好きなものは一つとは限らない

ハジメユキノ

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指切りげんまん

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慎は、真が木田と佐藤にいじめられてたと聞いて心配していた。でも、真はその噂の木田と佐藤と一緒に笑いながら帰ってきた。

「おっ!慎が心配してるぞ(笑)」
「だって僕の大事な幼なじみだもん」
「お前らほんと、仲良いな」

あれ?真が少し…男らしいぞ?
何があったんだろ?

「慎!友達になったよ(笑)」
「へっ?」
「こいつ、慎が好きだって言うんだぜ!ホモなんじゃないのかって馬鹿にしたら泣くのかと思ったら俺達に向かってきたんだ」
「佐野がけんかするなんてな…。一緒に先生に怒られてきた(笑)」

俺を好き?真が喧嘩?

「真、けんかしたの?」
「だってさ、俺たちが手繋いだって良いでしょ?悔しかったから…」

真が俺のためにけんかしたの?俺、やっぱり真が大好きだ!

「俺だって真が大好きだ!」
「やっぱりお前ら変わってる(笑)」

変わってると言いつつも、木田はいつもみたいに意地悪くない。むしろちょっと呆れて面白がってる?

「俺、こいつがあんまりにもあっけらかんとしてるから、馬鹿にすんのが馬鹿らしくなっちゃったよ(笑)」
「そうそう。こいつがいっちょ前に俺ら二人とけんかするんだぜ?こいつちゃんと男だったんだなってさ」

嬉しくなったんだと二人は笑っていた。
俺だって嬉しい。俺達が馬鹿にされるのが悔しくてたまらないと思ってくれたことに。

「俺、うれしい!真が悔しいって思ってくれたこと(笑)」
「だってさ、僕は慎が大事だもん」

木田と佐藤が呆れたように笑った。

「お前らが仲良しだって事はよ~く分かった」
「早く給食食べようぜ!腹減ったよ…」

お腹をグウグウ鳴らしながら、佐藤がわざとヘロヘロな顔をした。先生も戻ってきて給食の時間になった。

「ほら。早く席に付け!みんなおなかすいたって顔で見てるぞ(笑)」
「は、はい!」

4人とも慌てて席に付いた。大好物のソフト麺のお替わりは、お腹がペコペコのみんなの争奪戦になってしまった。
…………………………………………………………
「じゃあな!」
「あとでお前んちに行くな!」
「うん。慎と一緒に待ってるよ(笑)」
「はいはい。もうお前ら結婚しちゃえば?」
「それも良いかもね(笑)」

真の言葉に、慎は横で真っ赤になっていた。真は俺と結婚したいの?!

「今日さ…ソフト麺のお替わり、食べられなかったね…」

ソフト麺の話?結婚は?

「僕、もう少し食べたかったな~」
「そうだね…」

慎は、真が木田と佐藤が言うようにあんまりにもあっけらかんとしてるのを見て、真のほんとの気持ちがよく分からなかった。

「ねぇ真…。真はさ…その、俺と…」

結婚したいの?なんて言えるか!
俺は柄にもなくモジモジしていた。

「慎?」

真が俺の顔を覗き込む。
真は目が大きくて、黒目が人より大きいんだ。鼻もすっと通ってるし、ほっぺたがうちの大福の餅みたいだ。
可愛い顔だなぁ…とポケッと見つめていると、真が何だか赤くなっていった。

「慎?慎は僕と結婚したいと思う?」
「へ?」
「慎は僕のこと大好きって言ってたけど…」
「うん。俺、真大好きだよ」
「そっか!」

真は小指を立てて自分の顔の前に持ってきた。

「僕たち男同士だけど…。外国では結婚する人もいるんだって!」

小指を立てた手を俺の方に伸ばした。

「慎。大人になったら僕と結婚して下さい(笑)」
「真…」

俺も小指を立てて真の小指に絡めた。

「指切りげんまんだ!」
「いいの?」

真っ!首かしげて可愛いの…ズルい!

「もちろん!」
「じゃあ、指切りげんまん!」

慎が指切りしてくれた!僕、男だけど約束…してくれた…。
ニカッと笑う慎が大好きで、いっつも背中を追いかけてた。虫のこととか詳しいし、理科が得意で工作も得意。この前の夏休みに作ったロボットなんて、ちゃんと腕が動くんだもんな。器用で物知りで運動も出来て…。僕の自慢の幼なじみ。僕はいつの間にか慎のことが大好きだったんだ。

真に先に言われちゃった!俺が言おうと思ってたのにな…。でも、今言えば同時になる…かな?

「真!俺も言おうと思ってたんだからね!」
「何を?」

何をって…。案外真はニブいのかな?

「何をって…お、俺と、け、け、結婚して下さいに決まってる!」

真は顔を真っ赤にした。なんて可愛いんだ!

慎!格好いいのズルい!

「お」
「お?」
「お、おんなじだ(笑)」

真が嬉しそうに笑ってる。ほっぺたを真っ赤にして(笑)。

「そうだね。おんなじだ(笑)」

真が俺の手をぎゅっと握った。

「早く帰っておやつの用意しよ?木田くんと佐藤くんがゲーム持ってくるって」
「そうだった…」

真が嬉しそうにぐいぐいひっぱって行く。
俺はもう少し真の可愛い顔を見ていたかったのにな。
それでもものすごい上機嫌な真の姿に、みんなで何して遊ぼうかと頭を切り替えた。
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