17 / 39
本編1
魔女のメアリは走馬灯を廻る 0章
しおりを挟む
ユクシーはひとりぼっちな女の子でした。
家にはお父さんとお母さんがいて、兄が3人もいます。
毎日ワイワイがやがやと、いつも賑やかです。
でも、ユクシーはひとりぼっちでした。
お父さんは仕事で忙しく、あんまり家にいません。
たまにいてもお母さんと喧嘩ばかりしていて、ユクシーと話す暇はないようでした。
そんなお母さんは、兄たちばかりを可愛いがります。
長男のカベルには
「力があってすごいねえ、おかげたくさんの荷物が運べるよ」
と言いました。
次男のアインには
「お前は頭が良いから、たくさん勉強をし、そして偉い学者さんになって母さんを楽させておくれ」
と言いました。
三男のライオネルは、力もよわく、頭も良くないし、運動もできず、おまけにえらく太っちょです。
なのにお母さんは
「ライオネルは私の天使だよ。なにもしなくていいよ、そのまま可愛いままでいておくれ」
と言います。
ユクシーはただの一度もお母さんに褒められたことはありません。
話しかけてくることも少なく、たまに話しかけてきたかと思えば
「洗濯しといてくれ」とか「お兄ちゃんたちのスープお代わりって言ってるじゃないか!なにボサっとしてるんだ!」みたいなことばかり。
そんな中、ユクシーはメアリと出会ったのです。
メアリはユクシーにしか姿が見えず、声も聞こえないまま、一緒に生活するようになりました。
魔女は人間とぜんぜん違いました。
メアリは眠りません。眠らなくてもずっと元気でいられるのです。
メアリはほとんど何も食べず、何も飲みません。月に一度くらい、少しのパンとコップ一杯の水を口にするくらいでした。
これからさらに年を重ねれば、いっさい飲まず食わずで生きれるようになるそうです。
ユクシーは、そんなメアリと過ごす毎日がとても気にいりました。
メアリもまた、ユクシーを大事に思い、守るようになったのです。
長男のカベルはユクシーをいないものとして扱います。
メアリはカベルにむけて、杖をヒョイっとふって呪いをかけました。
カベルはユクシーを無視するたび、お腹を壊し、トイレに駆け込むハメになったのです。
アインはいつもユクシーをいじめてます。
ある日、アインはユクシーの服を無理矢理脱がそうとしました。
メアリはまた杖を振ります。
するとどこからともなく小さな竜巻があらわれ、アインを渦のなかに閉じ込めたのです。
竜巻が去ると、アインの方がスッポンポンになっていて、ワンワン泣いて家の中に逃げたのでした。
ライオネルはユクシーを家政婦みたいに扱います。
彼が「ミルクをとって来い」と言えば
メアリは「お前の乳から搾ればいいじゃないか」と言います。
彼が「お前のスープのジャガイモをよこせ」と言えば。
メアリは「芋みたいな顔して、芋が好きなのかい。これじゃ共食いだね」と言います。
もちろんメアリの声はライオネルには聞こえません。
でも声が聞こえているユクシーは、いつも笑いをこらえるのに必死でした。
やがてライオネルが命令するたび、メアリが何を言うのか楽しみで、つい愉快になってしまうのでした。
お母さんに対しては、ユクシーを見つけられなくなる呪いをかけたのです。
用事がない時は姿も見えるし声も聞こえますが、いざユクシーに話しかけようとすると、とたんに見失ってしまう呪いです。
このせいで、お母さんはユクシーをコキ使えなくなりました。
いつもいないことを怒ろうにも、絶対に見つけられないので、怒りようがありません。
こうして、ユクシーは前以上に家族から構われなくなりました。
でもユクシーは平気です。メアリがいつもそばにいるからです。
メアリは自由でした。いつもユクシーの側にいても自由でした。
日がな一日雲や星を眺め、ときに街を眺め、ときに壁をつたう虫なんかも、何が楽しいのかずっと眺めています。
ユクシーと一緒に森に入れば、なんてことない雑草や、美味しくない木の実を見つけては
「あれ!集めておくれ!」
とユクシーに拾わせるのです。
それらを集め、混ぜて、杖をひょいひょい振っては、魔法の薬にしたりします。
そして、それ以外の時間ぜんぶ本を読んで過ごしていました。
「なんでそんなにたくさん読むの?メアリ姉様はもう十分物知りなのに」
何十冊もの本を宙に浮かべ、杖を使ってパラパラとページをめくるメアリに、ユクシーは聴きました。
「物知りなんかじゃないさ。何も知らないから読むんだ」
メアリはユクシーの頭を撫でながら続けます。
「覚えておき、自分を物知りだと言うやつは、知らないことを知らないだけのアホウなんだよ」
メアリの言葉は、たまにユクシーには難しいときがありました。
