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ハジメユキノ

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哀れな男

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美月はようやく落ちつきを取り戻し、着替えてホテルのバーにいた。そこに、黒服の玲児と斎生が佐川の両脇を抱えて現れた。美月はいかにも心配してたんですよといった風で佐川に駆け寄った。
「佐川様、大丈夫ですか?疲れてらっしゃったみたいで、1杯飲んだらトイレに行かれて戻らないものですから…。心配でうちの従業員に連絡してしまいました」
佐川は狐につままれたような顔をしていた。あれ?さっき…。ベッドで彩がシーツを巻き付けて横たわっていたのに…。
「あれ?二人で部屋に…」
美月はちょっとムッとした顔を見せた。
「あら。私、婚約者がいらっしゃる方に手を出したりしません。枕営業するほど落ちぶれてませんから♡」
「そうですよ。うちの№1に手を出したなんて知れたらボスが黙ってませんから。うちの大事な商品に傷つけたなんて事は…?」
「あ、ありません!」
「ですよね~。ホントにね、大事な大事な子なんですよ…」
榊さんがゾッとするほど冷たい笑顔を見せた。
「命拾いしましたね。事と次第によっちゃ…、無事で帰れなくなりますから(笑)」
ヒッと息を飲む佐川に、美月が可憐に微笑んだ。
「今度はお店に同伴してくださる?♡」
「は、はい!喜んで!」
佐川はジャケットを掴むと、美月たちに頭をペコペコ下げながら逃げるように帰って行った。
「あの人…。何にも覚えてないんですか?」
「どうかしら♡」
美月は再び凶悪な笑顔を僕に見せた。だから、美人怖いってば。

……………………………………………………………………
「空売りの件は、自分の口座を動かすのは危険だと思ったのか佐川は親族の口座を借りたようだ。影山の方も親名義の口座に動きがあった」
他に空売りをして儲けた口座はなかったらしい。そんなはした金には興味のない人物。傀儡政権みたいな今の人事は誰が主導して決めていったのか…。
「西さんはどう考えますか?今の社長を決めた経緯について…。誰から出て来た案だと思いますか?」
「私ですか?」
夕方の仕込みを厨房でしていた西さんは、話を急に振ってきた僕に驚いていた。
「僕は社長の辞任の時にやめちゃったからなあ…。でも、残った取締役で影山を重用していたとしたら…」
「僕に遠慮しなくてもいいよ」
ボス…?
「僕の息子が案を出した可能性がある…。僕が失脚して、後釜に座る訳にいかなかったからね」
「ボス…。でも。一也さんは」
榊さんが止めようとすると、ボスが辛そうに言った。
「一也は僕を嫌っていたから…」
「一也さんは、ボスが奥様を蔑ろにしたと思ってるんでしょう?」
「家内が死の床にあるのに、僕はお見舞いに中々行けなかった…。来ないでとお願いされていたんだ。だからって行かなかったのは事実だからね…」
「どうして奥様は来ないでって言ったんですか?」
僕の素朴な問いにボスの代わりに榊さんが答えた。
「うちの会社がね、危ない時があったの。うちの扱ってる商品を積んだ船が座礁したり、取引先がうちに支払うはずのお金を持ち逃げして突然いなくなったりしてね。一つなら何とかなる事が立て続けに起きたときだったの…。不渡り出すんじゃないかなんて噂されて銀行も貸し渋り始めたり。そんな時に奥様が倒れてしまって…」
「家内は『私の事はいいから。あなたは沢山の従業員の生活を守らなきゃ。ここには来なくて大丈夫。私はすぐ良くなるから』って僕が仕事に専念出来るように…」
そうだったんだ…。一也さんはそんなやり取りを知らなかったのかな?
「僕は甘えていたんだ。家内があんなに早く逝ってしまうなんて思ってもなかったから…」
美月さんが口を開いた。
「だからって一也さんがそんなこと指示するとは思いたくないわ。だって…。元々社長と奥様が作った会社なんですから」
「僕もそんなこと考えたくはない。でも、可能性はなくは無い…」

……………………………………………………………………
「どうしよう…。俺何か大事な事を忘れているような…」
彩といたホテルからタクシーに乗り、しばらく走った所で佐川は自分のしでかした事をじわじわと思い出し始めた。
「えっ?俺…何をしてた?」
やはり、彩と寝た?そして、ベッドで何話したんだ?俺は…。

…………………………………………………………………
「あいつ今頃青くなってるわよ(笑)」
何したんだ?こわいなぁ…。
「佐川が動くはずよ。自分の口を滑らせた事は部長には言わないでしょうね。一番自分が可愛い人間は、次に自分に不利な事を隠そうとするはずだわ…。だからGPSとアプリ♡スマホに仕込んじゃった♡」
「あと、あいつのカバンの底にもね♡何処に行ってもついていくわよ~」
怖っ!
「さて、どこにあなたの秘密が隠されてるのかしら♡」
「美月。とりあえず今日は解散しましょ?ちゃんと休んだ方がいいわよ。あいつの行動は逐一保存されてるから(笑)」
「うん…。分かった」
「眠れそうになかったら…。仕方ないわ。斎生貸してあげましょうか?」
貸すって…。僕はそんなホイホイ貸せるもの?
「…いらない」
拒否!即答されるとさすがにへこむ。
「そうよね~♡斎生は私にベタ惚れだから♡」
「玲児💢!惚気るなら他でやって!」
「ふふっ(笑)たまにはここで…。玩具使ってみる?」
玩具…。ちょっと惹かれる…。
「ほら!明日使い物にならないくらい虐められちゃうわよ(笑)。玲児、斎生の顔見てみなさいよ」
ちょっとふわふわ手錠で拘束しちゃって、玩具で虐めたら…。ヤバそう。
「大変!あたし、縛られちゃうわ。ね?どれ使う?(笑)」
「生々しいからやめて!」
美月がギャーギャー言う横で、榊さんはケラケラ笑っていた。僕は榊さんを気持ち良くさせたくなって、どれが好きかな~なんて半ば真面目に選ぼうとしていた。
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