忘れたの?」
「つれないこと言うなよ…。俺のこと好きだろ?」
何も言えない僕を黙らせる気持ちのいいキスと、嘘だらけの言葉。僕をイかせる器用な指使い。突き放せない自分が嫌で、快感に流される自分も嫌い。祐貴のこと、好きだけど大嫌い…。
「ここ弄るの弱いな…。准…。もう挿れるよ」
イヤだ…。僕のことなんか好きじゃないくせに。
「あっ!やだ…やめて」
「ここは気持ちいいって俺のくわえ込んでるけど?」
心とうらはらに僕は痛いくらい固くなって、脳天を突き抜けるような暴力的な快感に溺れていく。
「やだって言うくせに体は反応しまくってんな」
奥まで突かれてドロドロに気持ち良くて、でも頭の片隅でそんな自分を冷たく見ている自分がいる。
こんな男に抱かれて腰振って欲しがって…。そんな奴、大切にされるわけないだろ?誘えばすぐ付いてきて体を開くような奴…。
助けて…。僕はもう、こんな関係断ち切りたい…。毅然と祐貴の手を振り払いたいんだ!
起きると祐貴はもういなかった。残されていたのは、ゴミ箱からあふれるほどのティッシュとゴムの袋。脱いだときのままにシワシワになったシャツと、シーツと一緒に丸まった僕の下着…。
カーテンの隙間から差し込む光に照らされた僕の部屋は、うんざりするほど汚く臭かった。
あんなにいい匂いだった祐貴の体も髪も、何の残り香もない。残された僕は、いつも泣きそうになりながらゴミを集め、その空気を一刻も早く消し去ろうとする。
どんなに気持ち良くても、一瞬でも祐貴が僕のことを愛しいと思ってくれない事を僕は知っているのに。
「どうして…?」
ゴミ袋に一粒涙が音を立てて落ちた。堰を切ったかのように僕の目から体中の水分が流れて抜けていく気がした。
「元気ないね。どうしたの?」
えっ?増田さん…。
「あっ、いえ…。元気ですよ!僕(笑)」
「本当に?」
あ…。増田さんって目、綺麗…。少し青みがかった瞳なんだ…。
「准くん?」
「あっ!すみません…。目が綺麗だなってつい見ちゃいました」
増田さんはふっと目を細め、僕にだけ微笑んでくれた。その瞬間、顔が沸騰したみたいに熱くなったのが分かった。
「准くん、顔真っ赤だよ?」
「えっ?」
「可愛いね、准くん」
いつもクールな増田さんは少しだけ甘い言葉を僕にくれた。嬉しかったけれど、僕はまた祐貴にされているように扱われるのが怖くて、頬を引きつらせてしまった。
この人はそんな風に相手を扱わないだろうけど、僕は心を開くことに臆病になってしまっていた。
「もう!こんなのっぽの僕が可愛いなんて、からかわないで下さい!」
おちゃらけて言うと、意外な反応が返ってきた。
「俺はお世辞は言わないよ」
少し怒ったような顔を一瞬だけ見せた。あっ、嫌われちゃったかなと僕は思った。
「准くんはもう少し素直に受け取りなさい(笑)」
増田さんは、優しい顔でメガネの奥の目をゆっくりと細めた。
僕にはその表情が、まるで猫が本当に心を許した人にだけ見せる柔らかな愛情表現に似ているように思えた。
僕はでも、あんな素敵な人と恋なんて出来ない。だって…。
「准、久しぶり!」
また…。僕のこと、何だと思ってるんだ。でも、手を振り払えない。いつも見せかけの優しさに、今度こそ僕のこと大事にしてくれるんじゃないかって期待してしまう。僕が忘れられないのを知ってて、祐貴は時々こうしてやって来て、気まぐれに優しくしてヤるだけヤったら「またな」って…。
今日こそ断ろう。僕はもう祐貴の言いなりにはならない。
「准、やっぱりお前がいい」
「嘘ばっかり…。半年前も同じ事言ってたの忘れたの?」
「つれないこと言うなよ…。俺のこと好きだろ?」
何も言えない僕を黙らせる気持ちのいいキスと、嘘だらけの言葉。僕をイかせる器用な指使い。突き放せない自分が嫌で、快感に流される自分も嫌い。祐貴のこと、好きだけど大嫌い…。
「ここ弄るの弱いな…。准…。もう挿れるよ」
イヤだ…。僕のことなんか好きじゃないくせに。
「あっ!やだ…やめて」
「ここは気持ちいいって俺のくわえ込んでるけど?」
心とうらはらに僕は痛いくらい固くなって、脳天を突き抜けるような暴力的な快感に溺れていく。
「やだって言うくせに体は反応しまくってんな」
奥まで突かれてドロドロに気持ち良くて、でも頭の片隅でそんな自分を冷たく見ている自分がいる。
こんな男に抱かれて腰振って欲しがって…。そんな奴、大切にされるわけないだろ?誘えばすぐ付いてきて体を開くような奴…。
助けて…。僕はもう、こんな関係断ち切りたい…。毅然と祐貴の手を振り払いたいんだ!
起きると祐貴はもういなかった。残されていたのは、ゴミ箱からあふれるほどのティッシュとゴムの袋。脱いだときのままにシワシワになったシャツと、シーツと一緒に丸まった僕の下着…。
カーテンの隙間から差し込む光に照らされた僕の部屋は、うんざりするほど汚く臭かった。
あんなにいい匂いだった祐貴の体も髪も、何の残り香もない。残された僕は、いつも泣きそうになりながらゴミを集め、その空気を一刻も早く消し去ろうとする。
どんなに気持ち良くても、一瞬でも祐貴が僕のことを愛しいと思ってくれない事を僕は知っているのに。
「どうして…?」
ゴミ袋に一粒涙が音を立てて落ちた。堰を切ったかのように僕の目から体中の水分が流れて抜けていく気がした。
「元気ないね。どうしたの?」
えっ?増田さん…。
「あっ、いえ…。元気ですよ!僕(笑)」
「本当に?」
あ…。増田さんって目、綺麗…。少し青みがかった瞳なんだ…。
「准くん?」
「あっ!すみません…。目が綺麗だなってつい見ちゃいました」
増田さんはふっと目を細め、僕にだけ微笑んでくれた。その瞬間、顔が沸騰したみたいに熱くなったのが分かった。
「准くん、顔真っ赤だよ?」
「えっ?」
「可愛いね、准くん」
いつもクールな増田さんは少しだけ甘い言葉を僕にくれた。嬉しかったけれど、僕はまた祐貴にされているように扱われるのが怖くて、頬を引きつらせてしまった。
この人はそんな風に相手を扱わないだろうけど、僕は心を開くことに臆病になってしまっていた。
「もう!こんなのっぽの僕が可愛いなんて、からかわないで下さい!」
おちゃらけて言うと、意外な反応が返ってきた。
「俺はお世辞は言わないよ」
少し怒ったような顔を一瞬だけ見せた。あっ、嫌われちゃったかなと僕は思った。
「准くんはもう少し素直に受け取りなさい(笑)」
増田さんは、優しい顔でメガネの奥の目をゆっくりと細めた。
僕にはその表情が、まるで猫が本当に心を許した人にだけ見せる柔らかな愛情表現に似ているように思えた。
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