家にはお父さんとお母さんがいて、兄が3人もいます。
毎日ワイワイがやがやと、いつも賑やかです。
でも、ユクシーはひとりぼっちでした。
お父さんは仕事で忙しく、あんまり家にいません。
たまにいてもお母さんと喧嘩ばかりしていて、ユクシーと話す暇はないようでした。
そんなお母さんは、兄たちばかりを可愛いがります。
長男のカベルには
「力があってすごいねえ、おかげたくさんの荷物が運べるよ」
と言いました。
次男のアインには
「お前は頭が良いから、たくさん勉強をし、そして偉い学者さんになって母さんを楽させておくれ」
と言いました。
三男のライオネルは、力もよわく、頭も良くないし、運動もできず、おまけにえらく太っちょです。
なのにお母さんは
「ライオネルは私の天使だよ。なにもしなくていいよ、そのまま可愛いままでいておくれ」
と言います。
ユクシーはただの一度もお母さんに褒められたことはありません。
話しかけてくることも少なく、たまに話しかけてきたかと思えば
「洗濯しといてくれ」とか「お兄ちゃんたちのスープお代わりって言ってるじゃないか!なにボサっとしてるんだ!」みたいなことばかり。
そんな中、ユクシーはメアリと出会ったのです。
メアリはユクシーにしか姿が見えず、声も聞こえないまま、一緒に生活するようになりました。
魔女は人間とぜんぜん違いました。
メアリは眠りません。眠らなくてもずっと元気でいられるのです。
メアリはほとんど何も食べず、何も飲みません。月に一度くらい、少しのパンとコップ一杯の水を口にするくらいでした。
これからさらに年を重ねれば、いっさい飲まず食わずで生きれるようになるそうです。
ユクシーは、そんなメアリと過ごす毎日がとても気にいりました。
メアリもまた、ユクシーを大事に思い、守るようになったのです。
長男のカベルはユクシーをいないものとして扱います。
メアリはカベルにむけて、杖をヒョイっとふって呪いをかけました。
カベルはユクシーを無視するたび、お腹を壊し、トイレに駆け込むハメになったのです。
アインはいつもユクシーをいじめてます。
ある日、アインはユクシーの服を無理矢理脱がそうとしました。
メアリはまた杖を振ります。
するとどこからともなく小さな竜巻があらわれ、アインを渦のなかに閉じ込めたのです。
竜巻が去ると、アインの方がスッポンポンになっていて、ワンワン泣いて家の中に逃げたのでした。
ライオネルはユクシーを家政婦みたいに扱います。
彼が「ミルクをとって来い」と言えば
メアリは「お前の乳から搾ればいいじゃないか」と言います。
彼が「お前のスープのジャガイモをよこせ」と言えば。
メアリは「芋みたいな顔して、芋が好きなのかい。これじゃ共食いだね」と言います。
もちろんメアリの声はライオネルには聞こえません。
でも声が聞こえているユクシーは、いつも笑いをこらえるのに必死でした。
やがてライオネルが命令するたび、メアリが何を言うのか楽しみで、つい愉快になってしまうのでした。
お母さんに対しては、ユクシーを見つけられなくなる呪いをかけたのです。
用事がない時は姿も見えるし声も聞こえますが、いざユクシーに話しかけようとすると、とたんに見失ってしまう呪いです。
このせいで、お母さんはユクシーをコキ使えなくなりました。
いつもいないことを怒ろうにも、絶対に見つけられないので、怒りようがありません。
こうして、ユクシーは前以上に家族から構われなくなりました。
でもユクシーは平気です。メアリがいつもそばにいるからです。
メアリは自由でした。いつもユクシーの側にいても自由でした。
日がな一日雲や星を眺め、ときに街を眺め、ときに壁をつたう虫なんかも、何が楽しいのかずっと眺めています。
ユクシーと一緒に森に入れば、なんてことない雑草や、美味しくない木の実を見つけては
「あれ!集めておくれ!」
とユクシーに拾わせるのです。
それらを集め、混ぜて、杖をひょいひょい振っては、魔法の薬にしたりします。
そして、それ以外の時間ぜんぶ本を読んで過ごしていました。
「なんでそんなにたくさん読むの?メアリ姉様はもう十分物知りなのに」
何十冊もの本を宙に浮かべ、杖を使ってパラパラとページをめくるメアリに、ユクシーは聴きました。
「物知りなんかじゃないさ。何も知らないから読むんだ」
メアリはユクシーの頭を撫でながら続けます。
「覚えておき、自分を物知りだと言うやつは、知らないことを知らないだけのアホウなんだよ」
メアリの言葉は、たまにユクシーには難しいときがありました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる